88 / 89
Ⅲ 西部
13 逆襲
しおりを挟む
翔・・・主人公、十六歳
彩音・・主人公の妹、十四歳
マーニャ・・・スノートの貴族の娘、黒竜騎士団会計騎士隊騎士
ペペ・・・遺物に封じ込まれていた霊魂
ファネル・・・元公爵の御婆ちゃん、翔の骨董仲間でこの国の実力者
グッグル・・・ジリウス国陸軍大将、ジレノミラ王国に捕えられている
ジレノミラ王国・・・翔達が飛ばされた国の名前
ジリウス国・・・ジレノミラ王国の西側の隣国
クスク山地帯・・・・ジレノミラ王国西部とジリウス国との間の国境山地
ケクル・・・クスク山地帯の南端ににある港町
ククル・・・下流の谷を堰止めた場所に出来た町の名前
キクル・・・上流の谷を堰止めた場所に出来た町の名前
カクル・・・ダム湖最上流の大断層直下の湖畔の船着き場
グロッサ草・・・蟻退治に使用する神経麻痺殺虫剤
ゲンゲジ草・・・蟻用の麻痺剤
ーーーーー
(カケル)
ジレノミラ王国貴族院議会は全会一致でグッグル陸軍大将と捕虜として囚われていたジリウス国陸軍の無条件釈放を可決した。
これは物凄く異例の事態で、ファネルさんの裏工作が功を奏した部分もあるのだが、最も大きかったのは両替商ギルドの全面的なバックアップが得られたことだ。
両替商ギルドは、これが見返りの大きい投資であると判断したのだ。
だがこれですべて解決した訳ではない、悪戯にジリウス国内を混乱させるのは、戦乱を望むナルスを喜ばせ、ナルスの巧みな情報操作によって泥沼状態を作り出す結果になるだけなのだ。
ジリウス国にはナルス側を支持する戦力が数多く残されている、有力貴族の私軍や王城を護る守備隊などがそれだ。
それだけではない、王は既に木偶となっていることは想像できるのだが、王城に籠るナルスを攻めれば、実質的に王を攻めることになり、ナルスに与しない勢力も敵に回す可能性が高いのだ。
理想は一切の戦闘行為無しに王城へと辿り着き、王城の守備兵と争う事無しにナルスと対峙して化けの皮を剥すことだ。
幸い海軍は密かに全面的な協力を申し出てくれている、海軍もナルスとは反りが合わなかったらしい。
だが海路にしても陸路にしても必ず途中に貴族領が存在し、少々思考的に手詰まり状態になっている。
早く解決してムーの遺跡に行きたいのだが時間ばかりが過ぎて行く。
自分の世界に戻るにしても不安が有る、この世界に来て二年近くが過ぎている、戻っても順応できるのか、そして最大の不安は彩音との関係を未練なく断ち切れるかどうかなのだ。
彩音も俺も意識は完全に夫婦になってしまっている。
大人気無いとは思いながら、この不安を忘れようと、王都に戻ってから連日明け方まで彩音との夜の営みを続けている。
今日も五回連続で昇り詰めて彩音が意識を失った、そしてぺぺが出て来た。
「ぺぺ、ムーの都って、うっ、何人くらい、あっ、住んでたんだ」
「ひっ、あっ、うっ、十万、あっ、くらい、あっ、あっ、じゃ、あっ、うん、そこ」
「あんな、あっ、山奥へ、うっ、どうやって、ひっ、食い物を、あっ、運んだ、うっ、んだ」
「広い、ひー、街道が、あう、在ったに、うー、決まってる、うっ、じゃろ、あっ、あっ、ひー、あっ、いく、いく、いくー」
「あー」
”びゅっ、びゅっ、びゅー”
俺は彩音のペペに注ぎ込みながら閃いた。
早速地図を取り出して、ムー帝国の街道が有った場所をペペから教わった。
翌日再びカクルへと向かい、ムーの遺跡に降りる、彩音を同行して火の水晶は持って行ったが、この状況を放置する訳には行かないので鏡を見に行くのは我慢した。
目的はムーの街道の状態の調査だ。
街道は蔦に覆われ埋まっていたものの、強固な作りで掘り返せばそのまま使える状態だった。
嬉しい事にクスク山地帯の中をジリウス国王都に向けて伸びていた。
この調査には二月ほど要したのだが、その間五回程刺客に襲われ、全て捕えた。
ペペに記憶を探って貰い、グッグルさんの伝手でジリウス国の暗殺被害者の貴族の元へ密かに犯人として引き渡した。
刺客の何人かは、秘密を知られた一族から制裁に対する恐怖と自分の命に対する執着で、貴族に尋問に対し洗いざらい白状した。
幾つかの準備が整ったので、吟遊詩人達を使って歌をジリウス国に広めた。
王城に巣食う悪魔を退治するために奇跡が起こって正義の軍隊が現れるという内容の詩だ。
そして、新年の年明け、行動を起こした。
街道を覆っていた蔦や木を焼き払い、街道を覆っていた土を十分に乾燥させる。
そこへ遺跡に溜まっていた水を汲み上げ土を洗い流す。
人々には突然石畳の敷かれた街道が出現した様に見えた筈だ。
そこをグッグルさん率いる軍隊で王都に向けて行進して貰う。
目的はなんとなく解っているのだが、ナルスを支持する貴族達も、悪魔を退治しに来た軍隊相手に出兵するのは外聞が悪くて躊躇する、そしてその隙に、戦闘が起きないままグッグルさんの部隊が王城を包囲する。
密かに刺客を引き渡した貴族達も援軍として駆け付けてくれる、そうなると、援軍を送らなっかった貴族は悪魔の味方と思われるとの思惑が波及し、乗り遅れない様にと全ての貴族が援軍を送って寄越す。
城の守備兵達も困惑した、相手は王を害する為でではなく、悪魔退治を名目に取り囲んでいるのだ。
強く抵抗すると悪魔を護る輩と見なされてしまう、守備兵達もこちらの尻馬に乗らざるを得ない。
グッグルさんの部隊が王城に受け入れられ、宰相の執務室を取り囲む、そして王との面会を拒んでいたナルスの協力者達を拘束し、廃人となっていた王や王族を救い出す。
そして数週間後、餌を切らしたナリスがミイラの様な老人に変わって牢で苦しみながら死んだ。
ジリウス国とジレノミラ王国の間で平和協定が結ばれ、黒竜騎士団への脅威はすべて無くなった。
頼まれた依頼は、完全に終了した。
彩音・・主人公の妹、十四歳
マーニャ・・・スノートの貴族の娘、黒竜騎士団会計騎士隊騎士
ペペ・・・遺物に封じ込まれていた霊魂
ファネル・・・元公爵の御婆ちゃん、翔の骨董仲間でこの国の実力者
グッグル・・・ジリウス国陸軍大将、ジレノミラ王国に捕えられている
ジレノミラ王国・・・翔達が飛ばされた国の名前
ジリウス国・・・ジレノミラ王国の西側の隣国
クスク山地帯・・・・ジレノミラ王国西部とジリウス国との間の国境山地
ケクル・・・クスク山地帯の南端ににある港町
ククル・・・下流の谷を堰止めた場所に出来た町の名前
キクル・・・上流の谷を堰止めた場所に出来た町の名前
カクル・・・ダム湖最上流の大断層直下の湖畔の船着き場
グロッサ草・・・蟻退治に使用する神経麻痺殺虫剤
ゲンゲジ草・・・蟻用の麻痺剤
ーーーーー
(カケル)
ジレノミラ王国貴族院議会は全会一致でグッグル陸軍大将と捕虜として囚われていたジリウス国陸軍の無条件釈放を可決した。
これは物凄く異例の事態で、ファネルさんの裏工作が功を奏した部分もあるのだが、最も大きかったのは両替商ギルドの全面的なバックアップが得られたことだ。
両替商ギルドは、これが見返りの大きい投資であると判断したのだ。
だがこれですべて解決した訳ではない、悪戯にジリウス国内を混乱させるのは、戦乱を望むナルスを喜ばせ、ナルスの巧みな情報操作によって泥沼状態を作り出す結果になるだけなのだ。
ジリウス国にはナルス側を支持する戦力が数多く残されている、有力貴族の私軍や王城を護る守備隊などがそれだ。
それだけではない、王は既に木偶となっていることは想像できるのだが、王城に籠るナルスを攻めれば、実質的に王を攻めることになり、ナルスに与しない勢力も敵に回す可能性が高いのだ。
理想は一切の戦闘行為無しに王城へと辿り着き、王城の守備兵と争う事無しにナルスと対峙して化けの皮を剥すことだ。
幸い海軍は密かに全面的な協力を申し出てくれている、海軍もナルスとは反りが合わなかったらしい。
だが海路にしても陸路にしても必ず途中に貴族領が存在し、少々思考的に手詰まり状態になっている。
早く解決してムーの遺跡に行きたいのだが時間ばかりが過ぎて行く。
自分の世界に戻るにしても不安が有る、この世界に来て二年近くが過ぎている、戻っても順応できるのか、そして最大の不安は彩音との関係を未練なく断ち切れるかどうかなのだ。
彩音も俺も意識は完全に夫婦になってしまっている。
大人気無いとは思いながら、この不安を忘れようと、王都に戻ってから連日明け方まで彩音との夜の営みを続けている。
今日も五回連続で昇り詰めて彩音が意識を失った、そしてぺぺが出て来た。
「ぺぺ、ムーの都って、うっ、何人くらい、あっ、住んでたんだ」
「ひっ、あっ、うっ、十万、あっ、くらい、あっ、あっ、じゃ、あっ、うん、そこ」
「あんな、あっ、山奥へ、うっ、どうやって、ひっ、食い物を、あっ、運んだ、うっ、んだ」
「広い、ひー、街道が、あう、在ったに、うー、決まってる、うっ、じゃろ、あっ、あっ、ひー、あっ、いく、いく、いくー」
「あー」
”びゅっ、びゅっ、びゅー”
俺は彩音のペペに注ぎ込みながら閃いた。
早速地図を取り出して、ムー帝国の街道が有った場所をペペから教わった。
翌日再びカクルへと向かい、ムーの遺跡に降りる、彩音を同行して火の水晶は持って行ったが、この状況を放置する訳には行かないので鏡を見に行くのは我慢した。
目的はムーの街道の状態の調査だ。
街道は蔦に覆われ埋まっていたものの、強固な作りで掘り返せばそのまま使える状態だった。
嬉しい事にクスク山地帯の中をジリウス国王都に向けて伸びていた。
この調査には二月ほど要したのだが、その間五回程刺客に襲われ、全て捕えた。
ペペに記憶を探って貰い、グッグルさんの伝手でジリウス国の暗殺被害者の貴族の元へ密かに犯人として引き渡した。
刺客の何人かは、秘密を知られた一族から制裁に対する恐怖と自分の命に対する執着で、貴族に尋問に対し洗いざらい白状した。
幾つかの準備が整ったので、吟遊詩人達を使って歌をジリウス国に広めた。
王城に巣食う悪魔を退治するために奇跡が起こって正義の軍隊が現れるという内容の詩だ。
そして、新年の年明け、行動を起こした。
街道を覆っていた蔦や木を焼き払い、街道を覆っていた土を十分に乾燥させる。
そこへ遺跡に溜まっていた水を汲み上げ土を洗い流す。
人々には突然石畳の敷かれた街道が出現した様に見えた筈だ。
そこをグッグルさん率いる軍隊で王都に向けて行進して貰う。
目的はなんとなく解っているのだが、ナルスを支持する貴族達も、悪魔を退治しに来た軍隊相手に出兵するのは外聞が悪くて躊躇する、そしてその隙に、戦闘が起きないままグッグルさんの部隊が王城を包囲する。
密かに刺客を引き渡した貴族達も援軍として駆け付けてくれる、そうなると、援軍を送らなっかった貴族は悪魔の味方と思われるとの思惑が波及し、乗り遅れない様にと全ての貴族が援軍を送って寄越す。
城の守備兵達も困惑した、相手は王を害する為でではなく、悪魔退治を名目に取り囲んでいるのだ。
強く抵抗すると悪魔を護る輩と見なされてしまう、守備兵達もこちらの尻馬に乗らざるを得ない。
グッグルさんの部隊が王城に受け入れられ、宰相の執務室を取り囲む、そして王との面会を拒んでいたナルスの協力者達を拘束し、廃人となっていた王や王族を救い出す。
そして数週間後、餌を切らしたナリスがミイラの様な老人に変わって牢で苦しみながら死んだ。
ジリウス国とジレノミラ王国の間で平和協定が結ばれ、黒竜騎士団への脅威はすべて無くなった。
頼まれた依頼は、完全に終了した。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
824
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる