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Ⅵ クシュナ古代遺跡
1 兄妹縁の町に到着す
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王都の西の崖に有る昇籠場を昇り、ハラ高原を定期馬車で二日ほど揺られるとクシュ大地溝と呼ばれる大きな大地の裂け目に辿り着いた。
クシュナの古代遺跡の入口はその地溝の底にある。
地溝の縁には、遺跡から持ち帰られる素材や魔道具がもたらす富のお零れに与ろうと多くの人々が移り住み、町が形成されていた。
馬車を降りて大きく伸びをする、甲羅の舟を使った方が早くて楽だったのだが、ホークさんとウィルさんが物凄く嫌がったので、普通に馬車に揺られてやって来た。
全員の髪が銀もしくは白の一目で王都から来た魔術師達と判る集団は、馬車を降りた途端に客引きの様な女達に囲まれ腕を引かれている。
だが全員髪に色が入っている俺達には誰も近付いて来ない。
「彼女達はダンジョンから持ち帰った素材や魔道具の手配師さ。なんとか有力な冒険者と繋ぎを着け、良い物を卸して貰おうと必死なんだよ。僕等は荷運び程度にしか思われてないのかな。まあ、鬱陶しくなくて良いけどね」
「取り敢えず最新の迷路図を買ってから宿を探すぞ」
「あのー、宿と迷路図をお探しでしょうか。宜しかったら紹介させて下さい」
茶色い髪をお下げにした背の低い地味な女性が俺に声を掛けて来た、先程から手配師達の争奪戦に加わっていたが、弾き飛ばされて外側をうろうろしていた子だ。
たぶん争奪戦参加を諦めたのだろう。
「ホークさん、如何する」
「お前は地元の子か?」
「はいそうですが」
「地図入手の伝手はあるのか」
「地図職人の知り合いが居ますので少し安く卸せます」
「そーか、なら手配を頼もう」
「ありがとうございます。それと皆さん、荷運びで拾った素材を私に売ってくれると嬉しいのですが」
「構わんよ」
「ありがとうございます」
女性の名はナナさん、俺達を裏通りの小さいが小奇麗な宿に連れていってくれた。
「荷運びでも客は客だ、初仕事なんだから背伸びしないで正解だぞ、ナナ」
「ありがとうございます」
ナナさんは宿の主人と知り合いの様だ。
「三部屋朝夕弁当付きで一泊頼む」
「えっ!大部屋の素泊まりじゃなく良いのか」
「金はある。それとこの子と少し打ち合わせしたいんで、食堂を借りて良いか」
「構わんよ」
「じゃっ、酒も頼む」
食堂に移動して四人掛けのテーブルを二卓寄せて囲む。
「乾杯」
「お客さん達お金持ちなんですね」
「ああ、金は持ってる。じゃっ、まず地図の手配を頼みたい」
「えっ!荷運びの依頼主さんが決まってるんですか」
「まあ、そういう訳じゃないが。まず、入口から西の十六地区の七十八階層までの地図。七十八階層の周辺地図はもう作られてるのか」
「十一地区から三十二地区までの七十八階層図はありますが、準秘図なので高いですよ」
「構わん、取り敢えず十一地区から二十地区まで用意してくれ」
「依頼主さんと御相談しなくて宜しいんでしょか、高いですよ」
「構わん」
「・・・それなら、金貨五十枚を御用意頂ければ手配します」
「じゃっ、これで頼む」
ホークさんがマジックボックスから巾着を取り出してテーブルの上に置く。
その巾着から無造作に三回金貨を掴み出してテーブルの上に置く。
「えっ」
ナナさんは一瞬固まったが、直ぐに復帰してテーブルの上の金貨を数え始める。
三枚ホークさんの前に押し戻す。
「明朝までにご準備いたします。本当にお金持ちだったんですね。後は何かございますか」
「明朝の降籠の手配を頼む」
「それは冒険者さんしか予約できませんから、依頼主さんの宿とお名前を教えて下さい」
「ジョージ、許可証を渡してやってくれ」
「はい、ホークさん」
ーーーーー
クシュナ古代遺跡 鑑定術師兼迷宮探索補助員 ナナ
迷宮探索補助員資格を得て、これでやっと薄給の雑品鑑定の下請け業務から解放と思ったのですが、中々世の中上手く行きません。
初仕事と思い朝から頑張っているのですが、先輩方の迫力に太刀打ちできません。
そろそろ陽が傾き始めたのに、まだ冒険者さんに声すら掛けられていません。
今日は諦め、雑品鑑定の仕事を貰いに行こうと思ったら声が聞こえました。
「取り敢えず最新の迷路図を買ってから宿を探すぞ」
見ると、荷運びさん達が七人立っていました。
宿の紹介代はどうせ大部屋でしょうから、底の町まで連れて行っても銅貨二十枚程度ですが、地図なら安く入手できるコネがあります。
雑品鑑定よりも多少実入りが良さそうです。
「あのー、宿と迷路図をお探しでしょうか。宜しかったら紹介させて下さい」
小金持ちだったようで、部屋を三部屋頼んでくれました、嬉しい誤算です。
でも肝心の地図で変な事を言い始めました。
「入口から西の十六地区の七十八階層までの地図。七十八階層の周辺地図はもう作られてるのか」
荷運びさんなのに、最深部の高級地図の話を始めたんです。
たぶんこの人達に買える値段じゃありません。
「十一地区から三十二地区までの七十八階層図はありますが、準秘図なので高いですよ」
無理だろうと思って金貨五十枚と説明したら、本当に金貨五十枚を出してきました。
更に許可証まで持っていました、しかも宿帳と照合してみたら本人達でした。
荷運びさんと思っていたのは冒険者さんだったようです。
宿を出て急いで降籠の予約を手配し、ユーナの家に向かいます。
「ごめんユーナ、また地図が欲しいの。明日の朝までに」
「構わないけど何処の地図」
「入口から西の十六地区の七十八階層までと、西の十一地区から二十地区までの七十八階層の地図」
「えー、なにそれ。ちょっと御爺ちゃんを呼んで来る」
ユーナは幼馴染で地図職人の家の娘だ、ここには直近の迷路図の原本が揃っている、出荷前の地図を時々安く譲って貰っている。
「随分マニアックな注文じゃな、五枚程これから書かにゃならんが、情報元への支払いがあるから少し高いぞ」
「お金は預かって来たけど、幾ら」
「全部で金貨四十枚じゃ、払えるか」
「大丈夫」
金貨十枚の儲けだ、これは嬉しい、金貨四十枚を支払う。
「それじゃこれから描くから、ユーナも手伝え」
「ええ!」
「ごめんユーナ」
「ナナも墨擦るの手伝って、今夜は徹夜よ」
「えー」
クシュナの古代遺跡の入口はその地溝の底にある。
地溝の縁には、遺跡から持ち帰られる素材や魔道具がもたらす富のお零れに与ろうと多くの人々が移り住み、町が形成されていた。
馬車を降りて大きく伸びをする、甲羅の舟を使った方が早くて楽だったのだが、ホークさんとウィルさんが物凄く嫌がったので、普通に馬車に揺られてやって来た。
全員の髪が銀もしくは白の一目で王都から来た魔術師達と判る集団は、馬車を降りた途端に客引きの様な女達に囲まれ腕を引かれている。
だが全員髪に色が入っている俺達には誰も近付いて来ない。
「彼女達はダンジョンから持ち帰った素材や魔道具の手配師さ。なんとか有力な冒険者と繋ぎを着け、良い物を卸して貰おうと必死なんだよ。僕等は荷運び程度にしか思われてないのかな。まあ、鬱陶しくなくて良いけどね」
「取り敢えず最新の迷路図を買ってから宿を探すぞ」
「あのー、宿と迷路図をお探しでしょうか。宜しかったら紹介させて下さい」
茶色い髪をお下げにした背の低い地味な女性が俺に声を掛けて来た、先程から手配師達の争奪戦に加わっていたが、弾き飛ばされて外側をうろうろしていた子だ。
たぶん争奪戦参加を諦めたのだろう。
「ホークさん、如何する」
「お前は地元の子か?」
「はいそうですが」
「地図入手の伝手はあるのか」
「地図職人の知り合いが居ますので少し安く卸せます」
「そーか、なら手配を頼もう」
「ありがとうございます。それと皆さん、荷運びで拾った素材を私に売ってくれると嬉しいのですが」
「構わんよ」
「ありがとうございます」
女性の名はナナさん、俺達を裏通りの小さいが小奇麗な宿に連れていってくれた。
「荷運びでも客は客だ、初仕事なんだから背伸びしないで正解だぞ、ナナ」
「ありがとうございます」
ナナさんは宿の主人と知り合いの様だ。
「三部屋朝夕弁当付きで一泊頼む」
「えっ!大部屋の素泊まりじゃなく良いのか」
「金はある。それとこの子と少し打ち合わせしたいんで、食堂を借りて良いか」
「構わんよ」
「じゃっ、酒も頼む」
食堂に移動して四人掛けのテーブルを二卓寄せて囲む。
「乾杯」
「お客さん達お金持ちなんですね」
「ああ、金は持ってる。じゃっ、まず地図の手配を頼みたい」
「えっ!荷運びの依頼主さんが決まってるんですか」
「まあ、そういう訳じゃないが。まず、入口から西の十六地区の七十八階層までの地図。七十八階層の周辺地図はもう作られてるのか」
「十一地区から三十二地区までの七十八階層図はありますが、準秘図なので高いですよ」
「構わん、取り敢えず十一地区から二十地区まで用意してくれ」
「依頼主さんと御相談しなくて宜しいんでしょか、高いですよ」
「構わん」
「・・・それなら、金貨五十枚を御用意頂ければ手配します」
「じゃっ、これで頼む」
ホークさんがマジックボックスから巾着を取り出してテーブルの上に置く。
その巾着から無造作に三回金貨を掴み出してテーブルの上に置く。
「えっ」
ナナさんは一瞬固まったが、直ぐに復帰してテーブルの上の金貨を数え始める。
三枚ホークさんの前に押し戻す。
「明朝までにご準備いたします。本当にお金持ちだったんですね。後は何かございますか」
「明朝の降籠の手配を頼む」
「それは冒険者さんしか予約できませんから、依頼主さんの宿とお名前を教えて下さい」
「ジョージ、許可証を渡してやってくれ」
「はい、ホークさん」
ーーーーー
クシュナ古代遺跡 鑑定術師兼迷宮探索補助員 ナナ
迷宮探索補助員資格を得て、これでやっと薄給の雑品鑑定の下請け業務から解放と思ったのですが、中々世の中上手く行きません。
初仕事と思い朝から頑張っているのですが、先輩方の迫力に太刀打ちできません。
そろそろ陽が傾き始めたのに、まだ冒険者さんに声すら掛けられていません。
今日は諦め、雑品鑑定の仕事を貰いに行こうと思ったら声が聞こえました。
「取り敢えず最新の迷路図を買ってから宿を探すぞ」
見ると、荷運びさん達が七人立っていました。
宿の紹介代はどうせ大部屋でしょうから、底の町まで連れて行っても銅貨二十枚程度ですが、地図なら安く入手できるコネがあります。
雑品鑑定よりも多少実入りが良さそうです。
「あのー、宿と迷路図をお探しでしょうか。宜しかったら紹介させて下さい」
小金持ちだったようで、部屋を三部屋頼んでくれました、嬉しい誤算です。
でも肝心の地図で変な事を言い始めました。
「入口から西の十六地区の七十八階層までの地図。七十八階層の周辺地図はもう作られてるのか」
荷運びさんなのに、最深部の高級地図の話を始めたんです。
たぶんこの人達に買える値段じゃありません。
「十一地区から三十二地区までの七十八階層図はありますが、準秘図なので高いですよ」
無理だろうと思って金貨五十枚と説明したら、本当に金貨五十枚を出してきました。
更に許可証まで持っていました、しかも宿帳と照合してみたら本人達でした。
荷運びさんと思っていたのは冒険者さんだったようです。
宿を出て急いで降籠の予約を手配し、ユーナの家に向かいます。
「ごめんユーナ、また地図が欲しいの。明日の朝までに」
「構わないけど何処の地図」
「入口から西の十六地区の七十八階層までと、西の十一地区から二十地区までの七十八階層の地図」
「えー、なにそれ。ちょっと御爺ちゃんを呼んで来る」
ユーナは幼馴染で地図職人の家の娘だ、ここには直近の迷路図の原本が揃っている、出荷前の地図を時々安く譲って貰っている。
「随分マニアックな注文じゃな、五枚程これから書かにゃならんが、情報元への支払いがあるから少し高いぞ」
「お金は預かって来たけど、幾ら」
「全部で金貨四十枚じゃ、払えるか」
「大丈夫」
金貨十枚の儲けだ、これは嬉しい、金貨四十枚を支払う。
「それじゃこれから描くから、ユーナも手伝え」
「ええ!」
「ごめんユーナ」
「ナナも墨擦るの手伝って、今夜は徹夜よ」
「えー」
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