兄妹○○は死罪です・・・妹と一緒にサンドワームに喰われました

切粉立方体

文字の大きさ
66 / 73
Ⅵ クシュナ古代遺跡

4 兄妹迷宮に挑む1

しおりを挟む
地底では闇の訪れが早い、見上げると上空にはまだ青空が残っているのだ、町に明かりが灯り始めた。

一本裏通りに入ったナナさんお薦めの料理屋へ向かい、名物の迷宮茸料理を食べる。
見た目は少し大きい松茸なのだが、口に入れてみるとクリームコロッケの味と触感だった。

「兄ちゃん、これ美味しいね」
「ああ、この味懐かしいな」
「西と北の迷宮で群生してるんですよ、結構荷運びさん達が持ち帰って来るんで名物料理になってるんです。後はこの猫髭草ですかね。これは北の迷宮に生えてるんです。硬い透明な草なんですが水を加えて炒めると柔らかくなって食べれるんです」

肉と根菜と併せて煮たクリームシチュー風やパスタを入れて焼いたグラタン風の迷宮茸のコース続々と出されて来た。
懐かしい味に舌鼓を打っていたら、突然チャイム風の音楽が外から聞こえて来た。
すると急に、窓から見える裏通りの様子が慌ただしくなり、遺跡の入口のある広場に向かって歩き始める人が多くなった。

「私達は魔時の金鈴って呼んでるんです。遺跡から聞こえて来るんですが、この金鈴を合図に遺跡の中が暗くなって怨霊が増えるんです。帰飛の水晶で戻って来る人も多いんで、皆さん出迎えに行かれるんです。この迷宮独特の光景ですから見に行ってみますか」
「はい」

「俺達はここで酒を飲んでるから行って来い」
「ねえ、ウィル。あたい達もここでお酒飲んでようよ」
「そうするか。姉ちゃん、俺達もここで酒を飲んでるからそいつ等を案内してやってくれ。レン、お前も見に行って良いぞ」

ホークさんとウィルさん、モニカさんとアニーさんはここで酒を飲みながら待つ事になり、俺達は広場へと向かった。

広場に着くと、広場の周囲は既に黒山の人集りになっていた。

広場の中央の敷石が光り始め、やがて敷石からレーザー光の様な光の帯が現れ、その光の帯が敷石の上に、足元から人を織り上げて行った。

現れた人は、疲れ切っていた様子で、直ぐにその場に座り込んでしまった。
その人を囲む様に他の敷石が光り、七人の人を織り上げて行く。
その人達の元へ商人風の人達が数人走り寄って、現れた人達を支えて歩き始めた。

その次に現れたのは、荷運びの人を二十人程伴った八人の集団だった。
荷運び達に賃金を手渡すと、広場の縁に絨毯を広げて、その上に戦利品を並べ始めた。
その絨毯を商人達が取り囲み、競りが始まった。

その次に現れたのは兵士を引き連れた騎士風の男だった、出迎えの兵士達が走り寄り、隊列を組んで町中へ消えて行った。

「皆さんスタイルはいろいろですよね。商会のサポート下に入って堅実に探索を繰り返す人、フリーで長期間潜って価値の高い遺物や魔道具を探求する人。実利を優先の人と栄誉を優先の人。ほら、帰飛の水晶って金貨五枚もするじゃないですか、軽装備の少人数で直ぐ帰って来るのか、荷運びさん達の水晶を負担してでも食料や装備を持ち込んで数週間以上徹底的に捜し回るのか、コスト面を考えると悩ましいですよね。皆さんしばらく試行錯誤して自分達に合ったスタイルを選ばれるようですよ」
「ナナちゃんはどっちが良いの」
「私達補助役は、帰飛の水晶が自分持ちですから長期間潜ってる方が嬉しいですね」
「ふーん、それで採算が合うの?」
「皆さんが持ち帰った品物を商店に買い上げて頂く時の手数料が一割ですから、持ち帰った品物次第ですね」
「ふーん、じゃっ、ナナちゃんは買い上げ先の伝手は有るの」
「私は地元民ですから、商店組合の方に知り合いが多いんです。信用できる方ばかりですから、自身を持って紹介できますよ。特に帰飛の水晶は不足していますから、他のお店より二割増しくらいで引き取って貰えますよ」

帰飛の水晶はこの遺跡でしか発掘されないローカルな魔道具で、使えるのはこの遺跡から脱出する時だけらしい。
迷宮の中で亡くなった冒険者達が残す物もあるが、北の迷宮の瓦礫の下から木箱に入った纏った数の物が時々発見されるらしいので、この遺跡の文明が栄えていた時は汎用品だったらしい。

水晶は使い捨てである、戻って来る時に一個、迷宮から脱出した同じ階層に戻りたければ、入る時にもう一個必要らしい。
ただ、迷宮に戻る時に水晶を使わない場合でも、完全に振り出しに戻る訳ではなく、10階層毎に存在する帰飛の扉を潜って一回地上に戻っておけば、次回からは、入口からその扉に転送されるらしい。

「でも、10階層を降りるのに普通の冒険者さんで一月くらい掛かりますからね。皆さん入る時もだいたい水晶を使われてますね」

金貨一枚は日本の物価で考えると十万円くらいと考えている。
だから帰飛の水晶は五十万円くらい、往復で使うと百万円。
荷運びも含めて二十人の集団なら往復で二千万円の計算になる。
だから冒険者達は半月で少なくとも二千万円以上稼がなけれならない。
ハイリスク、ハイリターンの乱暴な世界だ。

「だから皆さん装備品にはお金を惜しまないんで、この町には優秀な武器職人さんや防具職人さんが多く集まっているんですよ」

ナナさんが少し得意げに胸を張る。

「ナナさんの知り合いに防具職人さんはいますか」
「はい、大勢。私職人街の近くで育ちましたから」
「材料は有るんですが、特注って出来ますか」
「ええ、材料が有るんでしたらお安く作れますよ」

防具の材料はお店が数軒開ける程集まったのだが、マーシャル国を出発して以来、職人さんに加工を頼んでいる暇が無かった。
ここには少し長居をしそうなので、人並みの冒険者らしい装備を整えようと思っている。

「ええ、良いですよ。防具の種類は何ですか。結構ここは専門に別れているんです」
「一式お願いしたいんだけど、大丈夫ですかね」
「えっ、防具は持って来られなかったですか」
「あんまり必要が無かったんで、マリアと俺は持って無いんだ」
「あのー、失礼ですがお二人は迷宮の初心者さんですか」
「一回だけマーシャル国でホークさん達と一緒に入った事はあるよ」
「ええ、結構面白かった」
「一回だけですか」
「うん」
「命に関わりますよ。急いで造りに行きましょう」

「ねえ、デザインは考えてあるの、兄ちゃんの分も。彩色はしてくれるんでしょ」
「ええ、魔獸の素材なら染めてくれますよ。でもデザインを指示されると、機能面を考えて嫌がる職人さんが多いんです。だからあまり期待しないで下さいね」

ーーーーー

「おー、面白いなこのデザイン。機能面も理に適っている」

ナナさんの知り合いが務めている鎧工房にお邪魔している。
対応してくれたのは若い職人さん。
マリアが職人さんに示したデザイン図には、戦隊シリーズのアニメに出て来そうな衣装が描いてあった。
マリアが赤と白を基調としたデザイン、俺用は黒と青を基調としたデザインだ。

「それじゃ材料を見せてくれないか」

マジックボックスから適当に材料も引っ張り出して並べたら、その若い職人さんは固まってしまった。

「爺ちゃん!ちょっと来てくれ。こりゃ俺じゃ無理だ」
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

田舎娘、追放後に開いた小さな薬草店が国家レベルで大騒ぎになるほど大繁盛

タマ マコト
ファンタジー
【大好評につき21〜40話執筆決定!!】 田舎娘ミントは、王都の名門ローズ家で地味な使用人薬師として働いていたが、令嬢ローズマリーの嫉妬により濡れ衣を着せられ、理不尽に追放されてしまう。雨の中ひとり王都を去ったミントは、亡き祖母が残した田舎の小屋に戻り、そこで薬草店を開くことを決意。森で倒れていた謎の青年サフランを救ったことで、彼女の薬の“異常な効き目”が静かに広まりはじめ、村の小さな店《グリーンノート》へ、変化の風が吹き込み始める――。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

美人同僚のおまけとして異世界召喚された私、無能扱いされ王城から追い出される。私の才能を見出してくれた辺境伯様と一緒に田舎でのんびりスローライ

さら
恋愛
美人な同僚の“おまけ”として異世界に召喚された私。けれど、無能だと笑われ王城から追い出されてしまう――。 絶望していた私を拾ってくれたのは、冷徹と噂される辺境伯様でした。 荒れ果てた村で彼の隣に立ちながら、料理を作り、子供たちに針仕事を教え、少しずつ居場所を見つけていく私。 優しい言葉をかけてくれる領民たち、そして、時折見せる辺境伯様の微笑みに、胸がときめいていく……。 華やかな王都で「無能」と追放された女が、辺境で自分の価値を見つけ、誰よりも大切に愛される――。

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

処理中です...