兄妹○○は死罪です・・・妹と一緒にサンドワームに喰われました

切粉立方体

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Ⅵ クシュナ古代遺跡

6 兄妹迷宮に挑む3

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その夜俺は不思議な夢を見た。

この宿と同じ様な部屋でお茶を飲んでいる。
テーブルの向かいには少女が座っており、お茶を飲みながらパンフレットを眺めている。
姿形は違っているのだが、何故かその少女はこの世界のマリアであることが俺には判る。

俺達は本物の兄妹なのだが、今春、親許を離れて結婚し、ここで暮らしている。

「お兄ちゃん、明日開設の北地区の会員制ダンジョンは三ヶ月間五割引きだって」
「マリアは明日から夏休みか」
「うん、今日が休業式だよ」
「なら俺も明日から二週間休みが取れそうだから、二人で探検してみるか」
「うわー、嬉しい。でも仕事大丈夫なの」
「空間転移時の外装冷却方法の目途が付いたからな。ご褒美の休暇だそうだ」
「それって、母星帰還計画のネックだったんでしょ」
「ああ、この惑星にはゴルナリウムが無かったからな。でもやっと新しい代替素材の開発が終わったんだよ」
「私達の世代で母星に帰れるの」
「ああ、直ぐに実証実験を始める段取りになってるから、五年後くらいにはこの惑星を離脱できるんじゃないか」
「母星の町って映像でしか見た事が無いから楽しみだなー」
「そろそろ家出ないと遅刻するんじゃないのか」
「大丈夫、今日は少し遅くて良いの。それじゃ会員申込みしちゃうわね」
「ああ、頼む」

マリアが空中にディスプレイ映像を呼び出し入力を始めた。
俺もディスプレイ映像を呼び出して、業務メールの確認を始めた。

マリアは今春高校生になった。
それに併せて俺達は、マリアの高校と俺の職場である熱学研究所が近いこの新規造成区画に引っ越し、そして併せて結婚した。

「きゃっ」

部屋が揺れた、今週に入って三度目だ。

「ちっ、また時空研究所の連中の失敗だろ。危ないから止めさせれば良いんだ。どうせ帰還計画に含まれてない計画なんだから」

また揺れが来た。

「お兄ちゃん!」

今度は何かが違う、揺れが大きくそして長い。
そして空間が歪み始めた。
マリアが飛付いて来る。
だがマリアに手が届きそうになった瞬間に、俺は時空の裂け目に吸い込まれた。

「お兄ちゃん!」

ーーーーー
マリア

夢?いいえ、魂の奥に宿っていた記憶が蘇りました。
遠い昔、私の目の前で時空の裂け目に消えて行ったお兄ちゃんが、今、目の前で小さな寝息を立てて眠っています。

「お兄ちゃん!お兄ちゃん!お兄ちゃん!」

嬉しくて、嬉しくて涙が止まりません。
お兄ちゃんの胸に何度も顔を擦り付けました。

”駄目よ、兄ちゃんは私と一緒に帰るの”
”でも折角巡り会えたのに”
”駄目、そんな昔の話を今持ち出さないで頂戴”
”でも、でも、でも”
”駄目なものは駄目。第一兄ちゃんも私と帰りたがってるの!”
”でも私のお兄ちゃんなのよ”
”ダーメ、あんたにはジョージがいるでしょ。諦めてよ」

マリアちゃんが意地悪を言って私を苛めます。
諦めたく無い、私はお兄ちゃんにしがみ付きました。

ーーーーー
変な夢を見たので寝覚めが良く無い。
必死に手を伸ばすマリアの顔が頭に焼き付いて離れない。

俺に抱き着いて眠っているマリアの腕を解いて浴室に向かう。
浴槽に入ってスイッチを入れる。
光りがスキャンして、身体を一旦デジタルデータ化して再生する。
気持ちが良い。
この物質転送を応用した技術により、人の寿命は二百年伸びた筈だ。
あれ?なんで俺はそんなことを知っているのだろうか。

お茶を煎れてリビングに移動する。
端末を操作して、空中に画面を呼び出してメールを確認する。
勿論ホストへの接続が断たれているので表示されない。
あれ?俺は一体何をしているのだろうか。

何かが可笑しい、もう一度寝直すことにした。

寝室に戻るとマリアが怖い顔をしてベットに座っている。
恐る恐る近付くと、突然抱き付いて顔を俺の胸に擦り付け始めた。

「兄ちゃん、兄ちゃん、私と一緒に帰るよね」
「当たり前だろ」
「兄ちゃん、キスして」

まだ時間は有ると思って始めたのだが、三発も抜いてしまい、俺達は慌てて身支度を整えた。

ーーーーー
夢だった筈なのだが、何故だろう。
遺跡への入口を見た時に判ってしまった。
これは宇宙船、夢の中で俺が住んでいた町への転送ステーションだ。

「新米か。中でトラブルを起こすんじゃないぞ。通って良し」

横柄な態度の兵士の確認が終わってから、転送扉を潜る。
ナナさんも付いて来てるので全部で八人の集団だ。

そして降り立った時、周囲の光景を見て俺は確信した。
ここは南地区の最後部なのだが、ダンジョンの光景と町の光景が入り混じっている。
おそらくあの時空変動の影響で、娯楽施設であるダンジョン空間と実際の町空間が捻れて混在してしまったのだろう。

目の前に大型狼がポップアップして来た。

ダンジョンの物質転送を応用した元素構築システムは機能している様だ。

”ギャウン”

マリアの投石を喰らって消えて行った。
後に魔石が一つ残っている。
夢の中では、魔石は動力源兼通貨だった。

俺は脇の半分倒壊している雑貨屋だった店に入ってみる。

「ジョージさん、この辺は探し尽されてますから何も無いですよ」

ここは船外に出て、アウトドア生活を楽しむ人達の道具が豊富に揃っていた。
ここの親父は、レジの天板の間に倉庫の鍵を仕舞っていた。
探って見たら、黒いカードキーはまだ残されていた。

店奥の壁に向かう、外から見ても、中から見ても普通の壁ににしか見えないのだが、ここには倉庫空間が構築されている。
カードキーを晒してロックを解除すると扉が開いた。

「うわー、これって高級結界屋外住居、これは簡易厨房だし。うわー、新品のマジックボックスがこんなに一杯。
この背負子型なんか競りで物凄く高値がつくんですよ。うわー、これは」

ナナさんが狂乱状態になっているので、取り敢えず全部をマジックボックスの中へ放り込んで次へと向かう。
なんかナナさんに恨みがましい目で見られているが無視する。

そしてこの日は十階層まで降りてから地上に戻った。
ここの人達が帰飛の水晶と呼んでいる緊急脱出装置は、防災物資置場に千個ほど積んであったのでそれも回収しておいた。

ーーーーー
クシュナ古代遺跡 鑑定術師兼迷宮探索補助員 ナナ

何者なんでしょうジョージさんって。
探し尽されて雑草すら生えないと言われている第一層で、最初から知っていたかの様に隠し扉を探し当てました。
鑑定術師としての私の血が煮え滾り、鑑定を始めようとしたのですが、無情にもジョージさんが全部仕舞ってしまいました。

その後もジョージさんが次々に隠し扉を探し当てるので、私は殆ど半狂乱になっていました。
そしてジョージさんから戻ると言われて正気に戻った時には、既に十階層まで降りていました。
あれ?早い冒険者でも普通は一日で二階層が限界の筈です。

あれだけ隠し扉を探し当て、余分な時間が相当掛かっていた筈です。
なのに十階層?
なんか夢でも見ていた様な気分です。

一つのお店じゃ買い取り切れない量と思ったので、貸倉庫を借りて商店街の皆さんに集まって頂きました。

ジョージさんとマジックボックスから取り出したアイテムを並べて歩いたんですが、改めて見ても、一つ一つが物凄く珍しい物ばかりで、じっくり鑑定できなくてとても悲しかったです。
古代人達の服、薄い透明な袋に包まれているのでたぶん未使用品です。
しかも服に付いている文様が超高級品を示す物ばかりです。
文様付きの古代人達の下着、これは最早伝説品です。

大きな倉庫を借りた積りだったのですが、並べ終わったら足の踏み場も無いくらいの状態でした。
多分普通の冒険者さんが持ち帰る量の三、四年分でしょうか。

不思議な事に今日得られた魔石も盥一杯分もありました。
三百匹近い魔獣を倒した筈なのに、戦闘の記憶がまるで無いのです。
私は寝ていたのでしょうか。

「うわー、これは」
「両替商を呼んで来い」
「ナナちゃん、鑑定頼む」

商店街の御主人達がやってきました。
忙しくなりそうです。
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