兄妹○○は死罪です・・・妹と一緒にサンドワームに喰われました

切粉立方体

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Ⅵ クシュナ古代遺跡

8 兄妹迷宮に挑む5

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ーーーーー
マリア

ダンジョンの迷路と混じり合っていても、商業地区のお店の原型は残されています。
お兄ちゃんはレジのパネルを探りあて、レジを開けて収納されている倉庫のキーカードを取り出しています。

パネルの操作方法なんてこの時代の人達に解る筈がありません、お兄ちゃんも私同様に魂の記憶が蘇ったのでしょう。
パスワードは大抵、000000か111111か123456の三種類。
学生時代お店で商業地区でアルバイトをしていたお兄ちゃんは良く知っているパターンです。
レジの引き出しを開けると、小銭替りの魔石がジャラジャラと転がっています。
ダンジョンの換金アイテムとして魔道具用の魔石を使い始めたのですが、サービスの一環として魔石で商品が買えるようにした店がヒットしたので、それ以来通貨替りに普及したそうです。

私も記憶が蘇った事を何とかお兄ちゃんに知らせたいのですが、マリアちゃんに頑なに拒まれてしまいます。

”駄目よ、別れるのが辛くなるだけよ。兄ちゃんは私と帰るんだから”
”でも私のお兄ちゃんなのよ”
”あんたのお兄ちゃんはジョージでしょ、あの人は私の兄ちゃん!”
”意地悪言わないで!貴方も記憶が戻ったのは解ってるんでしょ”
”それは貴方の記憶でしょ、第一兄ちゃんは異世界人なのよ、この世界の人間じゃ無いのよ。可笑しいじゃない”
”それなら何でお兄ちゃんはここを知ってるのよ、何よりの証拠じゃないの”
”へん、それってジョージの記憶じゃないの?何言ってるのよ”
”違うもん、お兄ちゃんの記憶だもん”
”へー、兄ちゃんの頭の中が見えるのかなー。凄いねー。証明しなさいよ」
”うー、じゃっ、お兄ちゃんに聞いてよ”
”それはイヤ、絶対にイヤ。アッカンピー”
”狡いわよ!”

兄さんに話せば伝わりますが、兄さんの存在を否定するようで怖くて話せません。

ーーーーー
地図の存在する七十八階層までは、順調に探索が進んだ。
だが、地図の有無には理由が有った様で、地図の無い階層に入った途端、ダンジョンを形造っていた仮想空間と船のフロアの実空間のねじれが酷くなった。

目の前に見えているベンチが近付くにつれて巨大化したり、真っ直ぐ歩いている筈なのに真横に向かっていたりとか、場所によっては上下関係も解らなくなる場所もあった。
魔獸も怨霊も強力になって、マリアの投石で一発と言うわけには行かなくなり、分裂して再生するなんていう鬱陶しい奴も増え始めた。
結界を作って封じ込め、押しつぶして消滅させるような余計な手間が結構増えて来る。

下の階層への降り口も時空変動の影響で作動した緊急遮断隔壁で閉ざされた場所が多くなり、東西南北区全体を探索して、緊急遮断隔壁が下りていない場所を探さなければならなくなって来た。

怨霊もしぶとくなり、中のマリアに任せれば良いと思える奴が多くなるのだが、だが何故かマリアが頑張って譲らない。
注意しようとしたら、もの凄く怖い目で睨まれたので諦めた。
こんな目で睨まれる時は、何時も俺に何かの原因が有る時なのだが、思い当たる節がない。

徐々に一日に一階層しか進めなくなって来る。
商店や商会に卸す品物は、倉庫地区を通ったタイミングで品物を確保したので問題無かった。
あの時代は、窃盗の心配が殆ど皆無だったので、倉庫扉のパスワードも商店のレジ同様単純な番号が多い。
面倒臭かったが、戻ると大勢の商人達が待ち構えているので、手ぶらで帰る訳には行かなかった。

宿の主人の話によると、噂を聞いて他国から買い付けに訪れる商人や貴族が押し掛けて来ており、町外に新しく建設された十二ヶ所のオークション会場で昼夜を問わずに競りが掛けられているそうなのだ。
もし俺達が手ぶらで戻ったら、確実に暴動が起きるだろうと言われているそうなのだ。

ーーーーー
クシュナ古代遺跡 鑑定術師兼迷宮探索補助員 ナナ

うー、眠いです。

ジョージさんは一日に一階層しか進めないのが不満な様ですが、先輩達から聞いた話では、順調どころか驚異的スピードだそうです。
持ち帰る品物も数年に一、二個しか出ない珍しい物や初めて出土するような物が多くなりました。

そんな珍品が毎日倉庫一個分持ち帰られるのです。
メトノさんに聞いた話では、町外にオークション会場が新しく立てられ、私達の持ち帰った品物の半分以上がその会場で捌かれるそうです。

鑑定師としての血が物凄く騒ぐのですが、毎日の入札の集計確認と記録作業に追われてそんな暇ありません。
寝るのは毎日深夜です。
集計する数字のゼロが三つくらい増えてますが、もうそんな事には驚きません。

迷宮に入ればもう眠くても必死です。
帰飛の水晶を握り締めているよりも、ジョージさんのベルトを掴んでいる方が安全だと知りました。
その場所は、マリアさんの定位置でもあるらしく、時々マリアさんとバッティングしましたが、私も命に係わるので譲れません。

何故解るのかが解りませんが、ジョージさん達の目的地は百五十三階層に有るそうです。
そしてこの迷宮の最下層は二百三階層なのだそうです。

目的地に到着したらそこで探索は終えるそうで、今外で待ち受けている商人さん達が急な変化に困らない様に、持ち帰った品物の半分を保管して置く様に指示されました。
目立たない様に小さな倉庫を一つ借り、そこにジョージさんが迷宮から持ち帰った空間倉庫を十個並べてあります。
マジックボックスの倉庫版で、小さな箱の中に大倉庫十個分の品物が入ります。
勿論これは知られていない品物で、これ自体も魔道具として物凄い価値を持つ物です。

普通の軽石箱にしか見えないのですが、ジョージさんが使い方を知っていました。
若く見えますがジョージさんは考古学者さんなのでしょうか、魔道具に付いていた古代文字で書かれた紙を簡単に解読して現在の文字に書き直していました。

これはまだ倉庫に仕舞ってあるのですが、魔道具の設計書をジョージさんは持ち帰りました。
魔道具を作ろうと多くの魔術師達が研究しているのですが、まだ迷宮から持ち帰る以外の方法はありません。
もしこれが競りに掛けられたら、どの位の値が付くのか想像できません。
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