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Ⅱ 自由都市トルトノス
8 兄妹都市に戻る
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西塀の上には篝火が煌々と焚かれ、大勢の人が右往左往して大騒ぎになっている。
甲羅の舟を急いでマジックボックスに収納し、西塀の闇の中に身を潜めた。
塀の下には人の気配は無い、ちょうど上手い具合に隠し扉は篝火の灯が届かず闇の中に入っており、塀の上からは見えない。
音を立てない様に扉を開け、そっと身体を滑り込ませた。
扉の後ろ暗闇で安堵の溜息を吐く、これでやっと泥臭い臭いから解放される。
泥の波は塀間際まで押し寄せており、塀の周囲一帯に泥の臭いが漂っていたのだ。
通路を駆け抜けて風呂場に駆け込む、互いの髪の匂いを嗅ぎ合いながら、納得行くまで何度も髪を洗い直した。
臭いの方が気になって仕方がなかったので気にならなかったが、思え返せば裸で互いの匂いを嗅ぎ回っていたのだから他人が見たら完全に勘違いされただろう。
着ていた服も全て洗濯した、熱術で濡れた服を温め、水術で水分を水蒸気にして飛ばしたら、乾燥機に掛けた様に、服がふかふかに乾いた。
洗濯のスキルが増えたが、一先ずポイントは保留しておいた。
着替えて階段を登る、倉庫の中には人の気配が無いので扉を開けて上に出たが、真夜中過ぎなのに食堂には大勢の人が居た。
合図のノックをしてから、倉庫の戸口を少し開けて外を確かめる、宿の主人が大丈夫とのサインを送っていたので戸を開けて表に出る。
酒と飯を受け取りに厨房に入った様に見えるようにと、酒と料理の乗ったトレイを渡された。
ちょうど腹が減っていたので、そのまま食堂で席を探して腰かける。
「物凄い数の星が降ったらしいぞ」
「神殿の神官が祈祷に入ったらしい」
「ノーラ街道は沼から逃げ出した生き物が一杯で使えんらしいぞ、困ったな」
「大蜥蜴に被害が出たんで、卵が値上がりするらしいぞ」
「天変地異の前触れだって叫んでた占い師が守備隊にしょっ引かれたらしいな」
「でも星が降るんだから空に裂け目が出来たんだろ」
「学者様は単なる周期的な現象って言ってるらしいぞ、なんでも空と地の境目なんて元々無いんだってよ」
「もっと危ないじゃないか」
「星が降る前に幽霊舟が現れたらしい」
「逃げ出さなくていいのか」
「馬鹿野郎、相手は空から降って来るんだぞ。町の中が一番安全だろ」
「俺この任務が終わったら、里に帰って結婚するんだ」
「馬鹿、不吉な事言うなよ」
「俺はまだ死にたくないよ」
「ミリンダ、死ぬ前に一発やらせてくれ」
「馬鹿言ってんじゃないわよ」
「ダロス、俺は前からお前の事が」
「うわー、止めてくれ。俺にはそんな趣味は無いぞ」
周囲で騒いでいる声が耳に入って来る、この世界の人々は迷信深いのだろう、大混乱だ。
何か原因者として肩身が狭い、そっと酒のカップを口に運んだら、コースターに伝言が書いてあった。
”至急ギルドに顔を出して欲しい・・・クロード”
急いで飯を平らげてからギルドへと向かった。
宿の外でも真夜中なのに人が大勢表に出て、不安そうな表情で夜空を見上げていた。
空は正に降って来そうな満天の星だった。
「ご苦労だった、任務の履行は昨日隼便で知らせが来た。特殊な移動手段を使ってる様だが聴かないことにしよう。報酬は通行証の作成費用に回させて貰う。それと途中で手に入れた魔獣の部材が有れば買い取ろう」
「倉庫が有るんならそこで出した方が良いな」
「そんなに有るのか、判った倉庫に案内する」
地下倉庫に案内され、そこでマジックボックス収納した部材を広げる。
あまり良く数えて無かったが、結構な量があった。
蝙蝠や蟲の魔石がちょうど鰐亀の甲羅一杯分位、大蜥蜴の革が百二十三匹分、鰐亀の部材が五匹分、量が多いので査定は行うことになった。
事務室に戻ってお茶が振舞われた。
「沼に星が降った時の様子を教えてくれないか。たぶんお前等が一番近くに居た筈だ。色々な情報が錯綜していてな正確な所を知りたいんだ」
「背後で物凄い音がしたと思ったら、泥の大波に襲われた。だから落ちた時の様子は見て無いんだ」
「そーか、残念だが判った。まあ、無事でよかった、明日は昼過ぎまでには査定を終わらせるから、その時分までゆっくりしてくれ」
「判った」
そう、嘘は吐いて無い、俺達が通り過ぎた後、”なんちゃってメテオ”が襲撃者を襲ったのだから当然落ちた時の様子は見ていない。
勿論こんなに大騒ぎになっているのだから、俺達が原因者なんてことは口が裂けても言えない。
ーーーーー
「これだけの量がマジックボックスに入るんだ、魔力が二百以上と考えた方が良いだろうな」
「本当に鰐亀を二人で倒したんですかね、S級の魔物ですぜ」
「全部でどれ位になる」
「大雑把に見積もっても金貨三百枚は行きそうですぜ」
「そーか、通行証が出来上がるまで精々働いて貰うか、ミーネ、どうだった」
「嘘は吐いてません。ですが何かを隠してます」
「まあ、信用は出来ると言うことか」
甲羅の舟を急いでマジックボックスに収納し、西塀の闇の中に身を潜めた。
塀の下には人の気配は無い、ちょうど上手い具合に隠し扉は篝火の灯が届かず闇の中に入っており、塀の上からは見えない。
音を立てない様に扉を開け、そっと身体を滑り込ませた。
扉の後ろ暗闇で安堵の溜息を吐く、これでやっと泥臭い臭いから解放される。
泥の波は塀間際まで押し寄せており、塀の周囲一帯に泥の臭いが漂っていたのだ。
通路を駆け抜けて風呂場に駆け込む、互いの髪の匂いを嗅ぎ合いながら、納得行くまで何度も髪を洗い直した。
臭いの方が気になって仕方がなかったので気にならなかったが、思え返せば裸で互いの匂いを嗅ぎ回っていたのだから他人が見たら完全に勘違いされただろう。
着ていた服も全て洗濯した、熱術で濡れた服を温め、水術で水分を水蒸気にして飛ばしたら、乾燥機に掛けた様に、服がふかふかに乾いた。
洗濯のスキルが増えたが、一先ずポイントは保留しておいた。
着替えて階段を登る、倉庫の中には人の気配が無いので扉を開けて上に出たが、真夜中過ぎなのに食堂には大勢の人が居た。
合図のノックをしてから、倉庫の戸口を少し開けて外を確かめる、宿の主人が大丈夫とのサインを送っていたので戸を開けて表に出る。
酒と飯を受け取りに厨房に入った様に見えるようにと、酒と料理の乗ったトレイを渡された。
ちょうど腹が減っていたので、そのまま食堂で席を探して腰かける。
「物凄い数の星が降ったらしいぞ」
「神殿の神官が祈祷に入ったらしい」
「ノーラ街道は沼から逃げ出した生き物が一杯で使えんらしいぞ、困ったな」
「大蜥蜴に被害が出たんで、卵が値上がりするらしいぞ」
「天変地異の前触れだって叫んでた占い師が守備隊にしょっ引かれたらしいな」
「でも星が降るんだから空に裂け目が出来たんだろ」
「学者様は単なる周期的な現象って言ってるらしいぞ、なんでも空と地の境目なんて元々無いんだってよ」
「もっと危ないじゃないか」
「星が降る前に幽霊舟が現れたらしい」
「逃げ出さなくていいのか」
「馬鹿野郎、相手は空から降って来るんだぞ。町の中が一番安全だろ」
「俺この任務が終わったら、里に帰って結婚するんだ」
「馬鹿、不吉な事言うなよ」
「俺はまだ死にたくないよ」
「ミリンダ、死ぬ前に一発やらせてくれ」
「馬鹿言ってんじゃないわよ」
「ダロス、俺は前からお前の事が」
「うわー、止めてくれ。俺にはそんな趣味は無いぞ」
周囲で騒いでいる声が耳に入って来る、この世界の人々は迷信深いのだろう、大混乱だ。
何か原因者として肩身が狭い、そっと酒のカップを口に運んだら、コースターに伝言が書いてあった。
”至急ギルドに顔を出して欲しい・・・クロード”
急いで飯を平らげてからギルドへと向かった。
宿の外でも真夜中なのに人が大勢表に出て、不安そうな表情で夜空を見上げていた。
空は正に降って来そうな満天の星だった。
「ご苦労だった、任務の履行は昨日隼便で知らせが来た。特殊な移動手段を使ってる様だが聴かないことにしよう。報酬は通行証の作成費用に回させて貰う。それと途中で手に入れた魔獣の部材が有れば買い取ろう」
「倉庫が有るんならそこで出した方が良いな」
「そんなに有るのか、判った倉庫に案内する」
地下倉庫に案内され、そこでマジックボックス収納した部材を広げる。
あまり良く数えて無かったが、結構な量があった。
蝙蝠や蟲の魔石がちょうど鰐亀の甲羅一杯分位、大蜥蜴の革が百二十三匹分、鰐亀の部材が五匹分、量が多いので査定は行うことになった。
事務室に戻ってお茶が振舞われた。
「沼に星が降った時の様子を教えてくれないか。たぶんお前等が一番近くに居た筈だ。色々な情報が錯綜していてな正確な所を知りたいんだ」
「背後で物凄い音がしたと思ったら、泥の大波に襲われた。だから落ちた時の様子は見て無いんだ」
「そーか、残念だが判った。まあ、無事でよかった、明日は昼過ぎまでには査定を終わらせるから、その時分までゆっくりしてくれ」
「判った」
そう、嘘は吐いて無い、俺達が通り過ぎた後、”なんちゃってメテオ”が襲撃者を襲ったのだから当然落ちた時の様子は見ていない。
勿論こんなに大騒ぎになっているのだから、俺達が原因者なんてことは口が裂けても言えない。
ーーーーー
「これだけの量がマジックボックスに入るんだ、魔力が二百以上と考えた方が良いだろうな」
「本当に鰐亀を二人で倒したんですかね、S級の魔物ですぜ」
「全部でどれ位になる」
「大雑把に見積もっても金貨三百枚は行きそうですぜ」
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