兄妹○○は死罪です・・・妹と一緒にサンドワームに喰われました

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Ⅱ 自由都市トルトノス

7 兄妹初めてのお使い5

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ヒューロス王国”妖精王”監視部隊ノーラ街道脇幕営

我が国のトルトノス駐在領事が、トルトノスへの”妖精王”の搬入情報を得たのが一年前である、トルトノス評議会の内部協力者から極秘情報だった。
以来我らは王命として”妖精王”監視を命じられ、ノーラ街道を拠点に”妖精王”の監視を続けている。
トルトノスと我が国の協定により、トルトノスの都市内での武力行使は認められていないが、万が一”妖精王”が都市外に持ち出されたら、全力で確保に当る様に命じられている。

トルトノスを一歩出れば、そこは我が国の領土内である、万が一網を張っている他国の密偵部隊に遅れを取る様であれば、確実に自分の首は胴とおさらばする。

「隊長、東塀からトルトノスに向かって疾走する舟があるとの報告です」
「”妖精王”の手掛かりになるかもしれん、沼中央で捕える」
「了解です」

今朝、エンリオスの町の酒場で変な噂話が広がっていた、昨晩沼に幽霊舟が出たと言うのだ。
噂の出所は、今朝町に戻った大蜥蜴の卵漁師達で、昨晩沼から引き揚げて来る途中に船首に鬼火を灯した舟を目撃したというのだ。
その舟は沼の上を信じられない速度で疾走しており、瞬時に目の前を通り過ぎて消えて行ったという。
目撃者が一人ならば単なる与太話で済ませるのだが、目撃者が複数いた。

不審に思い、念のためエンリオスの町の東塀に遠見者を立てたのが今夕、すると早速その不審舟が網に掛かったのだ。
我が国の部隊が他国の部隊に比べて有利な点は、地の利を生かして綿密な情報の網を構築できることだ、この情報は確実に他国は掌握していない。
全員に蛭防止用の繋ぎ服に着替えさせ、万が一に備えて用意した泥上移動用の特殊高速”ガタ”に片膝を乗せて沼中央に向けて出発した。

新たな情報が入ったのは五日前である、トルトノス評議会の内部協力者から”妖精王”の都市外への持ち出しの動きがあるとの驚くべき情報だった。
王宮に増員を要請し、トルトノス周辺の街道には全て人を配して固めていた。

三日前に捕獲情報が二件あった、だが何れも”妖精王”に見せかけた偽物で、手の混んだことにそれなりのレベルの冒険者が偽物の運搬に雇われていた。
しかもいずれも本人達は本物と思い込まされていた。

残る経路は沼地のみ、そう確信して準備を整えたところに幽霊舟の情報が入ったのだ。
万が一、既にエンリオスに持ち込まれたのであれば、舟の操縦者を締め上げて吐かせるだけだ。
エンリオスならば、トルトノスと違い遠慮なく部隊を送り込める。

沼の中央に到達すると、遥か彼方から火を灯した舟が走って来た、成程、浮遊の魔法なのだろうか物凄い速さだ、だが、わざわざ目立つように火を灯すなど大馬鹿者もいいところだ。

進路を塞いで取り囲む為に散開の合図を送ったその時だった、突然泥を漕いでいた右足を何者かに掴れたかと思った。
全員が一斉に前のめりに倒れた、泥に顔をのめり込ませると誰もが思ったのだが、意に反して硬い岩盤に激突した。
信じられなかった、部隊百人の足元が一瞬で岩に変わっていたのだ。

足が岩に嵌って身動きが出来ない、なす術も無く通り過ぎる舟を見送るしかなかった。
そしてその後更に信じられない事が起こった、夜空から流星雨が降り注いで来たのだ。

ーーーーー
「マリア、身動き出来ない様にしてから”なんちゃってメテオ”攻撃は酷いんじゃないか、相手は人だし」
「大丈夫よ、当て無い様に投げたから」

物凄い数の人が、物凄い速さで接近していることは随分前から気配で察知していた。
撃退はマリアがやりたいと言うので任せたら、土術で襲撃者の足元を岩に変えて身動き出来ない様にしてから”なんちゃってメテオ”を繰り出したのだ。

土術で次から次へと泥を岩に変え、物凄い速さで放り上げ始めたのだ。

”ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド”

背後から、岩が沼に落ちる物凄い音が聞こえて来た。

「うわー!、兄ちゃん後ろ」

背後を振り向いたら泥の大波が迫って来ていた。
氷のレールを上に伸ばして、舟を跳ね上げる。
上手く波の頂点に舟が乗り、物凄い勢いで運ばれて行く。
藪を押し倒しながら乗り越え、トルトノス西塀の直ぐ近くに舟が着地した。

あー驚いた、沼の真ん中で衝撃波を起こしたのだから、良く考えれば大波が起きるのは当たり前だ。
帰りは僅か半日で到着してしまった。

ーーーーー
無数の流星雨を見上げた時は死んだと思い、幼い娘の顔が頭に過った。
だが、流星雨は我々を避ける様に、我々の周辺に降り注いだ。
明らかに操作された流星雨、伝説級戦略魔法の”メテオ”だ。

粘度を失った泥面が盛り上がって襲って来た時は、再び死の恐怖が頭を過った。
だが幸いな事に、全員岩に足を取られていたので、押し流されずに無事だった。
”ガタ”は全て波に攫われて無い、魔法の効力が失われて足が抜ける様になると、泥沼を歩いて帰った。

気持ちは物凄く焦っていた、禁呪魔法”メテオ”の使い手が現れたのだ、一刻も早く王宮に報告しなくてはならない。
重要度は”妖精王”の比では無い、使い手の確保が国家の存亡に関わるのだ。
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