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Ⅲ 王都フルムル
4 兄妹王都に向かう4
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峠を越えて道がなだらかな下り道になり始めると、森は次第に明るくなり、街道の幅も少し広くなる。
他の商隊の護衛達の顔に安堵の表情が広がっているから、危険な個所は乗り切ったという事らしい。
二割は途中で襲われて命を落とすと聞いていたので、町を出た荷車がすべて無事に安全圏に辿り着くのはかなり希な事だったらしい。
街道は所々見晴らしの良い場所を通る様になり、魔獣の気配も薄くなる、やがて下方に高い丸太の塀で囲まれた町並みが見えて来た。
クスク大森林で取れる野獣や魔獣の革や森林奥で採取される希少な薬草や茸が集まる、猟師の町トロラである。
町に近付くと、森から獲物を背負った猟師たちが現れ街道を歩く人が多くなる。
猟師達は突如現れた大きな荷車隊を驚いた顔で見送っていた。
黒と銀が混じった髪で西欧風の顔立ち、毛皮の服を着て背中の荷に弓と矢筒を括り付けている。
山の民と呼ばれる人々で、トルノトスに辿り着いた時の俺達に似ている。
門を抜けて町に入ると大きな広場になっており、絨毯を広げて、商人が猟師から毛皮を買い取っていた。
他の商隊は町の商人ギルドへ通行証の手配に向かったが、この隊は貴族特権で通行証は不要なので直接宿の手配へと向かった。
俺達は別れて別の宿を取ろうと思ったのだが、ミハエルが強引に俺達の部屋を確保して、結局俺達も同宿することになった。
重厚なログハウスの木の温もりが気分を落ち着かせる宿だったが残念な事に風呂が無かった。
井戸端で男女関係無く裸になって水浴びしているのだが、やはり日本人としては暖かい風呂に入りたかった。
なので部屋は広いし床も頑丈そうだったので、甲羅の舟をマジックボックスから引っ張り出して風呂桶替りにした。
水術で水を貯め、熱術でお湯に変える。
極楽だった、マリアは俺の膝の上に座り込んで寛いでいる。
何か段々裸で身体を寄せ合っていることに違和感が無くなり、むしろマリアが幼かった時の様に自然な感覚になっている。
マリアも俺に身体を洗わせることに抵抗が無くなったようで、幼い頃の様に安心しきって俺に身体を預けている。
水術で水を蒸発させ、甲羅をマジックボックスに仕舞う、柔らかい布で身体を拭いて一息吐く。
食事は肉と山菜と茸がメインだった、山牛の肉はやはり野犬よりも美味しかった。
食後ミハエルの部屋に呼ばれた、俺達の部屋の三倍近い広さがあり、大きな応接セットが置いてあった。
その応接セットでミハエルが商人達を相手にしていた。
金魚の糞の様に後ろに付いて来た商人達が一斉に礼を言いにやって来たのだ。
礼にと自分の商っている商品を、ミハエルへのPRがてら献上しに来たのだ。
宝石や香水や香辛料、装飾具や魔道具や薬草など値の張る珍しいものが多かった。
商人達が帰ると、ミハエルはそのすべてを惜しげもなく俺達に押し付けた。
「このお礼の主は君達だからね、爺構わないだろ」
「勿論でございます、お坊ちゃま」
「僕からのお礼は王都に着いてから改めてするよ、君達が一緒で今回助かったよ。ヤマダに聞いたよ、君達強いんだね。どうだい、僕の家に雇われないかい、報酬は弾むよ」
冗談じゃない、ネルトネッテ伯爵に居場所を知られてしまう可能性が物凄く高くなる、まだ火炙りにされたくない。
「悪いが買い被りだ、俺達はたまたまオーガの動きを封じる手段を持っていただけで、強い訳じゃない」
「父さんに頼んで騎士に取り立てても良いんだよ」
「すまんが、騎士には興味が無い。マリと二人で静かに暮らせればそれで満足だ」
「そーか、欲が無いんだね。何か事情が有るんなら相談に乗るよ」
「いや、そんな物はない」
商人達の献上品をマジックボックスに入れてミハエルの部屋から退出した。
ーーーーー
「爺、あのマジックボックス気が付いたかい」
「いえ、少々容量が大きそうですが普通の品かと」
「アリューシャは」
「そうね、縁取りがノーラ様の文様だったからノーラ神殿からの贈り物ね。それに縦方向に刻印刺繍が並んでたから神殿の上位者の持ち物ね」
「正解、あのバックと同じ物を御祖母さんが持ってるんだ」
「若、あれは聖女のバックなのですか」
「うん、たぶん」
「でも使ってたのは男よ、ミーシャ」
「夫婦なら共有できるんだよ。この国に聖女は二人しかいない。爺、父さんに連絡して調べさせて貰えるかい」
「承知いたしました」
他の商隊の護衛達の顔に安堵の表情が広がっているから、危険な個所は乗り切ったという事らしい。
二割は途中で襲われて命を落とすと聞いていたので、町を出た荷車がすべて無事に安全圏に辿り着くのはかなり希な事だったらしい。
街道は所々見晴らしの良い場所を通る様になり、魔獣の気配も薄くなる、やがて下方に高い丸太の塀で囲まれた町並みが見えて来た。
クスク大森林で取れる野獣や魔獣の革や森林奥で採取される希少な薬草や茸が集まる、猟師の町トロラである。
町に近付くと、森から獲物を背負った猟師たちが現れ街道を歩く人が多くなる。
猟師達は突如現れた大きな荷車隊を驚いた顔で見送っていた。
黒と銀が混じった髪で西欧風の顔立ち、毛皮の服を着て背中の荷に弓と矢筒を括り付けている。
山の民と呼ばれる人々で、トルノトスに辿り着いた時の俺達に似ている。
門を抜けて町に入ると大きな広場になっており、絨毯を広げて、商人が猟師から毛皮を買い取っていた。
他の商隊は町の商人ギルドへ通行証の手配に向かったが、この隊は貴族特権で通行証は不要なので直接宿の手配へと向かった。
俺達は別れて別の宿を取ろうと思ったのだが、ミハエルが強引に俺達の部屋を確保して、結局俺達も同宿することになった。
重厚なログハウスの木の温もりが気分を落ち着かせる宿だったが残念な事に風呂が無かった。
井戸端で男女関係無く裸になって水浴びしているのだが、やはり日本人としては暖かい風呂に入りたかった。
なので部屋は広いし床も頑丈そうだったので、甲羅の舟をマジックボックスから引っ張り出して風呂桶替りにした。
水術で水を貯め、熱術でお湯に変える。
極楽だった、マリアは俺の膝の上に座り込んで寛いでいる。
何か段々裸で身体を寄せ合っていることに違和感が無くなり、むしろマリアが幼かった時の様に自然な感覚になっている。
マリアも俺に身体を洗わせることに抵抗が無くなったようで、幼い頃の様に安心しきって俺に身体を預けている。
水術で水を蒸発させ、甲羅をマジックボックスに仕舞う、柔らかい布で身体を拭いて一息吐く。
食事は肉と山菜と茸がメインだった、山牛の肉はやはり野犬よりも美味しかった。
食後ミハエルの部屋に呼ばれた、俺達の部屋の三倍近い広さがあり、大きな応接セットが置いてあった。
その応接セットでミハエルが商人達を相手にしていた。
金魚の糞の様に後ろに付いて来た商人達が一斉に礼を言いにやって来たのだ。
礼にと自分の商っている商品を、ミハエルへのPRがてら献上しに来たのだ。
宝石や香水や香辛料、装飾具や魔道具や薬草など値の張る珍しいものが多かった。
商人達が帰ると、ミハエルはそのすべてを惜しげもなく俺達に押し付けた。
「このお礼の主は君達だからね、爺構わないだろ」
「勿論でございます、お坊ちゃま」
「僕からのお礼は王都に着いてから改めてするよ、君達が一緒で今回助かったよ。ヤマダに聞いたよ、君達強いんだね。どうだい、僕の家に雇われないかい、報酬は弾むよ」
冗談じゃない、ネルトネッテ伯爵に居場所を知られてしまう可能性が物凄く高くなる、まだ火炙りにされたくない。
「悪いが買い被りだ、俺達はたまたまオーガの動きを封じる手段を持っていただけで、強い訳じゃない」
「父さんに頼んで騎士に取り立てても良いんだよ」
「すまんが、騎士には興味が無い。マリと二人で静かに暮らせればそれで満足だ」
「そーか、欲が無いんだね。何か事情が有るんなら相談に乗るよ」
「いや、そんな物はない」
商人達の献上品をマジックボックスに入れてミハエルの部屋から退出した。
ーーーーー
「爺、あのマジックボックス気が付いたかい」
「いえ、少々容量が大きそうですが普通の品かと」
「アリューシャは」
「そうね、縁取りがノーラ様の文様だったからノーラ神殿からの贈り物ね。それに縦方向に刻印刺繍が並んでたから神殿の上位者の持ち物ね」
「正解、あのバックと同じ物を御祖母さんが持ってるんだ」
「若、あれは聖女のバックなのですか」
「うん、たぶん」
「でも使ってたのは男よ、ミーシャ」
「夫婦なら共有できるんだよ。この国に聖女は二人しかいない。爺、父さんに連絡して調べさせて貰えるかい」
「承知いたしました」
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