兄妹○○は死罪です・・・妹と一緒にサンドワームに喰われました

切粉立方体

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Ⅳ マーシャル国

2 兄妹再び竜を倒す

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マーシャル国王アルース十三世

神々は思慮深く、その深慮は我々諸人に伺い知ることは出来ない。
まさか娘を掠って逃げた男に国を救われることになるとは思わなかった。
今、目の前のソファーで娘と引っ付いて座っている、”離れろこの野郎、打ち首にするぞ”、私は心の声をぐっと飲み込んだ。

私はヒューロス王都の領事館から送られて来た大鷲便で、ヒューロス国で竜が倒されたことを知った。
薄紙にびっしりと書かれた細かい字から、領事の興奮は伝わって来た、だがあまりにも荒唐無稽な内容に、御伽噺のような話であり、また所詮他国の事であると思えてあまり真剣には考えていなかった。
通常一度竜が現れれば、その周辺国にはその後数十年に渡って竜が現れないというのが常識だった、だから私は単純に厄災は去ったと思い込んでいた。

だがそれは、人間が都合よく勝手に思い込んでいた常識であって、私を嘲笑う様に、その手紙を受け取った二日後に山岳警備隊から我が国への地竜侵入を知らせる報が届いた。
領事の報告を目を皿のようにして読んだ、絵空事と思っていたことが、急に現実そのものとして目の前に突き付けられたのだ。

我が国は、北大陸の魔法王国と呼ばれている魔術先進国である、前例さえ解れば同様な魔術の構築は十分可能と考えていた。
大陸中の優れた魔術師と学者を集めた魔術学院もある、魔術後進国で山奥の辺境国であるヒューロスの魔術師が可能な事が、我が国の魔術師に不可能な事は有り得ないと思っていたのだ。
学院の魔術師と学者を集め、領事からの報告書を示して竜討伐を打診した、だが、何時もは鋭く辛辣な意見を述べる連中が腕を組んで唸っているばかりだった。
信じられない事に、魔術の天才達が魔力も魔術技術も違い過ぎて参考にならないと言うのだ、化け物と言うのが報告書を読んだ彼等の正直な感想だった。

その化け物が目の前で美味そうに菓子を食って、軍の幹部連中が来るのを待っている、昨日も思ったのだが、情報からは人間離れした神々しさや禍々しさを想像していたのだが、ごく普通の少女と少年だ、なんか心配になって来た。

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マーシャル国軍司令長官ブラッド

王の執務室に入ると、王の向かいのソファーに姫と姫を攫って逃げた男が座っていた、本来であれば地下牢に引っ立てるところだが、ヒューロス国の次期国王であり竜殺しを伴って来たというから一時保留だ。

「ブラッド、ミハエルは知ってるな」
「はい良ーく、存じております」
「はははは」
「こちらが竜討伐をお願いするジョージさんとマリアさんだ」

普通の少年と少女だ、竜討伐を任せて大丈夫なのだろうか。

「宜しく、ブラッドです」
「宜しく、時間無いので早速打ち合わせをお願いします。王都の周辺地図はありますか」
「はい、御用意して来ております」
「それでは、そこのテーブル上に広げて頂いて、竜の飛来予想コース、時刻、住民の避難状況を教えて頂けますか」

飛来時間の誤差、地形、土地の利用状況、住民の有無を細かく聞かれ、思っていたよりも考え方が緻密だった。
カリノイ平原に竜の迎撃場所が設定され、全軍に出動命令が出された、軍の役割は基本的には囮と解体役で、打ち漏らした場合の餌としての足止め役と聞かされているので、複雑な思いがある。

迎撃方法はミニチュア版を作って実演して見せてくれた、氷の針と土の針を打ち上げると言う、聞いた限りでは物凄く単純な方法なのだが、熱術に才を持つ者や土術と火術の才を併せ持つ物が試して見たが、爆発力の方向を調整する感覚が難し過ぎて上手く行かなかった。
我が国の兵は基本的に皆魔術兵である、その魔術のプロが出来ないくらい繊細な魔術なのである。

魔術学院の魔術師や学者も同行して来た、命を失う恐怖よりも好奇心が勝ったらしい。

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魔術学院熱術研究室教授ゼンザ

学院の全て研究室の教授から研究員までが同行してきた、自分も命は惜しかったが、竜討伐を自分の目で見なければ研究者として一生後悔すると思ったのだ。
計測機器を荷車に乗せて引いているグループもある、墓場に向かっているのかも知れないのに、皆気分が高揚してお祭り気分だ。

テントを張って待つ事しばし、光術で拡大スクリーンを構築していたグループから声が上がった。

「来たぞ、でかい」

山を越えて竜が現れた、スクリーンの中の姿がみるみる大きくなる、山と比較する全長四百ノトは有りそうだ、完全に魔体クラスだ。

平原の中を一艘の舟が走って行く。

「何だあれは」

誰かが呆れ声で叫んだ、舟が通り過ぎる両脇に氷と土に柱が乱立して行くのだ。
高さが二十ノトは有る、規模も数も、物凄い魔力量が必要な筈なのだが、行使されている魔力は意外なほど少ない。
今度はその無数の柱が整然と飛び立って竜を包み込んで行く、こりゃ驚きだ、火術で爆発力を得るのは理解できる、火術はもともとそのような術だ、だが熱術であの爆発力を得る方法が判らない。

”ギャー”

竜が墜落した。

”メテオ”

間髪を入れず少女の声が響き渡り、竜に隕石が降り注いだ。
竜が悶え苦しんでいる、恐ろしい光景だ。
竜が動かなくなり、少年が竜に駆け昇った。
熱術で氷の足場を作っていたので、熱術はこの少年なのだろう。
止めを刺した様で少年が剣を天に振り上げると、平原に歓声が巻き起こった。
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