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Ⅳ マーシャル国
4 兄妹職スキルが変わる
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ミランダ家公子ミハエル
歓声と興奮とが溢れ出る討伐現場を後にして、僕はマーシャル国の幹部達と一緒に一足先に王都へと戻った。
ジョージとマリアも伴おうとしたのだが、後処理の指揮者が必要との理由で彼らは討伐現場に残る事になった、ヒューロスでもそうだったが、彼等は率先して地味な汚れ仕事を兵士達の陣頭に立って行う。
僕等は、この様なやり方は下位の者達から侮られるとして、厳に慎むべき行為として教わるのだが、あのような物凄い魔術を見せられた後では、肩を並べての作業する彼等に感激する者は有っても、侮る者など皆無であろう。
既に兵士達から崇拝に近い好意を寄せられている、でも彼等には聖人君主的な崇高な雰囲気は無く、むしろ成行きの義務感的な、庶民的な雰囲気を漂わせているので、より身近な好意を持たれているようだ。
本当に、あれだけの飛び抜けた力を持ちながら、不思議な連中だ。
王都に戻ると民衆の熱烈な歓迎を受け、あたかも僕が討伐した様な感じで、先頭に立って表通りを行進する羽目になってしまった。
王宮に入り、謁見の大広間で立ち並ぶ貴族達が見守る中、王に討伐の顛末を報告した。
これで僕の役処はお終い、やっと肩の荷が下りたと思ったのだが、アリューシャの王城脱走(王は未だ僕の誘拐と思っている)以来の心労が重なったのだろうか、僕の報告を聞いて笑みを浮かべ、立ち上がって僕の手を取るとそのまま気を失って倒れてしまったのだ。
王を抱き抱えて支える恰好となった僕は、そのまま大広間から医師団の担架で運び出される王に従う振りをして、そのままその場から脱走しようとした。
だが良く僕を視ていたと思う、宰相とアリューシャと王妃に引き留められてしまった。
アリューシャと王妃はまだ僕の左右の袖を引く程度だったのだが、宰相に至っては僕の右足に縋り付いて必死の形相だった。
王妃、アリューシャの母さんなのだが、僕の手を取ると、首を左右にプルプルと振って”私には無理”との意思表示をしてから、王を気遣う風を装って脱走してしまった。
アリューシャと僕が取り残された、アリューシャは僕の腕に縋り付いて必死に僕を見つめている、仕方が無い、アリューシャを片腕にぶら提げながら玉座の前に立った、広間にいる人全員が僕を見つめている。
「王に替わって、マーシャル国に降り掛かっていた大いなる災いは、無事取り除かれたことをここに宣言します」
歓声が沸き起こった、他国の人間の僕がこんな真似をして良いのだろうか。
撲も流され易い質だとつくづく思う、結局、貴族院や王都の民衆への勝利宣言、祝勝式典の準備、費用の算段や決済、ギルドや貴族からの寄付に対する礼状書きなどをやる羽目になった。
役人達が、保留になって溜まっていた各種法令改正の承認決裁まで持ち込んで来たので、それはさすがに不味いと突き返したが、役人達が王の委任状を持って来たので、結局これも僕が決裁することになった。
その後も各種の業務に関する王の委任状が次々に届き、完全な王の業務の代行者になってしまった。
討伐の祝典業務については、途中から主役であるジョージとマリアを呼び出して肩代わりさせようと思ったのだが、忙しくて手が放せないとのつれない返事が返って来た。
ヒューロス国の件もある、研究生活はもう無理と考え、僕は忙しい合間を縫って学院の僕の部屋を引き払う準備をすることにした。
僕がヒューロスへ戻ったのは、父さんからエスピの誕生会へ出席しないと学費を打ち切るとの脅迫があったからで、もちろん誕生会が終われば直ぐに学院に戻って、また平穏な研究生活を再開する積もりでいた。
それが、アリューシャが王城を脱走して僕を追いかけて来た事に始まり、メテオ、竜退治と僕が望まないトラブルの連続で、結局今日に至っている。
学院の自分の部屋に戻ると、部屋の中は僕がこの部屋を急いで出て来た時のままで、机の上には書き掛けの論文が広げられていた。
椅子の背には、部屋を出る時に脱ぎ棄てて行った服や灰色のローブがそのまま掛かっている。
羊毛紙の上に積もった埃を指でなぞると、全てのここでの思い出が遠い昔の御伽噺だった様な気がする。
研究室にも顔を出した、数少ない研究員達も皆竜の討伐現場に出向いており、年老いた教授が一人、がらんとした部屋の中でお茶を飲んでいた。
教授に二人の魔力の吸収量の多さについて話して見た。
「古魔法文明時代の古い文献に同じ様な記述を見た記憶があるわね。ちょっと待っててね、探して来るから」
暫く待たされた後、教授は古い文献を大事そうに抱えて戻って来た。
「有ったわ、ほら、ここ。二百三十七ページの下から五行目」
教授はインデックスの魔術に優れた才能を持っており、図書館の書士から学院の教授に転身した経歴の持ち主だ。
僕の魔術に対する観察も含め、魔術を体系化して整理しようとするこの研究室の試みは物凄く学生や研究員達に人気が無い、僕が抜けた後のこの研究室の行く末が凄く心配だ。
”祖神の加護を受けし者、その力を大いに伸ばす。特に祖神により異世界より召喚されし者、その加護特に厚く、多大なる経験値を得ることにより急速なる成長を得て、神に近き力を得る。特に括目すべきは、異界の魂が魔気を乾いた砂が水を飲み込むがごときに吸収して、魔力が無尽蔵に供給され続けることにある。歴史書に名を残す多くの勇者、賢者がこの加護を得し者と言われている”
ーーーーー
兵士達から俺は”勇者”、マリアは”賢者”と呼ばれている、最初は一生懸命否定していたのだが、次第に面倒臭くなって、その呼び名を受け入れていた。
そして気が付いたら職スキルが”勇者”と”賢者”に書き換わっており、俺は体術関係の基礎能力、筋力から操作力、マリアは魔術関係の基礎能力である知力から集中力までが十づつアップしていた。
余り嬉しく無い、今回の竜退治でレベルアップしたのでボーナスポイントは増えているし、こんな物騒な職は早々に返上したいところだ、そのうちに魔王退治に狩り出されそうで怖い。
俺達の望み、正確にはジョージとマリアの望みなのだが、魔法王国で結婚式を挙げて、後は平穏無事に暮らす事だ。
歓声と興奮とが溢れ出る討伐現場を後にして、僕はマーシャル国の幹部達と一緒に一足先に王都へと戻った。
ジョージとマリアも伴おうとしたのだが、後処理の指揮者が必要との理由で彼らは討伐現場に残る事になった、ヒューロスでもそうだったが、彼等は率先して地味な汚れ仕事を兵士達の陣頭に立って行う。
僕等は、この様なやり方は下位の者達から侮られるとして、厳に慎むべき行為として教わるのだが、あのような物凄い魔術を見せられた後では、肩を並べての作業する彼等に感激する者は有っても、侮る者など皆無であろう。
既に兵士達から崇拝に近い好意を寄せられている、でも彼等には聖人君主的な崇高な雰囲気は無く、むしろ成行きの義務感的な、庶民的な雰囲気を漂わせているので、より身近な好意を持たれているようだ。
本当に、あれだけの飛び抜けた力を持ちながら、不思議な連中だ。
王都に戻ると民衆の熱烈な歓迎を受け、あたかも僕が討伐した様な感じで、先頭に立って表通りを行進する羽目になってしまった。
王宮に入り、謁見の大広間で立ち並ぶ貴族達が見守る中、王に討伐の顛末を報告した。
これで僕の役処はお終い、やっと肩の荷が下りたと思ったのだが、アリューシャの王城脱走(王は未だ僕の誘拐と思っている)以来の心労が重なったのだろうか、僕の報告を聞いて笑みを浮かべ、立ち上がって僕の手を取るとそのまま気を失って倒れてしまったのだ。
王を抱き抱えて支える恰好となった僕は、そのまま大広間から医師団の担架で運び出される王に従う振りをして、そのままその場から脱走しようとした。
だが良く僕を視ていたと思う、宰相とアリューシャと王妃に引き留められてしまった。
アリューシャと王妃はまだ僕の左右の袖を引く程度だったのだが、宰相に至っては僕の右足に縋り付いて必死の形相だった。
王妃、アリューシャの母さんなのだが、僕の手を取ると、首を左右にプルプルと振って”私には無理”との意思表示をしてから、王を気遣う風を装って脱走してしまった。
アリューシャと僕が取り残された、アリューシャは僕の腕に縋り付いて必死に僕を見つめている、仕方が無い、アリューシャを片腕にぶら提げながら玉座の前に立った、広間にいる人全員が僕を見つめている。
「王に替わって、マーシャル国に降り掛かっていた大いなる災いは、無事取り除かれたことをここに宣言します」
歓声が沸き起こった、他国の人間の僕がこんな真似をして良いのだろうか。
撲も流され易い質だとつくづく思う、結局、貴族院や王都の民衆への勝利宣言、祝勝式典の準備、費用の算段や決済、ギルドや貴族からの寄付に対する礼状書きなどをやる羽目になった。
役人達が、保留になって溜まっていた各種法令改正の承認決裁まで持ち込んで来たので、それはさすがに不味いと突き返したが、役人達が王の委任状を持って来たので、結局これも僕が決裁することになった。
その後も各種の業務に関する王の委任状が次々に届き、完全な王の業務の代行者になってしまった。
討伐の祝典業務については、途中から主役であるジョージとマリアを呼び出して肩代わりさせようと思ったのだが、忙しくて手が放せないとのつれない返事が返って来た。
ヒューロス国の件もある、研究生活はもう無理と考え、僕は忙しい合間を縫って学院の僕の部屋を引き払う準備をすることにした。
僕がヒューロスへ戻ったのは、父さんからエスピの誕生会へ出席しないと学費を打ち切るとの脅迫があったからで、もちろん誕生会が終われば直ぐに学院に戻って、また平穏な研究生活を再開する積もりでいた。
それが、アリューシャが王城を脱走して僕を追いかけて来た事に始まり、メテオ、竜退治と僕が望まないトラブルの連続で、結局今日に至っている。
学院の自分の部屋に戻ると、部屋の中は僕がこの部屋を急いで出て来た時のままで、机の上には書き掛けの論文が広げられていた。
椅子の背には、部屋を出る時に脱ぎ棄てて行った服や灰色のローブがそのまま掛かっている。
羊毛紙の上に積もった埃を指でなぞると、全てのここでの思い出が遠い昔の御伽噺だった様な気がする。
研究室にも顔を出した、数少ない研究員達も皆竜の討伐現場に出向いており、年老いた教授が一人、がらんとした部屋の中でお茶を飲んでいた。
教授に二人の魔力の吸収量の多さについて話して見た。
「古魔法文明時代の古い文献に同じ様な記述を見た記憶があるわね。ちょっと待っててね、探して来るから」
暫く待たされた後、教授は古い文献を大事そうに抱えて戻って来た。
「有ったわ、ほら、ここ。二百三十七ページの下から五行目」
教授はインデックスの魔術に優れた才能を持っており、図書館の書士から学院の教授に転身した経歴の持ち主だ。
僕の魔術に対する観察も含め、魔術を体系化して整理しようとするこの研究室の試みは物凄く学生や研究員達に人気が無い、僕が抜けた後のこの研究室の行く末が凄く心配だ。
”祖神の加護を受けし者、その力を大いに伸ばす。特に祖神により異世界より召喚されし者、その加護特に厚く、多大なる経験値を得ることにより急速なる成長を得て、神に近き力を得る。特に括目すべきは、異界の魂が魔気を乾いた砂が水を飲み込むがごときに吸収して、魔力が無尽蔵に供給され続けることにある。歴史書に名を残す多くの勇者、賢者がこの加護を得し者と言われている”
ーーーーー
兵士達から俺は”勇者”、マリアは”賢者”と呼ばれている、最初は一生懸命否定していたのだが、次第に面倒臭くなって、その呼び名を受け入れていた。
そして気が付いたら職スキルが”勇者”と”賢者”に書き換わっており、俺は体術関係の基礎能力、筋力から操作力、マリアは魔術関係の基礎能力である知力から集中力までが十づつアップしていた。
余り嬉しく無い、今回の竜退治でレベルアップしたのでボーナスポイントは増えているし、こんな物騒な職は早々に返上したいところだ、そのうちに魔王退治に狩り出されそうで怖い。
俺達の望み、正確にはジョージとマリアの望みなのだが、魔法王国で結婚式を挙げて、後は平穏無事に暮らす事だ。
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