お兄ちゃん、馬鹿な事言わないでよ -妹付き異世界漫遊記ー

切粉立方体

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12 オークも手強いなと

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オメトーノ森林地帯の白竜騎士団前線基地に到着。
基地の中は、何かドヨヨンと暗い雰囲気が充満している。
中を歩いている兵士も心持ち足を引きずっており、疲弊している。

その中、治療所だけは賑わっていた、カスミさんが目を輝かせている。

「おばさん、私直ぐに手伝ってくるよ。傷口が・・、怪我人があんなに一杯いるし」
「駄目じゃ、サクラさんへの挨拶が先じゃ」

司令所に入る。
太い丸太で作った三階立てのログハウスだ。
守衛室に声を掛けたら三階の会議室に通された。

会議室の革製の座り心地の椅子で待っているとドアが開いて騎士団長が入って来た。
小柄でスリムな女性を伴っている。
その女性は地図らしき物を抱えていた。

鋭い眼光の東洋系の美人で、騎士団長らしい重い雰囲気を纏っていた。

「おばさん、ようこそいらっしゃいました。ありがとうございます。これは副長のピノスです」
「ピノスです宜しくお願いします」
「うむ、此奴が手紙に書いたミノスじゃ、でっ、その横が妹のミーナ、私の弟子じゃ」
「宜しくお願いします」
「宜しく」

サクラさんは俺を値踏みする様な目で見ている。

「姉さん、私は怪我人の所へ行って良い。傷の深い美味しそうなのが一杯いたし」

サクラさんが深い溜息を吐く。

「程々にしろよ」
「はい、ありがとう姉さん。ミーナも一緒に来るか」
「はい」

カスミさんがミーナを連れてスキップしながら出て行った。

「じゃサクラ、早々で悪いが今の状況を説明してくれ」
「はい、おばさん。ピノス、地図を広げて」

会議テーブルの上に地図が広げられた。
オメトーノ森林地帯の地図で前線基地を中心に左右に長い黒の破線、それと同じく前線基地を中心とした短い赤の破線が引いてある。

「この黒の破線が結界敷設予定線です。それで現在までに一部の作業が終了しているのがこの赤い破線です」

黒い破線は五十キロくらい、それに対して赤い破線は僅か二キロくらいだ。

「何故そんなに遅れておる。それとこの赤破線の部分はどこまで作業が終わっておるんじゃ」
「原因はオークによる妨害です。それと赤破線の部分は継ぎ足しが終わっていませんのでガーゴイルの進入が防げてません」
「それじゃ意味が無いだろうに」
「申し訳ありません」

オークとは豚の顔をした人型獣だ、同族の雌よりも人間の女性に物凄く感心を示すという。
ゴブリンよりも強く、オーガよりは弱い。
知能が高く、人間から奪った武器を使いこなす。

「どんな妨害をするんじゃ」
「見て頂いた方が早いと思い準備いたしました。ピノス」
「はっ」

ピノスさんが会議室の窓のカーテンを開けて手を振る。
眼下で結界杭の設営作業が始まった。

女性兵士三人がスコップを持って走り、適当な場所に小さな穴を掘る。
次に女性兵士二人が魔法杭を担いで走り、穴に杭を立てる。
五人で協力して根本に土を入れて踏み固める。

次いで十人程の女性兵士が五十センチ角の木箱を運び込み、杭の周りにピラミッド状の足場を築く。
ここまでの作業でオークは妨害する素振りは全然見せない。

大木槌を持った女性兵士が木箱の足場を駆け上る。
頂上に立って杭に大木槌を打ち込もうとした瞬間、知らない間に大勢集まっていたオークが魔法杭の結界に体当たりをかませた。

”バチ”

電撃が走ってオークを弾き飛ばしたが、木箱の頂上にいた女性兵士も電撃に弾き飛ばされ木箱のピラミッドを転げ落ちる。
段の途中で逆さに引っかかって痙攣している、腰の周りに巻いた金属の垂れが捲れて白い小さなパンティーが覗いている。

その姿を見てオークが大喜びで股間を振りながら踊っている。
あの何とも言えない様な淫猥な姿が理解出来るなんてオークも侮れない。
何か楽しそうに踊っている、俺も向こう側に混じりたいくらいだ。
サクラさんが合図をして、ピノスさんがカーテンを閉める。

「ミノス、貴様何を考えておる」
「いや、オークも手強いなと」

「あの作業を男にやらせてみたのだが、オーク共が怒って執拗に結界に攻撃を仕掛けて来た。長い奴は半日電撃の中に閉じこめられて一月治療所に入院する羽目になったのだ。幸い我が団の半数は女性なので今は女性にあの作業をやらせているのだがそれでも捗らない。まるで笊で水を掬っている気分になる」
「それと不思議なんですが、私が作業に参加した時、彼奴等最初から執拗に攻撃を仕掛けて来たんです」

うん、不思議じゃない、たぶん胸を見て判断してるんだろう。

「ミノス、出来るか」
「はい、たぶん大丈夫と思います」

最初に杭の継ぎ足し作業から開始し、ガーゴイルの進入を減らした。
怪我人が減り、カスミさんががっかりしていた。

そして梯子を担いで設置作業を開始した。
三日に一本、しかも継ぎ足しも出来ない状況だったのが、俺ならば一日十五本で継ぎ足しまで完了する。
なのでこの作業はすべて俺がやることになった。

喜ばれた、泣いて喜ばれた。
風呂場で泣きながら抱き付かれて感謝された。
うん、タユンタユンでパフパフの人が多かったので俺も物凄く嬉しかった。
そして毎日ミーナに殴られた。

結界杭の設置作業は三ヶ月で終わった。

「お兄ちゃん、私カスミさんに治療方法教わったから今度怪我治してあげる」

指で傷口を広げる練習をしている、一体何を教わったのだろうか。
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