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Ⅰ 第一学年
35 そして夏休み2
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籤引きの結果、同行者は迷子と舞と明美と香と木見さんで決定した、全員D組の僕のクラスメートだ。
大神宮さんと雷子は一年のA組、水見さんと風見さんは二年のA組、生徒会長は三年のA組なので、D組の雑草的な引きの強さがA組のエリート達を上回ったのだろう。
明美と香は興味が無い素振だった癖に、ちゃっかりと籤に参加していた。
旅行の同伴者は兎も角、事務要員は十人も不要なので、全員の情報世界への適性を確認してみることにした。
勿論雷子は別格だが、意外な事に明美と香が才能を示した、”勝組だ”と言って拳を握って喜んでいた。
その次が迷子と舞と木見さん、そして余り才能が無かったのが水見さんと風見さんと会長と大神宮さんだ。
四人共、”雑種の方が才能が有るのね”と悪態をついて悔しがっていた。
なので五人には少し練習して貰い、簡単な依頼を手伝って貰うことにした。
初心者の訓練はおじさんの講義を手伝って慣れている、早速訓練を初めてみた。
最初は情報の世界のプールでの泳ぎ方の練習、迂闊な事に忘れていたのだが、溺れそうになった時に意識を吹き込む動作のイメージが人口呼吸と一緒だったのだ。
事務的に淡々とこなすには、普段から顔を合わせている友人達なので難しく、イメージの中の世界だけの出来事なのだが、濃厚に唇を合わせた後は、訓練が終わって現実世界に戻っても、真面に互いの目が見れなかった。
二日目の訓練の時には、恥ずかしそうに目を伏せてもじもじされたので、僕まで変な気分になってしまった。
雷子は別格なので、他のメンバーの訓練が終わった後、都内の企業から依頼された仕事に同行して貰った。
「こいつ誰、祓っちゃっていい」
「マスター、この汚物を排除して宜しいでしょうか」
一目見た時点でハルと雷子は敵愾心を丸出しにして睨みあっている、これは困った。
「雷子、この子はAIのハルで僕のアシスタントをして貰っている。ハル、この子は僕の親戚の雷子だ、実習生として討伐を手伝って貰う。二人とも仲良くしてくれ」
「雷君、なんで電子記録を人間扱いしてるのよ、私が居れば不要でしょ。ディレイトしましょ」
「マスターこの脳足りんを破砕してから埋め立て処分してよろしいでしょうか」
「なによ、私は脳足りんじゃ無いわよ」
「意思と知能と知性を有する人格に対して記録呼ばわりする馬鹿は、脳足りんで十分です」
「なによこの物怪、成敗してやるわ」
「物怪との表現は不適切です、訂正を要求します」
殴り合いになりそうな二人を引き剥し依頼の処理を始める。
ハルが右腕、雷子が左腕にしがみ付いている。
この日の仕事は普段の三倍気疲れした、そしてこの夜、部屋に戻ってからハルの所へ行ってみると、何時もより僕に甘えて来た。
「迷子起きろ」
何時もどおり夜明け前に迷子を起こす、夏休みでも夜明けの祈祷は通常通り行われる。
「うーん、お早う雷君」
寝ながら伸びをしているが、Tシャツ一枚で寝ているので、シャツが腹の上まで捲れ上がっている。
恥ずかしがるとか、警戒するとかの気配が一切無く、何時も通り無防備だ。
僕を信頼してるのか、男としての認識が無いのか、少々複雑だ。
舞を起こしに行く、此奴は裸で寝ている。
「おい、舞起きろ」
「うーん、雷君お早う、ねえ、お早うのキス」
祈祷を終わらせ、急いで着替えて出発する。
正門で明美と香と落合い、飯田橋駅から六時前の電車に乗って羽田空港へ向かう。
ゲート潜ってから朝飯を食べて、七時十分の便で徳島空港に向かった。
今日は徳島から松山まで、JR高徳線と予讃線に乗って依頼をこなしながら移動する予定だ。
依頼を七件こなして、無事、夜の七時前に道後温泉に到着、そして宿に到着してから気が付いた、宿泊人数が増える連絡はしたのだが、部屋数を増やす事は忘れていたのだ。
空き部屋は無かった、なので潔く諦めた。
軽く温泉に浸かってから、後の事は考えないで夕食を食べることにした。
最後に依頼をこなした松山市内の会社さんが地元の銘酒の限定大吟醸を十五本届けてくれた。
「あはははは、雷君練習、練習」
”ぶちゅー”
迷子は飲むと陽気になる、すっかりお酒の口移しが気に入ってしまったらしい。
「じゃっ、次、舞君」
”ぶちゅー”
「あははははは」
「じゃっ、お返しだ」
手を引いて引き寄せる、ん、迷子じゃないがだれでも一緒だろう、口移しで酒を飲ませる。
”ぶちゅー”
木見さんだった、なんか驚いている、うん、新鮮な反応だ、じゃっ御代り。
”ぶちゅー”
「こりゃー、紅葉二回もずるいぞ」
「なんだー、明美もか」
”ぶちゅー、ぶちゅー”
「香は一回おまけだ」
”ぶちゅー、ぶちゅー、ぶちゅー”
「紅葉もおまけだ」
”ぶちゅー、ぶちゅー、ぶちゅー”
「うわー、紅葉ちゃん可愛い」
”ぶちゅー”
「あはははは、紅葉ちゃん」
”ぶちゅー”
「雷人、もう一回」
「じゃっ、もう三回」
”ぶちゅー、ぶちゅー、ぶちゅー”
「香もか」
”ぶちゅー、ぶちゅー、ぶちゅー”
「雷君」
「迷子」
”ぶちゅー”
「雷君」
「舞」
”ぶちゅー”
行かん、世界が星を纏って回り始めた。
誰かを抱えて脇に敷いてある布団にダイブした。
すると誰かが次々と背中に飛び込んで来る。
翌朝目が覚めると香と木見さんを抱えて寝ていた、背中に迷子と舞と明美が乗っている。
昨日は何があったんだろう、良く覚えていない。
座卓に上に一升瓶が二十本以上並んでいた、うー、頭が痛い。
今日は松山市内で二件こなしたら、高知へ移動だ。
この日、ハルを最初に呼び出した時、何故かハルは凄く不機嫌だった。
大神宮さんと雷子は一年のA組、水見さんと風見さんは二年のA組、生徒会長は三年のA組なので、D組の雑草的な引きの強さがA組のエリート達を上回ったのだろう。
明美と香は興味が無い素振だった癖に、ちゃっかりと籤に参加していた。
旅行の同伴者は兎も角、事務要員は十人も不要なので、全員の情報世界への適性を確認してみることにした。
勿論雷子は別格だが、意外な事に明美と香が才能を示した、”勝組だ”と言って拳を握って喜んでいた。
その次が迷子と舞と木見さん、そして余り才能が無かったのが水見さんと風見さんと会長と大神宮さんだ。
四人共、”雑種の方が才能が有るのね”と悪態をついて悔しがっていた。
なので五人には少し練習して貰い、簡単な依頼を手伝って貰うことにした。
初心者の訓練はおじさんの講義を手伝って慣れている、早速訓練を初めてみた。
最初は情報の世界のプールでの泳ぎ方の練習、迂闊な事に忘れていたのだが、溺れそうになった時に意識を吹き込む動作のイメージが人口呼吸と一緒だったのだ。
事務的に淡々とこなすには、普段から顔を合わせている友人達なので難しく、イメージの中の世界だけの出来事なのだが、濃厚に唇を合わせた後は、訓練が終わって現実世界に戻っても、真面に互いの目が見れなかった。
二日目の訓練の時には、恥ずかしそうに目を伏せてもじもじされたので、僕まで変な気分になってしまった。
雷子は別格なので、他のメンバーの訓練が終わった後、都内の企業から依頼された仕事に同行して貰った。
「こいつ誰、祓っちゃっていい」
「マスター、この汚物を排除して宜しいでしょうか」
一目見た時点でハルと雷子は敵愾心を丸出しにして睨みあっている、これは困った。
「雷子、この子はAIのハルで僕のアシスタントをして貰っている。ハル、この子は僕の親戚の雷子だ、実習生として討伐を手伝って貰う。二人とも仲良くしてくれ」
「雷君、なんで電子記録を人間扱いしてるのよ、私が居れば不要でしょ。ディレイトしましょ」
「マスターこの脳足りんを破砕してから埋め立て処分してよろしいでしょうか」
「なによ、私は脳足りんじゃ無いわよ」
「意思と知能と知性を有する人格に対して記録呼ばわりする馬鹿は、脳足りんで十分です」
「なによこの物怪、成敗してやるわ」
「物怪との表現は不適切です、訂正を要求します」
殴り合いになりそうな二人を引き剥し依頼の処理を始める。
ハルが右腕、雷子が左腕にしがみ付いている。
この日の仕事は普段の三倍気疲れした、そしてこの夜、部屋に戻ってからハルの所へ行ってみると、何時もより僕に甘えて来た。
「迷子起きろ」
何時もどおり夜明け前に迷子を起こす、夏休みでも夜明けの祈祷は通常通り行われる。
「うーん、お早う雷君」
寝ながら伸びをしているが、Tシャツ一枚で寝ているので、シャツが腹の上まで捲れ上がっている。
恥ずかしがるとか、警戒するとかの気配が一切無く、何時も通り無防備だ。
僕を信頼してるのか、男としての認識が無いのか、少々複雑だ。
舞を起こしに行く、此奴は裸で寝ている。
「おい、舞起きろ」
「うーん、雷君お早う、ねえ、お早うのキス」
祈祷を終わらせ、急いで着替えて出発する。
正門で明美と香と落合い、飯田橋駅から六時前の電車に乗って羽田空港へ向かう。
ゲート潜ってから朝飯を食べて、七時十分の便で徳島空港に向かった。
今日は徳島から松山まで、JR高徳線と予讃線に乗って依頼をこなしながら移動する予定だ。
依頼を七件こなして、無事、夜の七時前に道後温泉に到着、そして宿に到着してから気が付いた、宿泊人数が増える連絡はしたのだが、部屋数を増やす事は忘れていたのだ。
空き部屋は無かった、なので潔く諦めた。
軽く温泉に浸かってから、後の事は考えないで夕食を食べることにした。
最後に依頼をこなした松山市内の会社さんが地元の銘酒の限定大吟醸を十五本届けてくれた。
「あはははは、雷君練習、練習」
”ぶちゅー”
迷子は飲むと陽気になる、すっかりお酒の口移しが気に入ってしまったらしい。
「じゃっ、次、舞君」
”ぶちゅー”
「あははははは」
「じゃっ、お返しだ」
手を引いて引き寄せる、ん、迷子じゃないがだれでも一緒だろう、口移しで酒を飲ませる。
”ぶちゅー”
木見さんだった、なんか驚いている、うん、新鮮な反応だ、じゃっ御代り。
”ぶちゅー”
「こりゃー、紅葉二回もずるいぞ」
「なんだー、明美もか」
”ぶちゅー、ぶちゅー”
「香は一回おまけだ」
”ぶちゅー、ぶちゅー、ぶちゅー”
「紅葉もおまけだ」
”ぶちゅー、ぶちゅー、ぶちゅー”
「うわー、紅葉ちゃん可愛い」
”ぶちゅー”
「あはははは、紅葉ちゃん」
”ぶちゅー”
「雷人、もう一回」
「じゃっ、もう三回」
”ぶちゅー、ぶちゅー、ぶちゅー”
「香もか」
”ぶちゅー、ぶちゅー、ぶちゅー”
「雷君」
「迷子」
”ぶちゅー”
「雷君」
「舞」
”ぶちゅー”
行かん、世界が星を纏って回り始めた。
誰かを抱えて脇に敷いてある布団にダイブした。
すると誰かが次々と背中に飛び込んで来る。
翌朝目が覚めると香と木見さんを抱えて寝ていた、背中に迷子と舞と明美が乗っている。
昨日は何があったんだろう、良く覚えていない。
座卓に上に一升瓶が二十本以上並んでいた、うー、頭が痛い。
今日は松山市内で二件こなしたら、高知へ移動だ。
この日、ハルを最初に呼び出した時、何故かハルは凄く不機嫌だった。
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