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本編

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べリオスはとんだ爆弾を落とした。この国に間者が紛れてる!?・・・これは大問題になる。・・・ん?ちょっと待て?もし王室に間者がいたとしたら・・・

「・・・べリオスさん、大丈夫なんですか?」
「・・・何がですか?」
「こんな所にいて、狙われたりしないのですか?」
「・・・それも考えたが、それも仕方のない事だと思ってる。」
「っ!!あなたって人は!!」

べリオスの発言に怒りを覚えた。べリオスはもう・・・死を望んでるような発言に聞こえたからだ。怪訝な顔をしてべリオスを睨むとウィンザが助け船をだしてくれる。

「王子、安心してください。この王室には今、ウィンター祭りの準備で陛下の家族以外はいません。・・・もしいたとしたら私や他の王子の付き人が捕獲しています。」
「そう・・・なら安心だね。・・・ところで父上、いい加減に戻ってきて下さいませ!」

僕は王様という事を完全無視して思いっきり父上の頭を叩いた。それを見たべリオスは驚き目が点になった。・・・すると我に返ったのか「ハッ!?」と声が漏れ僕を凝視してきた。

「僕はこれからウィンザと情報収集に時間を回しますのでべリオスさんを保護してください。」
「なっ何故だヴェル!こんな奴、情報を聞き出したらっ!!あいたっ!?」
「まったく話を聞いてなかったのですか!?」

父上の惚けた発言を聞いてまた一発頭を叩いてやった。・・・父上、国王だよね?なんでこうも家族の事になると周りが見えなくなるの?

「・・・この国にもベテルギウス王国の間者が紛れているらしいです。だからべリオスさんの身が危ないので保護してください。」
「間者か!!・・・まったく、どの国もそんなに戦争をしたいのか?平和の何が悪いのだ・・・」
「僕は少し離れます。ウィンザ、行こう。」
「はい!インヴェルノ様!」
「ちょっ!?待ちなさいインヴェルノ!」

父上の有無を聞かずスタスタと歩き中庭から離れ、裏庭の、森に通じる所へ足を運んだ。ウィンザはニコニコ笑顔のまま付いてくる。
何故ウィンザはご機嫌なんだ?・・・まさか今から僕がやる事を予想してご機嫌なのか!?そんな・・・まさか・・・ね?

「ではウィンザ、これから何が起ころうと僕が話しかけるまで無言でお願いね?」
「勿論です!!!」

あーなんだかウィンザが幼い子供に見えてきた・・・なにこのはしゃぎよう?いつものポーカーフェイスはどこへ行った?
そんなウィンザを置いて、眼を閉じ自分の魔力を体内に循環させる。すると首筋に紋章が浮き上がる。それから循環を維持しながら眼を見開くと沢山の妖精が姿を表していた。

『母様よんだー?』
『母様会えて嬉しいー!』
『母様疲れてないー?』

そう口々に僕の気遣いの言葉をかけてきた。ウィンザは僕の後ろで何か唸っていた・・・大丈夫か?

「集まってくれて有難う。あのね、妖精さん達に聞きたい事があるんだけど・・・いいかな」
『母様はとても優しいのー!』
『母様、かんじゃって人は女のお手伝いさんだよー!』
『母様の顔に白い粉をつけてた人だよー!』
『母様、あとねー大きな鉄棒のところにいつも立ってる男の人もそうだよー!』
『そうそうー!たまに森に入ってきて鳥さんと何か話してるの見たー!』

何が聞きたいか、言わずに妖精たちは口々に情報をくれた。

「2人もいたんだ・・・。有り難う妖精さんたち。・・・あと、ポルックス王国から何かおかしな行動してる人は見なかった?」
『母様の役にたつのー!あのね、いつも小さい子に乱暴してる男の人を見たよー!近くに母親はいなかったみたいー・・・』
『母様、あそこの国は黒い煙にまかれてるのー。気味が悪いのー。近寄りたくないのー。』
『母様、絶対にあの国に行っちゃヤだよー!あのマンジューみたいな大きな男は頭の中は金の事ばかりだから嫌いー!』
『そうそうマンジューみたい!国は人々の支えで成り立つのに、あそこの国は辛いって感情が溢れてるのー。』
「マンジュー?あぁ饅頭の事・・・フッ、ハハ!まっ饅頭に似てる王様って・・・ハハ!」

思わず笑ってしまった。饅頭とは町などでよく売ってる菓子で丸くふっくらしていて中には甘い餡が入っている食べ物の事。それに似ているということは、体格がふくよかなのだろう。想像してしまい笑みがこぼれてしまった。ウィンザをチラ見すると口を手で覆い隠し肩をプルプル震わせていた。あぁ、ウィンザも想像しちゃったんだろうなぁ。

『母様笑ってるー!』
『母様、僕たち役にたったー?』
『母様まだまだ話したい事あるのー!』
「あぁごめんね・・・可笑しくて笑ってしまった。・・・うん、あと何か知ってるの?教えてくれる?」

ようやく落ち着き妖精たちの話に耳を傾けた。ベテルギウス王国は服など布で物を作るのに長けているため、布に毒物を刷り込み暗殺の道具を作ってる事や、布を凍らせる事で作れる武器などを作ったりしているらしい。物騒な言葉を聞いて顰めっ面になってしまった。
ポルックス王国は木や土などの材料を使い組み立てて作る事に長けているので、王室のあちこちに武器を仕込んでいるらしい。特に弓を作るのに力を入れてるらしい。・・・本当に戦争を目論んでるような行動をしているな。

『母様、僕たちは母様に呼ばれればどこへだって駆けつけるよ!だからいつでも呼んでね!』
『実は植物があれば私たちは好きに移動ができるの。・・・だから母様にこれをあげる!』

3人の妖精が1本の枝を持って僕に手渡してきた。受けとると、その枝には魔力を感じた。

「これは・・・まさか世界樹の・・・?」
『そうだよー!さすが母様!持っただけでわかったー!』
『これは予め準備してたのー!だからいつでも持ち歩いてねー!』
『それがあればすぐに駆けつける事ができるよー!母様いつでも呼んでねー!』
「うん・・・うん、有り難う。こんなにいろいろしてもらって・・・僕はどうお返ししたらいいか・・・」
『母様ー!じゃあ撫でてー!』
『あっ僕もー!』
『ずるいー!』

わらわらと集まってくる妖精たちに、要望通り、身体が小さいので人差し指で頭を撫でていく。すると気持ち良さそうに眼を細めて本当に嬉しそうに笑顔になっていた。
全員撫で終わって妖精に手を振って森を出ていく。そしてようやく魔力の循環を止めることができた。

「ふぅ・・・ウィンザ、この事知っていたね?」
「ふふふ。はい、本で読んだ事がありまして、本当に妖精に会えるとは思ってませんでしたが・・・あんなに沢山の妖精を見れば確信を持ちますよ。」
「・・・とりあえず他国の情報を聞き出せた。・・・戦争なんて、やらせる前に終わらせてやる・・・」
「このウィンザ、微力ながらお手伝い致します。何かとお申し付けください。」
「有り難うウィンザ。いつも・・・感謝する事ばかりだ。側にいてくれて有り難う。」
「もっ勿体ないお言葉!恐悦至極に存じます!」

ウィンザは僕に頭を下げる。僕は頭を上げろと言ってウィンザと一緒に中庭へと帰っていった。

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