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本編

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ここは上空・・・かなり高い位置で僕とウィンザは金竜、アルトゥンの背中に乗って空を飛んでいた。上空は寒く呼吸に必要な酸素が薄いと聞いていたがアルトゥンの計らいで結界を張ってくれたお陰で快適な空の旅を満喫していた。

何故ウィンザも一緒にいるかというと・・・



_______




「無理を承知でお願いがございます。どうかこの老いぼれをインヴェノル様と一緒に連れてって頂けませんでしょうか!!」
「ウ、ウィンザ!?」
「無理な事を承知でお願いしております。ですが私はインヴェルノ様に命を捧げた身です。インヴェルノ様の側で命尽きるまでお側にいたいのです!」

ウィンザはアルトゥンの前で土下座をして懇願してきた。一緒に連れてってほしいと。それをみたヴァルコイネンとムスタは剣の鞘に手を置く。それでも怖じけず懇願しつづけるウィンザ。

「ふむ・・・ウィンザ、と言ったか?」
「はっ!」
「・・・そなたも良い魔力を持ってるな。インヴェルノ程ではないが純粋な魔力だ。・・・よかろう、インヴェルノも知り合いの一人はいた方が気が休まるだろう。一緒に我が国へ来るが良い。」
「!!・・・恐悦至極に存じます。」
「ウィンザ・・・本当に良いの?僕なんかに付いてきて・・・」
「何を仰いますか!私はずっとインヴェルノ様といると誓ったではないですか!」

ウィンザのあまりにも強い押しに負け正座しているウィンザに手をさしのべた。



______




・・・そして今に至る。

「まず見てほしい場所がある。」
「はい。」

端的な会話をして僕はアルトゥンに身を委ねる。・・・そしてたどり着いた場所は。


「ここは・・・もしかして」
「そうだ。ここは世界樹のある聖なる大地だ。」

目の前に1本の巨大な大木があった。

「妖精から木の枝をもらっただろう?あれはこの聖木の枝だ。」
「僕はそんな大切な木の枝を貰ってたんですね・・・」
「妖精は説明が下手だからな。端的な事しか聞いておらんようだな。・・・そして、世界樹をよく見てくれ。」

そう言われ目を凝らして世界樹を見る。すると白や黄色の丸い、少し長細い木の実が大量に成っているのに気付いた。

「・・・木の実?いや、何かの卵のような・・・?あれはなんですか?」
「あれはドラゴンの卵だ。」
「えっ!!あれが・・・ドラゴンの卵!?」
「ああ・・・そして、その卵を孵化させる事ができるのは、我が番であるインヴェルノ、其方だけだ。」
「えっ僕・・・が、ですか?」
「そして、あの世界樹の中に小さい卵もあってな。それが妖精の卵だ。」

信じられない・・・ドラゴンや妖精は卵から生まれるのか・・・ウィンザを横目で見るとウィンザも呆気にとられていた。・・・うん、ポーカーフェイスはもう崩れてしまったね。

「えっと・・・どうやって、ふ化させるのですか?」
「あぁ・・・それは後程な・・・まずここを見てほしくて寄ったまでだ。さぁ、次は我らの住まいに行くぞ。」

そしてまた移動した。
そして次に着いたその場所は・・・雲の上に大地が浮いている、まさに「天空の国」!

「わぁ・・・とても、幻想的な所ですね・・・!」
「この国はとても美しいからな。今日から我が番も一緒に生きていくのだぞ。」
「・・・ドラゴンさん、確かに僕は番ですが名前がありますよ?・・・インヴェルノって呼んでください。」
「ふふ、なら我もアルトゥンと呼べ。」
「はい・・・」

なんだかこそばゆい気持ちになり顔が熱く火照りだした。・・・僕のその姿を見て何故かウィンザが涙ぐむ。・・・ナゼ?

そして大きな門の前に3頭は着地する。すると自然と重たそうな扉がギギギ・・・と鈍い音を立てながら開いた。
すると中から『トダーラバー!!!』という声がひっきりなしに響き渡った。その声はドラゴンの咆哮の様な空気が震えるような声が響く。それはまさしく歓迎され、祝い、感謝し、喜んでいるようだった。
そんな姿を見た僕はただただ呆然と眺めるしかなかった。ウィンザも同様だった・・・
そしてアルトゥンの背中から降り地面に着地すると、踏みごたえのある芝生が一面に広がっており、まだ軽く浮遊感を感じる。
辺りを見回した後、アルトゥンを見ると、ずっと僕を見つめていたのか目が合い、そして「ヴォン!」と一声鳴いた。すると辺りが一瞬で静寂する。

「遥々、遠い土地で、やっと我の番を見つけ連れてきた。我と正式に契りを交わし真の夫婦となり、新な命を誕生させ、繁栄させようぞ!『トダーラバー』!!」
「「トダーラバー!!」」
「そして、我が番であり我が国の母となる人族を紹介しよう!」
「えっ!?・・・」

突然の事で戸惑う・・・ええぇ!?何を話せば良いの!?ウィンザを見ると「幸運を祈る」というアイコンタクトが送られてきた・・・いらない。あぁ・・・いつもの様に挨拶すれば良いのかな?

「・・・僕はアルタイル王国生まれのインヴェルノ・ディア・アルタイルと申します。僕は第二王子として生を受け7歳の頃にアルトゥンに出逢い婚約致しました。そして成人した今、ここ天空の国ユエリャン王国に嫁ぐ事になりました。・・・皆様と違い非力でありますが、精一杯、この国の繁栄、豊かな国となるよう尽くしますので、不束な者ですが宜しくお願い致します。」

・・・僕は挨拶しお辞儀をする。すると一斉に『トダーラバー』と大歓声が上がる。その声に驚きはしたがアルトゥンが頬擦りしてきたので、これで良かったんだなと実感する。そしてドラゴン達が道を開け始めたのでアルトゥンに抱えられながら、まるでパレードの様に歓声を浴びながらゆっくり歩いて国王が住む城らしき所へ向かう・・・
そして辿り着くと城の中から人形のドラゴン達がわらわら出てきた。ドラゴンと分かったのは頭に角が2本あったからだ。

「お疲れ様です国王陛下。そして、ようこそ妃様。心よりお待ちしておりました。」
「あぁ。ご苦労。インヴェルノ、我の補佐をしているクロノウス・ハイルディンだ。まぁ顔合わせは後だ。中へ入ろう。」
「えっ、あ、はい・・・」

一頭のドラゴンが易々入れる程大きな出入口から中に入る。すると僕を下ろしアルトゥンは人形になり、また僕を抱き上げた。しかもまた片腕で。僕・・・そんなに軽いのかな?

「わわっ!?あの、アルトゥンさん?僕一人でも歩けるのですが・・・」
「仰々しいな・・・アルでいい。今から行く所は寝室だ。」
「・・・え?いや、あの・・・まだ眠くないよ?」
「ははっ、わかってて言ってるのか?」
「・・・」

えっ、寝室って・・・もう?ちょっと待って風呂は!?てかまだ真っ昼間なんですが!?早くない!?いや、「嫁ぐ」というから、そーゆーのはいつかしなきゃならないとはわかってたけど・・・こ、心の準備が・・・

「ウ、ウィンザ~・・・」
「ご武運を。インヴェルノ様。」
「・・・」

ウィンザは著しくお辞儀をしてくれましたよ。いや、違くてね、僕の言いたい事は・・・もういいや。腹括るしかないのかな。
あっ、お風呂は入らせてもらいました。何か優しい匂いのする花弁が浮いた白い浴槽の中に入らせてもらいました。うん、気持ちよかったよ。
・・・それからバスローブを着て案内された部屋へと行く。すると同じくバスローブを羽織っている長身金髪のイケメンがソファで寛いでいた。僕の姿を見て優しく微笑みかけてきた。

「何か飲み物はいるか?」
「あ、うん・・・水が欲しいな。」
「わかった。」

そういって棚にあるコップをとりガラス瓶に入ってる水をコップに注いでくれる。ソファに促されたのでそこへ座る。そして水の入ったコップと、何か小さな粒を渡してきた。見た目はグリンピースのような丸い豆粒だ。何だろう?

「これは?」
「それは我と子を作るのに必要な物だ。水と一緒に飲むのだ。体に害はないから安心しろ。」
「・・・」

ストレートに「子作り」と言われ顔が火照る。やはり寝室に行くって事はやはりそうゆう意味だよね・・・
そんな僕を見てククッと笑うアルトゥン。なんだかからかわれてる感じがしたが、僕も覚悟を決めてここへ来たのだから素直に豆粒と水をグイッと飲んだ。そんな勢い良く飲んだ姿を見てアルトゥンは一瞬だけ呆気にとられていたが、意志が伝わったのか抱き締めてきた。

「何千年も待った我の番・・・我を受け入れてくれるという意思表示、嬉しく思うぞ。」
「アル・・・僕はまだ16年しか生きてません。だからその何千年という長い年月、どんな思いで番を待ってたのか想像できません。できませんが僕は番として、そして国の母として精一杯努力してアルに見合う存在になりたい!」
「インヴェルノ・・・!・・・我も、ヴェルと呼んでも良いか?」
「もちろんですアル。愛称で・・・っん!」

突然身体から少し離れアルトゥンがキスしてきた。嫌な気持ちはなく、むしろ嬉しい、幸せな気持ちで一杯になり、それに応える。
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