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叩いても、「真実の愛」は出てこないけれど
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「――『真実の愛』」
ぱっと顔を上げれば、彼の口角が上がっていた。
ジニアはぴたりと、動きを止めた。
それからしばらく頭の中で、何度か言葉を反芻してから恐る恐るノーマンの目を見る。
「書名ですか?」
「いいや」
狂気に取り憑かれたり高熱に浮かされたりはしていない。
ただ、表情は既にお行儀の良い貴公子ではない。楽しんでいるのだと判断できる。
判断できるくらいにはかつては距離が近かった。文字通り、額をくっつけて遊んでいた頃もあった。
「大丈夫だよ、誰も聞いてない。他のメイドはミリアムが連れて行ってしまったからな」
「他の、といっても私はメイドでは……」
「じゃあ、元美化委員でも」
からかうように笑う姿を見たのは、いつぶりか。
今は部屋が片付いているからすっかり忘れていたが、学生時代彼も美化委員だったくせにその辺にいろんなものを置きっぱなしにしがいがちだった――それをジニアに片付けさせていた、そういう一面を思い出す。
学生時代に引き戻されたような気持ちで、彼女は口を開く。
「ノーマン様は正気ですか、それとも、狂気に囚われておいでです?」
「正気だよ」
「より悪いですね」
「病気の方が正確かもしれないけど」
「そうとう重傷なご様子で」
「そう、恋の病……お前、呆れるなよ」
ジニアの表情に顔をしかめたかと思うと、ノーマンは立ち上がって机を回る。
「この家に『真実の愛』があるって子爵夫人がしつこく仰るのでね、だったら最後にお見せしてから帰らないとな。
もしジニアが隠し持ってるなら叩いたら出てくるかもしれない。逆さまにしようか、ジャンプしてみて――ほら」
ジニアの前に立った彼はそうっと手を伸ばして彼女の頭頂を撫でるように軽く叩き、突然の接触に固まっている肩を持ってくるっと一回転させ――、
「ちょっと、待ってください!」
「まだ見付からないな」
続いて腰を抱き、ダンスのように回転する――いや、ダンスだ。ワルツ。すっかり忘れているそれを、数歩リードされただけで足が思い出しかける。
たった三十秒ほどだったのに、つま先を床につけたジニアはばっと体を引くと、思わず叫ぶ――昔みたいに。
「ノーマン、止めて! モノじゃないんですから、叩いても、ジャンプさせても、『真実の愛』は出てきませんってば!」
「やっといつものジニアに戻ったな」
非難するジニアは頬を押さえる。久々に動かした表情筋が痛い。
代わりにノーマンはジニアの首筋に目をやってから、笑いを収めると、何故か側に置いてあった茶色の羽箒を手に取って、ジニアに渡した。
「じゃあ、これから一緒に掃除をしよう、『真実の愛』を探すために」
「待ってください、ハタキなど、貴族の令息の持つものじゃないでしょう――真実の愛なんて、部屋中掃除したって出てこないでしょう?」
「……実は建築を学びに、しばらく外国へ行くことになった。それでここにある思い出の品を持ち帰ろうと思ったんだ。ご両親に許可は頂いたぞ」
いまいちジニアは納得がいかないが、口を挟むより先に彼は自分で本棚に向かい始めた。
「両親が……」
「どこかに挟んであるかもしれないから、慎重に」
「……思い出の品ということなら手伝います」
この部屋は、いつしかノーマン専用になっていたから、あってもおかしくない。
「でも昔からこうやって、私に片付けを手伝わせてましたよね……何故か私がお義母様に用事をいいつけられたり、叱られたりすることが分かっている日に限って、失くしたり」
ある時は手袋を花壇に、ある時は教科書を別棟の教室に。一人で探しに行かされる日もあれば、一緒に行く日もあった。
「お前の様子を見てればよく分かる。答え合わせはミリアムがしてくれたからフィードバッグには事欠かなかった」
「……やっぱり、わざとだったんですね」
ジニアは渋々マントルピースの上の小物をずらしていた手を止めて、非難の目を向けた。
「卒業パーティーにパートナーを誘う花をわざと忘れて、私に届けさせようとしたこともありましたよね? しかも直前の時間に、昇降口で」
「あれは驚いたな、布で巻いた謎の物体だった」
「見られたらおしまいですよ」
感心した口調だが、分かっているはずだ。あんな日に後輩の女性から花を渡すのは、プロポーズと同じくらい致命的だってことくらい。
それもジニアにとっては、誰かに見られて噂で義母の耳に入ったら、退学させられていたかもしれなかった。
「あの日は結局誰を誘ったんですか?」
「脈がなさそうだったから、誘うのを諦めた」
「そうですか。あ、これは写真……」
林立する写真立ての中に、おすましして写っている小さい子供が三人並んでいた。この後近くの森に「探検」に行って帰ってきて、ジニアだけこっぴどく怒られたのを覚えている。
「俺も見付けたよ。ジニアとミリアムと一緒に作った押し花」
残っていた絵本の中から現れる、タンポポの押し花が三本。
「こっちの箱は……石だらけですね」
お菓子の入っていた紙箱には拾ってきたちょうどいい石。丸かったり不思議な形だったり、珍しい色だったり。
それから他の箱には、蛇の抜け殻や宝石と間違えていたガラス片。
「今となっては、大したものではないですね」
「俺にとっては今でも大冒険の思い出だ」
ジニアは視線を感じ、自分の額に手を伸ばす。短く盛り上がった傷跡が手に触った。
――二人は部屋中で、そんな小さな思い出を書斎机の上に積み上げていった。
「こんなにあったんだなあ……」
最後にノーマンが、庭から引っこ抜いて植えっぱなしにした果樹の植木鉢を机の脇に置いた。
「これも、俺もミリアムも放置してたのに、こんなに育ってしまったんだよな」
「私が水やりしてたから、です」
「知ってた」
「知ってたならお礼くらい言ってもいいじゃないですか……これ、全部は持って行けないですね」
にやりと笑われ、ジニアは机から目をそらして問いかける。
積み上げて山盛りになった、殆ど忘れられていた――でも覚えがあるガラクタは、そのまま思い出の数で、ハタキをかければまた輝いて見える。
忘れていて、忘れようとして、見たくなかった。
「……見ろよ」
「見たくない、です」
「『真実の愛』っていうのは、見返りなく相手の幸せを願うことだろ。この思い出や、この時間みたいに」
顔を上げればジニアの視界は滲んで見えた。
今まで積み上げてきた時間や、この掃除の時間をくれた人“たち”がもうすぐ目の前から去ってしまう――向き合いたくなかった事実が目の前に迫っている。
目の前にいたノーマンが手をハンカチで拭うと、ぽんぽん、と優しく頭を叩かれる。撫でるように。
「こうされるのが好きなんだろう? ミリアムが教えてくれた」
ジニアの喉がぐっと詰まる。
「ぜんぜん違います」
「何だ、違うのか?」
「これは、私がミリアムが小さい頃にしてあげたやり方で、私が好きなんじゃありません――あの子が好きだったんです。……混同、してるんですね……」
ジニアは、幼い頃の一心に見つめてくる妹の無邪気な瞳と、今日の目の前で去って行った妹の背中と言葉を思い出す。
「……さっさと出ていけばいいのに」なんて彼女は言ったが、目の前の、おそらく永遠の別れを前にしてもあんなふうに「我が儘」を突き通す勇気はジニアにはない。
「なんだ、そうか」
「……さあ、さっさとこれ全部、いるものといらないものに分けてしまいましょう」
捨ててしまえばすっきりするはずだ。
涙を拭い、顔を上げて微笑を浮かべたが、彼は全く笑っていなかった。
「お前の縁談が決まりかけているんだってな」
「……そう、らしいです」
数日前、義母から勝ち誇ったように聞かされた。
それは予想できていたことで、でもそんなに早いとは思っていなかった。複数人の釣書を何度かちらりと見せられただけだったから。
「らしいって、直接聞いてないのか?」
「お相手には一度もお会いしたことがないから、どんな方かもよく知らない、です」
「……そうか、やっぱり。
ミリアムが言うには、後妻なんだってさ。別に後妻自体が悪いわけじゃないが……ジニアと同じくらいの息子がいるところに行くのは、色々と、不都合もあるだろう? しかもそいつの素行が悪いとなれば……」
「……な、何で、そんな」
ノーマンの片手が高く上がる――そしてジニアは、咄嗟に顔をかばった。
「――ほら」
その手首に優しく手が添えられ、下ろされる。友人であり先輩の顔が目の前にありながらジニアの顔はこわばっていた。
ぱっと顔を上げれば、彼の口角が上がっていた。
ジニアはぴたりと、動きを止めた。
それからしばらく頭の中で、何度か言葉を反芻してから恐る恐るノーマンの目を見る。
「書名ですか?」
「いいや」
狂気に取り憑かれたり高熱に浮かされたりはしていない。
ただ、表情は既にお行儀の良い貴公子ではない。楽しんでいるのだと判断できる。
判断できるくらいにはかつては距離が近かった。文字通り、額をくっつけて遊んでいた頃もあった。
「大丈夫だよ、誰も聞いてない。他のメイドはミリアムが連れて行ってしまったからな」
「他の、といっても私はメイドでは……」
「じゃあ、元美化委員でも」
からかうように笑う姿を見たのは、いつぶりか。
今は部屋が片付いているからすっかり忘れていたが、学生時代彼も美化委員だったくせにその辺にいろんなものを置きっぱなしにしがいがちだった――それをジニアに片付けさせていた、そういう一面を思い出す。
学生時代に引き戻されたような気持ちで、彼女は口を開く。
「ノーマン様は正気ですか、それとも、狂気に囚われておいでです?」
「正気だよ」
「より悪いですね」
「病気の方が正確かもしれないけど」
「そうとう重傷なご様子で」
「そう、恋の病……お前、呆れるなよ」
ジニアの表情に顔をしかめたかと思うと、ノーマンは立ち上がって机を回る。
「この家に『真実の愛』があるって子爵夫人がしつこく仰るのでね、だったら最後にお見せしてから帰らないとな。
もしジニアが隠し持ってるなら叩いたら出てくるかもしれない。逆さまにしようか、ジャンプしてみて――ほら」
ジニアの前に立った彼はそうっと手を伸ばして彼女の頭頂を撫でるように軽く叩き、突然の接触に固まっている肩を持ってくるっと一回転させ――、
「ちょっと、待ってください!」
「まだ見付からないな」
続いて腰を抱き、ダンスのように回転する――いや、ダンスだ。ワルツ。すっかり忘れているそれを、数歩リードされただけで足が思い出しかける。
たった三十秒ほどだったのに、つま先を床につけたジニアはばっと体を引くと、思わず叫ぶ――昔みたいに。
「ノーマン、止めて! モノじゃないんですから、叩いても、ジャンプさせても、『真実の愛』は出てきませんってば!」
「やっといつものジニアに戻ったな」
非難するジニアは頬を押さえる。久々に動かした表情筋が痛い。
代わりにノーマンはジニアの首筋に目をやってから、笑いを収めると、何故か側に置いてあった茶色の羽箒を手に取って、ジニアに渡した。
「じゃあ、これから一緒に掃除をしよう、『真実の愛』を探すために」
「待ってください、ハタキなど、貴族の令息の持つものじゃないでしょう――真実の愛なんて、部屋中掃除したって出てこないでしょう?」
「……実は建築を学びに、しばらく外国へ行くことになった。それでここにある思い出の品を持ち帰ろうと思ったんだ。ご両親に許可は頂いたぞ」
いまいちジニアは納得がいかないが、口を挟むより先に彼は自分で本棚に向かい始めた。
「両親が……」
「どこかに挟んであるかもしれないから、慎重に」
「……思い出の品ということなら手伝います」
この部屋は、いつしかノーマン専用になっていたから、あってもおかしくない。
「でも昔からこうやって、私に片付けを手伝わせてましたよね……何故か私がお義母様に用事をいいつけられたり、叱られたりすることが分かっている日に限って、失くしたり」
ある時は手袋を花壇に、ある時は教科書を別棟の教室に。一人で探しに行かされる日もあれば、一緒に行く日もあった。
「お前の様子を見てればよく分かる。答え合わせはミリアムがしてくれたからフィードバッグには事欠かなかった」
「……やっぱり、わざとだったんですね」
ジニアは渋々マントルピースの上の小物をずらしていた手を止めて、非難の目を向けた。
「卒業パーティーにパートナーを誘う花をわざと忘れて、私に届けさせようとしたこともありましたよね? しかも直前の時間に、昇降口で」
「あれは驚いたな、布で巻いた謎の物体だった」
「見られたらおしまいですよ」
感心した口調だが、分かっているはずだ。あんな日に後輩の女性から花を渡すのは、プロポーズと同じくらい致命的だってことくらい。
それもジニアにとっては、誰かに見られて噂で義母の耳に入ったら、退学させられていたかもしれなかった。
「あの日は結局誰を誘ったんですか?」
「脈がなさそうだったから、誘うのを諦めた」
「そうですか。あ、これは写真……」
林立する写真立ての中に、おすましして写っている小さい子供が三人並んでいた。この後近くの森に「探検」に行って帰ってきて、ジニアだけこっぴどく怒られたのを覚えている。
「俺も見付けたよ。ジニアとミリアムと一緒に作った押し花」
残っていた絵本の中から現れる、タンポポの押し花が三本。
「こっちの箱は……石だらけですね」
お菓子の入っていた紙箱には拾ってきたちょうどいい石。丸かったり不思議な形だったり、珍しい色だったり。
それから他の箱には、蛇の抜け殻や宝石と間違えていたガラス片。
「今となっては、大したものではないですね」
「俺にとっては今でも大冒険の思い出だ」
ジニアは視線を感じ、自分の額に手を伸ばす。短く盛り上がった傷跡が手に触った。
――二人は部屋中で、そんな小さな思い出を書斎机の上に積み上げていった。
「こんなにあったんだなあ……」
最後にノーマンが、庭から引っこ抜いて植えっぱなしにした果樹の植木鉢を机の脇に置いた。
「これも、俺もミリアムも放置してたのに、こんなに育ってしまったんだよな」
「私が水やりしてたから、です」
「知ってた」
「知ってたならお礼くらい言ってもいいじゃないですか……これ、全部は持って行けないですね」
にやりと笑われ、ジニアは机から目をそらして問いかける。
積み上げて山盛りになった、殆ど忘れられていた――でも覚えがあるガラクタは、そのまま思い出の数で、ハタキをかければまた輝いて見える。
忘れていて、忘れようとして、見たくなかった。
「……見ろよ」
「見たくない、です」
「『真実の愛』っていうのは、見返りなく相手の幸せを願うことだろ。この思い出や、この時間みたいに」
顔を上げればジニアの視界は滲んで見えた。
今まで積み上げてきた時間や、この掃除の時間をくれた人“たち”がもうすぐ目の前から去ってしまう――向き合いたくなかった事実が目の前に迫っている。
目の前にいたノーマンが手をハンカチで拭うと、ぽんぽん、と優しく頭を叩かれる。撫でるように。
「こうされるのが好きなんだろう? ミリアムが教えてくれた」
ジニアの喉がぐっと詰まる。
「ぜんぜん違います」
「何だ、違うのか?」
「これは、私がミリアムが小さい頃にしてあげたやり方で、私が好きなんじゃありません――あの子が好きだったんです。……混同、してるんですね……」
ジニアは、幼い頃の一心に見つめてくる妹の無邪気な瞳と、今日の目の前で去って行った妹の背中と言葉を思い出す。
「……さっさと出ていけばいいのに」なんて彼女は言ったが、目の前の、おそらく永遠の別れを前にしてもあんなふうに「我が儘」を突き通す勇気はジニアにはない。
「なんだ、そうか」
「……さあ、さっさとこれ全部、いるものといらないものに分けてしまいましょう」
捨ててしまえばすっきりするはずだ。
涙を拭い、顔を上げて微笑を浮かべたが、彼は全く笑っていなかった。
「お前の縁談が決まりかけているんだってな」
「……そう、らしいです」
数日前、義母から勝ち誇ったように聞かされた。
それは予想できていたことで、でもそんなに早いとは思っていなかった。複数人の釣書を何度かちらりと見せられただけだったから。
「らしいって、直接聞いてないのか?」
「お相手には一度もお会いしたことがないから、どんな方かもよく知らない、です」
「……そうか、やっぱり。
ミリアムが言うには、後妻なんだってさ。別に後妻自体が悪いわけじゃないが……ジニアと同じくらいの息子がいるところに行くのは、色々と、不都合もあるだろう? しかもそいつの素行が悪いとなれば……」
「……な、何で、そんな」
ノーマンの片手が高く上がる――そしてジニアは、咄嗟に顔をかばった。
「――ほら」
その手首に優しく手が添えられ、下ろされる。友人であり先輩の顔が目の前にありながらジニアの顔はこわばっていた。
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