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逆襲

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 物理的距離もルーミハイム王国まで連行するには遠い。結局他の捕虜と同じように、後ろ手に手錠を掛け、腰紐で何万人も数珠繋ぎに括り付け、王都まで連行する事にした。

 もう王都は目と鼻の先である。

 アルテニア皇国の殆どの兵士は捕虜となっているため、防衛戦を行う事が出来る兵力はないようだ。

 何事かと見る民衆を横目に、縄で数珠繋ぎに繋がれた、兵士達は王都に近付いている。

 入場門に来ると固く門が閉じられていた。

 「門番よ。見よ!繋がれているのは貴方達の兵士達である。今は捕虜となっているが、この兵士達は、皆の手本となるべき存在であり、貴方達の為に命を懸けて守ろうとした英雄である。私達が王都に入場する事を許して欲しい。この兵士達を長く辱めたくはないのだ。今後の話し合いをするため、決定権を持つ皇帝に謁見を申し込みたい。無抵抗な一般人には、武力行使を行わない事を、ルーミハイム王国の名に誓い宣言する。」

 『しばし待たれよ。』

 城壁の上から顔を出した守衛が声をあげた。

 城壁の向こう側では、色んな声が飛び交っている。ルーミハイム王国の軍隊が遂に王都まで、攻め込んできたと思われているのであろう。

 私達はしばらく待たされていた。

 『おい、ルーミハイム軍よ。皇帝が謁見なさる。責任者と護衛の者10人だけで入場されよ。』

  無理かと思われていたアルテニア皇国の皇帝との謁見が許可されたのだ。

 私とロドリゲス将軍、ロドリゲス将軍の直属の配下の兵8名で、アルテニア王都に乗りこんで行く事となった。

 流石、大国アルテニア皇国である。立派な都市だ。警戒を緩めないように、王城へと案内されている。後ろ手に手錠をしたままであるがナカサキ守護大臣も同行している。

 道すがらの住民の好奇な視線に晒されてナカサキ守護大臣は、怒り心頭に発する様子だ。

 王城に辿り着き、応接室に通された。武器の保持は許されず、全員アイテムボックスに武器を収納している。何かあればすぐに取り出せるように気を張っている。

 応接室のドアが開き、1人の男性が現れた。

 アルテニア皇国の皇帝であった。

 私達が10人、アルテニア皇国側が10人それぞれテーブル席に着席した。ナカサキ守護大臣も手錠のまま腰掛けている。

 『此度は、遠路はるばるよくぞ参られた。まずは、ルーミハイム王国側の言い分を聞かせてもらおう。』

 「私はルーミハイム王国の軍司令補佐ユリナです。アルテニア皇国に3つの条件を持って参りました。1つ、大義もなく宣戦布告して攻め込んで来たアルテニア皇国とナカサキ守護大臣の謝罪を要求する。2つ、二度とこのような不当な侵攻がないように、不可侵条約を締結することを要求する。3つ、私達が捕虜にしている、アルテニア兵士10万人以上を解放する代わりに、賠償金を支払って貰う事を要求する。以上の3点の要求を行う。」
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