僕の知らない彼女の素肌と貌

繁村錦

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 二次会のカラオケに参加したメンバーは、香織と聖也の他、愛美とそれの彼氏・原田光喜、あとは香織の知らない女子と男子が二名。合計六名だった。
 居酒屋と同じく香織の左横には聖也が座り、右には少しやんちゃな感じのする斎藤裕翔というK大生が座った。
 聖也の話によると、裕翔の父親は、地元のG県で県議会議員をやっており、また建設会社を経営しているらしい。
 愛美の彼氏が、流行の曲を歌っていると、聖也が香織に話し掛けて来た。

「そういえば、香織ちゃんて、現在いま彼氏いないんだってね。さっき、愛美ちゃんから聞いたよ」

「ええ、まあ」

 香織は聖也のことを警戒しながら首肯した。

「ホントマジっ!? じゃあ俺、立候補しちゃおうかな香織ちゃんの彼氏に」

 と口を挟んで来たのは裕翔だった。

「お前は、潤子がいるだろうが」

 聖也がツッコむ。

「アイツとは別れた」

「裕翔さぁ、お前って次から次へと乗り換えるよな、車と一緒だ」

「そうか」

「そうだよ」

 香織を挟んで遣り取りされる二人の会話を聞いた香織は、更に警戒心を強めるとともに不快感を露にした。
 スマホを取り出し、現在時刻を確認する。
 デジタル表示は、22:36。

「わたし、もうそろそろ帰ろうかなぁ」

「えっ、香織ちゃん、まだ一曲も歌ってないじゃん」

 裕翔が必死に引き留めようとするが、

「まあ、そうガッツクな裕翔。香織ちゃんが引いてるぞ」

 と口を挟んで来た。

「…………」

 香織は無言で愛想笑いを浮かべ、聖也に頭を下げた。

「この辺、物騒だからマンションの近くまで送って行こうか」

「ありがとうございます。でも、タクシーで帰りますので」

 香織は聖也に丁重に断った。

「そう。そういうことなら、タクシー代、俺が払うよ。はい、少ないけど」

 といって聖也は財布から一万円を取り出し、香織に手渡そうとした。

 しかし、その紙幣を受け取らず、

「いいえ、結構です。お気持ちだけ受け取っておきます」

 香織は答えると、ソファから腰を上げた。

「香織ちゃん。ねえ、連絡先交換しようよ」

 裕翔が問い掛ける。

「連絡先ですか……」

 迷った挙句、結局香織は裕翔と聖也に、スマホの番号を教え、LINEを交換してしまった。
 この夜は、何事もなく無事に自宅マンションに戻った。
 翌日、愛美から、

「ねえ、せっかく私があんたに彼氏候補、紹介して上げたのに、何で先に帰っちゃうのよ」

 と責められた。

「彼氏候補って……前にもいったけど、わたし……」

「地元に残ってる幼馴染でしょ。でもソイツ、ヘタレなんでしょ。あんたも自分の口でいってたじゃん」

 ちょうどそこに、あの裕翔から電話が掛かって来た。

《俺、裕翔》

「……どうしたの斎藤さん?」

 香織は怪訝気味に首を傾げた。警戒心を強める。

《デートしない。デート》

「デート……?」

《昨日の飲み会でさぁ、香織ちゃんあの映画観たいっていってたじゃん。今度の土曜日に観に行かない》

 現在日本で公開中のハリウッド制作の映画。
 香織はそれを観に行きたいと、昨夜、居酒屋で漏らしてしまった。本人はアルコールの所為で、記憶が曖昧だったが、裕翔がそういって誘って来たので、間違いなく喋ったのだろう。

「映画くらいなら……」

《ホント、OKしてくれるんだね》

「は、はい」

《土曜の午前九時に、迎えに行くから》

「はい……」

 香織は、今週末裕翔と映画を観に行く約束をしてしまった。

「ねえ、今の電話。誰?」

 嬉しそうに愛美が訊ねて来た。
 香織は、裕翔から映画に誘われたことを告白した
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