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第4章 プールデート

第46話 蒼太、先輩方にドナドナされてしまう。

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「健介もいないし、今日は一人で昼飯食うか……」

 いつも通りの昼休み。
 けれど数少ない友人の健介が「超特急の急用がある」とか言って、昼休み早々にどこぞに走り去っていってしまったため、俺が学生食堂に向かって廊下を一人で歩いていると。

「2年の紺野蒼太だな? ちょっと話いいか?」

 俺は突然、4人組の男子生徒たちに呼び止められてしまった。
 全員ネクタイに緑色のラインが入っている――3年生の先輩だ。

「え、あの……」
 見ず知らずの先輩方に囲まれてしまい、若干ビビってしまう俺。

「なに、すぐ終わるからよ」

 俺が答えるよりも先に、一人の屈強な先輩(以下、ゴリ先輩)が俺の首に腕を回して逃げられないようにガッチリとロックをした。

 あの、普通に痛いんすけど。

「あ、はい。ちょっとなら……」
 どうにも不穏なこの状況で、果たして俺にこれ以外の返事ができただろうか?

 言っておくが俺はケンカとか暴力沙汰には全く縁がない、格闘技経験ゼロのよわよわ男子高校生だからな?
 明らかにケンカ腰の4人組の先輩相手に、平然と言い返したりなんてことはできないからな?

 俺はゴリ先輩に首をロックされたまま、人気のない体育館裏までドナドナされていった。

「ケホッ、コホッ……それで話っていうのはなんでしょうか先輩」
 やっとこさ首ロックから解放された俺は、乱れた襟元を整えながら問いかけた。
 すると、

「お前さ、誰の許可を得て『姫』と仲良くしてるわけ?」
 最初に俺に声をかけてきた先輩――おそらくこいつらのリーダーだ――が俺を見下すように半笑いで言った。

 くそ、初対面なのになんだよこの先輩。
 2年生と3年生とじゃ1歳しか離れてないのに。
 やたら偉そうだからエラソウ先輩って呼ぶぞ?(もちろん心の中でだけだけど)

 ちなみに『姫』ってのは優香のことだ。
 お淑やかで気品のある優香は、姫宮優香の名字をもじって『姫』と一部の陽キャ達から呼ばれているのだ。

「誰の許可と言われましても……そもそも先輩方は誰なんですか? 失礼ですけど俺とは全員、初対面ですよね?」

 違う学年の生徒の名前なんて、よほどのことがない限り知りはしない。
 それこそ優香は、学園のアイドルとして全校生徒に名前を知られているだろうけども。

「俺たちは『姫』を陰ながらお守りする『姫宮親衛騎団』の最高幹部だよ」

「はぁ……そうですか……」
 としか言いようがないんだが?

 だいたい親衛騎団ってなんだよ、異世界ファンタジーじゃないんだぞ。
 「騎団」の「騎」って馬に乗った人のことだろ?
 高校生のどこに馬要素があるんだよ?
 実はメンバー全員、プリティなダービーのプレイヤーだったりするのか?

「最近、我らが『姫』の周りを良からぬ生徒がうろついていると知ってな。今日は少し警告をしに来たわけさ」
 困惑する俺をよそにエラソウ先輩が語り始める。

「はぁ。警告……ですか?」

 見ず知らずの相手に「警告をしに来た」とか言われてもなぁ。
 俺は困惑しながらも、先輩相手ということでとりあえず相づちを打つ。

「知っての通り『姫』は我が校が誇る学園のアイドルであり、入学以来数多くの男子の告白を断ってきた。全国大会にも出場した柔道部の主将、学内一のイケメンのサッカー部10番、大学に推薦入学が決まっているバレー部の絶対エース、東大模試A判定の秀才。その誰もが『姫』の前に涙を呑んだのだ」

「ええと……はぁ……」

 俺としては、だからなにって気分なんですけど。

 あっ、でも。
 言われて思い出したぞ。
 それってまさにここにいる先輩らのことじゃん。


・俺に首ロックをかけてきたゴリ先輩=柔道部主将

・今まさに俺と会話しているエラソウ先輩=東大模試A判定の秀才。
(っていうか自分で言うなよな。もしかして俺にツッコんで欲しいのか?)

・残る2人のうちチャラい先輩=サッカー部の10番(以下、チャラ先輩)

・背が高い先輩=バレー部の絶対エース(以下、ノッポ先輩)。


 学年も違うし同じ男だから全然興味もないし、そもそも目立たない俺とはさっぱり縁がないからすっかり忘れていたけど。
 そうそう、この先輩らはうちの高校の男子のカーストトップランカー様たちだった。
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