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第三章

127ー正体

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「さぁ! 出て来なさい! アイツらをやっつけて!」

 すると樹林から次々と山に生息している魔物が出てきました。

 ――グルルル

 威嚇してきます。

「リル! セイバー! 行くぞ!」
「「「「おぅッ!」」」」
「兄貴! ノトス! セイバー! 兄貴に続け!」
「「「「「おぅッ!」」」」」
「首を狙え! 一発で仕留めるぞ!」

 ラウ兄様やジュード兄様とセイバー達それにお父様が魔物に向かって行きます。
 そこら中で剣を振るう音が響きます。ズザンッ! と皆一撃でどんどん倒して行きます。その中でシャーロットは……

「アハハハ! みんなやられてしまえー! この世界は私の物なのよー! バッカじゃないの!? 私に勝てる訳ないじゃない! 加護があったって魔物にやられてしまえば意味ないわ!」

 煩いのよ。加護、加護って……オヴィオさんの言ってた、邪の者が近寄るならば跳ね返すってアレの事? それで、シャーロットはこっちに近付けないの?
 だから自分は何もせず魔物を呼ぶだけなの?
 それなら私から行かせてもらうわ。もうこれ以上好き勝手はさせない!

「セイクリッドクロス!!」

 私を中心に大きな白いクロスが現れました。

「許さない……!」

 私は腕を前に突き出します。クロスが現れ魔物を次々と倒していきます。そして魔物の後ろにいるシャーロットにもクロスが突き刺さります。

「ギャーー!」
「ルル様! もうこれ以上はお辞め下さい! 上位魔法ばかり駆使しておられるのです! また倒れてしまいますっ!」
「ユリウス、黙りなさい。許してはいけないのよ」
「ルル様……!」
「ワウォォーーン!!」

 モモがそばで魔力を補助してくれます。

「モモ、有難う」
「ルル、一緒よ!」
「ルビも一緒なの!」
「ピピー!」

 モモやルビとピアが一斉に魔物を攻撃してくれます。ルビもピアも魔法を使えなかった筈なのに! その上、ルビが……

「みんな頑張るのー!」

 ルビの身体が光り辺り一面に癒しの光がキラキラと降り注ぎます。
 そして、ピアが……

「ピピュピピーー!」

 戦っている兄様達、セイバー達に防御を掛けてくれます。それでも、後から後から出てくる魔物にキリがありません。
 私達のそばまで来た魔物は、全てケイがいつの間にか仕留めてくれています。見渡すとそこら中に仕留めた魔物が横たわっています。
 そしてモモがもう一度……

「ワウオオォォォーーン!」

 すると急に沢山の魔物達の動きが止まり、山に引き返して行きます。

「モモ、なんだったの?」
「操られていたのよ。もしかしてと思ったけど、上手く行って良かったわ。解呪して、山に帰りなさいと命令したのよ」
「モモ、ルビ、ピア有難う」
「ルル、まだだぞ」
「レオン様、分かってるわ」

 私の直ぐそばにレオン様、モモ、ルビ、ピアがいます。
 肩で息してるけど、まだしぶとくシャーロットは立っています。

「何よ! なんであんたのそばにレオン様がいるのよ! それに何なの? なんで眷属までいるのよ!」

 眷属て言った……!?

「モモ、どう言う事?」
「ルル、邪神の眷属なんかじゃなかったのよ。シャーロットが邪神そのものだったんだわ。成りすましていたのね! 騙されたわ!」
「今、眷属て言ったわよ?」
「ええ、邪神だもの。当然分かるんでしょう」
「モモ、どうする!?」

 レオン様がモモに聞きます。

「浄化するわ! ワウオオォォォーーン!」

 モモが鳴くと同時に天から閃光が降ってきてシャーロットに直撃しました。

「ギャァーーー!!」

 一瞬、私はお父様達を見回しました。大丈夫、皆無事だわ。

「眷属め! クソッ!!」

 シャーロットが叫んだ途端に、私やレオン様、モモ、ルビ、ピアがモヤモヤとした黒い霧に包まれ、私達は霧ごとシュンッと消えてしまいました。

「「ルル! レオン!」」
「ルルー!」
「ルル様!」
「ルルーシュア様!」
「レオン殿下!」

 ……皆の声が聞こえていました。あー、まただわ……

 一瞬で周りの景色が変わりました。濃いグレーの様な真っ暗の空間の様な、地平線もあるのかないのか、無限に続いている様な、何かが身体に纏わりついてくる様な重苦しい嫌な空間。

「ルル、大丈夫か?」

 何処に立っているのかさえ分からない。でも、レオン様の腕が力強く支えてくれているのはよく分かります。
 オヴィオさんの時もそうだったけど、突然移動させるのは辞めてよね。嫌なのよ。一言言ってよね。ホント、心臓に悪いわ。

「わふっ」
「ルルー」
「ピー!」
「皆、いるのね。大丈夫よ。モモ、ここは?」
「ルル、レオン様。私の力が足らなくてごめんなさい。此処は邪神の世界よ。連れて来られたのね」
「ピ」
「ピア馬鹿」
「ピッ!」

 何? ルビ、ピアどうしたの?

「あんた、なんでこの世界にいるのよ?」

 シャーロット? らしきものが突然話しかけてきます。

「なんで、て何よ?」
「あんた、前の世界で死んだでしょ? 私確認したもの。大人しく死んでなさいよ!」
「は? 何それ? 私を知ってるの?」
「ハハハ、あんた覚えてないんだ? 傑作じゃない! だって私があんたから全部奪ったんだもん。知らない訳ないじゃん! あんたと同じ孤児院にいたのよ。あんた親に捨てられて戸籍もなかったんだよ。なのに矢鱈と綺麗で儚げで、オマケに素直でさ。ほんと、ムカつくのよ。先生も皆んな、なんて綺麗な子なんでしょう! なんて言ってた。あんた身体が弱いからいつも寝ていた。だから私が全部貰ってあげたのよ。あんたの食べ物も、あんたに向けられる愛情も、あんたの生命力も全てね。もう一息、て、所だったのにいつの間にかトイプードルがそばにいてあんたを守っていた。あのトイプードルその眷属でしょ! 眷属が何邪魔してくれてんの? この世界は私のものなのよ!」
「お前……何言ってんだ? お前がルルを殺したのか……?」
「レオン様、覚えてないの? 私、レオン様のバイトしてたお店に通ってたのに。あの頃から憧れてて、この世界に来てレオン様だと分かった時はそれはもう嬉しくて! 運命だとしか思えないわ!」
「誰だお前? 知るかよ!」
「フフフ。どうしたって私からは逃げられないわ。私の虜になるのよ」
「なるかよ! お前、今自分がどんな姿なのか知ってるのか?」

 レオン様がそう言ったのは、シャーロットの姿がもう人間では無かったからです。
 頭から触角の様な物が2対生えていて目が赤黒く、手足はワニの様な皮膚に覆われてゴツゴツと太く、手にも足にも鋭い大きなどす黒い爪があります。
 ピンクのドレスなんて跡形もなく、身体全体が赤黒い鱗で光っていて大きな太い尻尾と、蝉の様な黒っぽい透明で大きな羽根が2対あります。
 人間とは程遠い何かになっていました。
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