人生を斜交いに生きた男 実話

人生を斜交いに生きた男 実話 ５７

　それで新聞で火災保険の外交員の募集があったのでダメ元で応募したら意外と採用されたのだ。
　高卒と学歴詐称したが、バレなかったのか⁈　生きる為の手段として必要悪と思って、、、今日ほどネット情報が氾濫してなかったのが幸いしたのか。こういう業界は初めてだったし、中卒だと鼻から無理だと諦めてたのが採用になりびっくりした。
　外交員の定着率が悪いので常時募集を掛けているのだ。
　この会社は全国規模なので関東、関西に分けて、関西は滋賀県の本社まで二泊三日の合宿講習があるのだ。その前に健康診断、移動費、宿泊費等で５万円近く先行投資が掛かるのでこの時点で辞退者が出るので、それを見込んで多めに採用しているとの事。
　会社としてはこのシステムも一つの収益に反映しているのだ。私の時は関西だけで３６人が参加し、年間で全国規模に換算すると６００人近くが受講するので約２０００万円近くなるので一つの財源になっていたのだ。
　話の内容は別段大した事もなく、講師自身も営業経験が有るのかと疑いたくなる程リアル感が乏しい。
　教材を棒読みなので眠気を抑えるのに他の人は苦心をしていた。
　我が社のトップクラスは年収２００００万円近く稼いでいると持ち上げ、簡単に契約が取れると、、、社内資料も豊富で先輩たちがバックアップするので初めての人でも安心して頑張って欲しいと。月収３０～６０万円には直ぐに手が届くので。
　２日目の講習はそれぞれがお客さん役になってロールプレイリングをして営業トークの練習だが、現実の厳しさには触れずに何か腑に落ちない不満が燻っていたので、最後の質問コーナーでつい言ってしまった。別にこの会社に一生いる訳でもないので、遠慮なく
　「先生は飛び込み営業の経験はあるんですか？」
　「、、、別に、、、」
　「成る程ね今まで一方的に聞いていたが、全くリアル感が無く、心に響かないのですが、現実はこんな甘く無いですよね」　教室内はシーンと静まり返った。
　「君は何処の営業所から来たのか？」
　少し興奮気味で近付いて来たので、
　「別にそれは関係ないしょう」
　名札を見て
　「小田君だねー」合宿も今日で終わるので。白けた空気は少し収まったが、この件は私がいく営業所に報告が届くだろう。
　翌週の月曜日、９時出社し、同じ新人３人がいて其々自己紹介を。　　続く