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第一章 めざせクロムサマスター
推しを美術館に連れて行こう
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明くる日もまたその次も。
講義中「質問は?」と聞かれるたび、クロム様ご自身について尋ねてみる。
「気になる動物は、もしかして犬ですか?」
「居心地はいかが? お好きな色があれば、壁紙を取り寄せて貼り替えてもらいましょう」
「人物、静物、風景。絵画はどれがお好きでしょうか?」
でも、クロム様は何を聞いてもだいたい同じ答えだ。
「みんな好きですよ」
推しの貴重な『好き』、いただきましたあああああ☆
「カトリーナ様、いかがなさいましたか?」
いけない、脳内で興奮している場合じゃなかった。
そもそも、私にあてた言葉じゃない。
「なんでもありませんわ。ただ、先生が好きになるのはどんな感じの女性かなって、考えていて……」
「カトリーナ様、本日はセイボリー語を教えたはずですよ」
その通りだけど、私の気持ちも察してほしい。
彼は脇役なので、ファンブックに載っている情報は少なかった。もしも答えを得られたら、今後の助けになるだろう。
「雑談ばかりは、感心しませんね。兄君の誕生祝いを、無駄になさるおつもりですか?」
「いいえ、そんなつもりはありません。ところで誕生祝いと言えば、クロム先生がお生まれになった日を伺っていないのですが」
「さあ。そんなものは、とうに忘れました」
「嘘!」
「嘘ではありません」
クロム様はムッとしながら、眼鏡の位置を直している。
――いけない。しつこく聞きすぎて、怒らせてしまったみたい。
推しを笑顔にするどころか、不機嫌にさせているような。
こうなったら、ゲームとファンブックの情報が頼りだわ。
【作戦その1 推しを美術館に連れて行こう!】
乙女ゲーム『バラミラ』のオープニング曲。
その背景には一瞬、クロム様くらいの背格好の人物が遠目に映る。
芸術国としての我が国を印象づけるため、美術館の内部を表したのだろう。でもこの私が、推しを見逃すはずがない。
「名画のタイトルをセイボリー語で知りたいって、お願いするのはどうかしら? それって、立派な課外授業よね?」
推しの心を掴む絵を見つけたら、すかさず買い取りプレゼント。距離は一気に縮まるはず。
スタート前にクロム様と親密になっておく。そうすれば攻略対象の入る余地はなく、暗殺だって起こらない。
そんなわけで、袖にたっぷりのフリルが付いたラベンダー色のドレスでおめかしした私は、推しを美術館に連れ出した。案内しながら、反応を注意深く窺う。
「こちらは国内の画家を集めたコーナーです。クロム先生、いかがですか?」
「そうですね。どれも素晴らしいです」
――それだけ? 彼の心を引く絵はないの?
「ここから先は、国外の絵画です。先生が気になる作品はありますか?」
「いいえ。ですが、どの絵も素敵ですね」
ありきたりの答えが続く。
セイボリー語を交えながらその後も美術館巡りをしたものの、クロム様が見入る絵はなかった。
「なんで~? なんでどの絵画にも、興味を示してくれないの?」
城に戻った私は気落ちして、長椅子にぐったりもたれかかった。
――おかしいわ。あの映像は、確かにクロム様だったのに……。
私にとっては最重要。
暗殺者としての彼は、絵を見たことで感情が揺れ動く。
美術品を収集したのは彼のためでもあるけれど、自分のためでもある。絵を通じて、推しの心を動かしたい。
「……あ。いいこと思いついた。ないなら作ればいい。クロム様の肖像画作戦に突入よ!」
講義中「質問は?」と聞かれるたび、クロム様ご自身について尋ねてみる。
「気になる動物は、もしかして犬ですか?」
「居心地はいかが? お好きな色があれば、壁紙を取り寄せて貼り替えてもらいましょう」
「人物、静物、風景。絵画はどれがお好きでしょうか?」
でも、クロム様は何を聞いてもだいたい同じ答えだ。
「みんな好きですよ」
推しの貴重な『好き』、いただきましたあああああ☆
「カトリーナ様、いかがなさいましたか?」
いけない、脳内で興奮している場合じゃなかった。
そもそも、私にあてた言葉じゃない。
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「カトリーナ様、本日はセイボリー語を教えたはずですよ」
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「雑談ばかりは、感心しませんね。兄君の誕生祝いを、無駄になさるおつもりですか?」
「いいえ、そんなつもりはありません。ところで誕生祝いと言えば、クロム先生がお生まれになった日を伺っていないのですが」
「さあ。そんなものは、とうに忘れました」
「嘘!」
「嘘ではありません」
クロム様はムッとしながら、眼鏡の位置を直している。
――いけない。しつこく聞きすぎて、怒らせてしまったみたい。
推しを笑顔にするどころか、不機嫌にさせているような。
こうなったら、ゲームとファンブックの情報が頼りだわ。
【作戦その1 推しを美術館に連れて行こう!】
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その背景には一瞬、クロム様くらいの背格好の人物が遠目に映る。
芸術国としての我が国を印象づけるため、美術館の内部を表したのだろう。でもこの私が、推しを見逃すはずがない。
「名画のタイトルをセイボリー語で知りたいって、お願いするのはどうかしら? それって、立派な課外授業よね?」
推しの心を掴む絵を見つけたら、すかさず買い取りプレゼント。距離は一気に縮まるはず。
スタート前にクロム様と親密になっておく。そうすれば攻略対象の入る余地はなく、暗殺だって起こらない。
そんなわけで、袖にたっぷりのフリルが付いたラベンダー色のドレスでおめかしした私は、推しを美術館に連れ出した。案内しながら、反応を注意深く窺う。
「こちらは国内の画家を集めたコーナーです。クロム先生、いかがですか?」
「そうですね。どれも素晴らしいです」
――それだけ? 彼の心を引く絵はないの?
「ここから先は、国外の絵画です。先生が気になる作品はありますか?」
「いいえ。ですが、どの絵も素敵ですね」
ありきたりの答えが続く。
セイボリー語を交えながらその後も美術館巡りをしたものの、クロム様が見入る絵はなかった。
「なんで~? なんでどの絵画にも、興味を示してくれないの?」
城に戻った私は気落ちして、長椅子にぐったりもたれかかった。
――おかしいわ。あの映像は、確かにクロム様だったのに……。
私にとっては最重要。
暗殺者としての彼は、絵を見たことで感情が揺れ動く。
美術品を収集したのは彼のためでもあるけれど、自分のためでもある。絵を通じて、推しの心を動かしたい。
「……あ。いいこと思いついた。ないなら作ればいい。クロム様の肖像画作戦に突入よ!」
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