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第五章 あなただけを見つめてる
あなただけを見つめてる
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どちらにせよ、私は生きている。
「良かったぁ……」
「カトリーナ、心配したよ」
ホッとした途端、耳元に息がかかってゾクッとしてしまう。
「うひゃっ……ルシウス様!」
「カトリーナが倒れた時には驚いたが、元気そうで良かった」
「ご心配をおかけして、すみません」
ルシウスは優しく微笑み、兄に向き直る。
「彼女は、僕が責任を持って医務室に運びましょう」
「いいえ。妹は私が連れて行く」
「いや、俺が」
私の前にはハーヴィーがいて、隣にルシウス、背後にクロム様。
イケメンに囲まれたこの上ない状況にも拘わらず、ちっともときめかないのはなぜ?
――結局、怪我をしていないことになったから、診察なんて必要ないのに……。
やれやれ、と肩をすくめた私の腰にクロム様が腕を回す。そのまま膝裏に手を入れて、軽々と抱え上げた。
「きゃあっ☆☆」
密着できて、大興奮。
しかもこれ、お姫様抱っこだ!
クロム様の笑みはとっくに消えて、いつもの無表情。
けれど、キリリとした凜々しい表情の中にも気遣うような色がある……気がする。
この至福の時が永遠に続けばいいと、私は彼の首にしがみつく。
「クロムしゃま、クロムしゃ……うわっ」
ルシウスが、横から腕を伸ばす。
兄との話し合いがついたらしく、私を引き取り横抱きにする。
――解せぬ~、戻せ~……じゃ、なくて。
「ルシウス様。私、自分で歩けますよ?」
「無理しなくていい。それに君は、羽のように軽いからね」
――いや、そんな人間いないから。
ルシウスを恨みがましく見つめていると、てきぱきと指示を出すハーヴィーの声が聞こえた。
「調査のために現場は温存。魔道具にも手を触れるな。タールは、アルバーノを地下牢まで連行してくれ」
国家騎士のタールは、アルバーノの実の弟。
あえてタールに頼むことで、兄は彼を信じていると、城のみんなに示したようだ。
「かしこまりました」
タールは即座に、捕縛したアルバーノを引っ立てていく。
兄のハーヴィーは、その後も現場を指揮するのに忙しく、私には目もくれない。
ルシウスも険しい顔で、黙って前を見つめている。
そしてクロム様は……あれ? とっくにいないんだけど。
突然不安に襲われた。
――大丈夫、よね? 私に黙って、姿を消したりしないよね?
彼の笑みを見たものの、まだ幸せにはしていない。
私と彼は、これからだ。
そんなわけで、最愛のクロム様もあっさり退場。
攻略対象は全員事務的だし、私への好意は欠片も見られない。
もしやこの世界のゲームオーバーって、ヒロインのカトリーナが誰とも上手くいかないって意味!?
ルシウスに運ばれて、医務室に直行。
彼は私を一度も下ろすことなく、ここまで運んでくれた。疲れた顔を見せないなんて、さすがはメインヒーローだ。
医師の問題ないとの診断に、私は胸を撫で下ろす。
「ね、言った通りでしょう?」
「ああ。カトリーナに怪我がなくて良かった」
「ルシウス様。ここまで付き添っていただき、ありがとうございました。ご迷惑をおかけして申し訳ありません」
「迷惑? まさか。君の役に立てて光栄だ」
ところが横から、医師が口を挟む。
「ですが王女殿下は念のため、安静にしてください」
「安静? でも……」
「カトリーナ、彼の言葉ももっともだ。事件に巻き込まれた君は、自分で思うよりも疲れている。ゆっくり休んでね」
「……はい」
それ以上逆らうわけにもいかず、自分の部屋へ。
おとなしくベッドに横になったものの、実際は元気で暇を持て余している。
「アルバーノの件は一件落着。ようやく、クロム様との幸せに専念できるわ」
思い浮かぶのは、大好きな彼のことばかり。
「さっきのあれは、笑顔よね? 私が生きていると知って、喜んでくれたのでしょう?」
心がポウッと温かくなる。
――最愛の彼が、私の無事を喜んでくれた。それがこんなに嬉しいなんて!
「これってもはや、両思い!?……って、気が早いか。ドタバタしていたせいで、せっかくの笑みもじっくり鑑賞できなかったわ。彼の笑顔を引き出すには、どうすればいいかしら?」
私のことより、彼のこと。
クロム様ご自身に、心から笑ってもらいたい。
この世は捨てたもんじゃなく、生きるだけの価値はある。
そのことをわかってもらうため、私に何ができるだろう?
「クロム様の幸せは、私の幸せ。私はいつでも、あなただけを見つめてる」
医師に安静を言い渡されたのをいいことに、私は彼を幸せにするための作戦を練ることにした。
「良かったぁ……」
「カトリーナ、心配したよ」
ホッとした途端、耳元に息がかかってゾクッとしてしまう。
「うひゃっ……ルシウス様!」
「カトリーナが倒れた時には驚いたが、元気そうで良かった」
「ご心配をおかけして、すみません」
ルシウスは優しく微笑み、兄に向き直る。
「彼女は、僕が責任を持って医務室に運びましょう」
「いいえ。妹は私が連れて行く」
「いや、俺が」
私の前にはハーヴィーがいて、隣にルシウス、背後にクロム様。
イケメンに囲まれたこの上ない状況にも拘わらず、ちっともときめかないのはなぜ?
――結局、怪我をしていないことになったから、診察なんて必要ないのに……。
やれやれ、と肩をすくめた私の腰にクロム様が腕を回す。そのまま膝裏に手を入れて、軽々と抱え上げた。
「きゃあっ☆☆」
密着できて、大興奮。
しかもこれ、お姫様抱っこだ!
クロム様の笑みはとっくに消えて、いつもの無表情。
けれど、キリリとした凜々しい表情の中にも気遣うような色がある……気がする。
この至福の時が永遠に続けばいいと、私は彼の首にしがみつく。
「クロムしゃま、クロムしゃ……うわっ」
ルシウスが、横から腕を伸ばす。
兄との話し合いがついたらしく、私を引き取り横抱きにする。
――解せぬ~、戻せ~……じゃ、なくて。
「ルシウス様。私、自分で歩けますよ?」
「無理しなくていい。それに君は、羽のように軽いからね」
――いや、そんな人間いないから。
ルシウスを恨みがましく見つめていると、てきぱきと指示を出すハーヴィーの声が聞こえた。
「調査のために現場は温存。魔道具にも手を触れるな。タールは、アルバーノを地下牢まで連行してくれ」
国家騎士のタールは、アルバーノの実の弟。
あえてタールに頼むことで、兄は彼を信じていると、城のみんなに示したようだ。
「かしこまりました」
タールは即座に、捕縛したアルバーノを引っ立てていく。
兄のハーヴィーは、その後も現場を指揮するのに忙しく、私には目もくれない。
ルシウスも険しい顔で、黙って前を見つめている。
そしてクロム様は……あれ? とっくにいないんだけど。
突然不安に襲われた。
――大丈夫、よね? 私に黙って、姿を消したりしないよね?
彼の笑みを見たものの、まだ幸せにはしていない。
私と彼は、これからだ。
そんなわけで、最愛のクロム様もあっさり退場。
攻略対象は全員事務的だし、私への好意は欠片も見られない。
もしやこの世界のゲームオーバーって、ヒロインのカトリーナが誰とも上手くいかないって意味!?
ルシウスに運ばれて、医務室に直行。
彼は私を一度も下ろすことなく、ここまで運んでくれた。疲れた顔を見せないなんて、さすがはメインヒーローだ。
医師の問題ないとの診断に、私は胸を撫で下ろす。
「ね、言った通りでしょう?」
「ああ。カトリーナに怪我がなくて良かった」
「ルシウス様。ここまで付き添っていただき、ありがとうございました。ご迷惑をおかけして申し訳ありません」
「迷惑? まさか。君の役に立てて光栄だ」
ところが横から、医師が口を挟む。
「ですが王女殿下は念のため、安静にしてください」
「安静? でも……」
「カトリーナ、彼の言葉ももっともだ。事件に巻き込まれた君は、自分で思うよりも疲れている。ゆっくり休んでね」
「……はい」
それ以上逆らうわけにもいかず、自分の部屋へ。
おとなしくベッドに横になったものの、実際は元気で暇を持て余している。
「アルバーノの件は一件落着。ようやく、クロム様との幸せに専念できるわ」
思い浮かぶのは、大好きな彼のことばかり。
「さっきのあれは、笑顔よね? 私が生きていると知って、喜んでくれたのでしょう?」
心がポウッと温かくなる。
――最愛の彼が、私の無事を喜んでくれた。それがこんなに嬉しいなんて!
「これってもはや、両思い!?……って、気が早いか。ドタバタしていたせいで、せっかくの笑みもじっくり鑑賞できなかったわ。彼の笑顔を引き出すには、どうすればいいかしら?」
私のことより、彼のこと。
クロム様ご自身に、心から笑ってもらいたい。
この世は捨てたもんじゃなく、生きるだけの価値はある。
そのことをわかってもらうため、私に何ができるだろう?
「クロム様の幸せは、私の幸せ。私はいつでも、あなただけを見つめてる」
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