境界線の知識者

篠崎流

文字の大きさ
30 / 50

立ち位置

しおりを挟む
先の第一次ペンタグラム開戦の後
フォレスにはもう一つの「めんどくさい」が出来た

全体戦略の為とは云え、ペンタグラム丸ごと避難、庇護し、実質本当に「ガーデイアン」に成ってしまった事、これでまた忙しく成った

とりあえずで空けた中央官舎の一部に滞在したペンタグラム側の高官らと協議し今後を話し合った

「今後だが‥」

そうフォレスの第一声だが。口調からも正直困った事態でもあるのも見て取れる

「うむ、余は別にここでも構わん、業務と言ってもそれ程やる事も無かろう」
「問題は通貨権ですが、これは既に製造所の作成、東庁舎付近に作りました、来週には製造も始まります」
「謁見、お伺い、外交交渉ですが、転移陣が少々遠いですな」
「だよなぁ、でだが、通貨はここで製造、それ以外はバルクストでというのも、有りだと思うんだが」
「ふーむ、転移施設が近いですからな」
「うむ、余は何処でも構わん、それに来て見て分ったが、グランセルナ連合は過ごし易い、堅苦しくないしな」
「では、バルクスト西に何か建てましょう、ペンタグラムの転移陣自体、あそこにありますし」
「それでよいと思う、ただ、余が思うに新たに何か作る必要は無いだろう、ソチラの手間でしかないし、業務を南で行うのもずっとではない」
「暫定政府に近いですから」
「では、バルクストに移動されますか?」
「それでいいと思う、バルクスト、つまり南転移施設もそれ程遠くない、外交、査察業務と言ってもそれ程多くないし。カイルはどうか?」
「はっ、わたくし等もそれで問題ないと考えます」
「わかった、ではそうしよう、元の住民については希望を聞く形でよかろう」

そう一応決定されて、即座にバルクストに伝心、グランセルナとバルクストには元々フォレス作成の簡易転移陣がある為、当日夕方には一行はバルクストに発った

バルクストは元々「南」で最大国家ではある、城も固いし街の規模もデカイ、城も豪華と云っていい

城の上階を充てて教皇らと御付の者と一部官僚もそこを、仮司令部に使う事になるが、教皇らは気に入った様だ、色々配慮もしようと思ったが教皇自身が受けなかった

「我々は庇護を受けている立場、過剰な配慮は必要ない」との事だった

住民の希望、と言ってもグランセルナに移住する者が多く出た、ハッキリ云って官舎は質素の極みだが、反面、一般の家や街、商売、生活の利便性は世界のどこも真似できない整えと、最高レベルの安全性があった、そもそも税負担が異常に安い上に仕事も多く、住民も差別、区別無く明るい点があった、そうなるのも自然とも云える

ペンタグラムの「神騎士団」自体は数日遅れでやはりバルクストに、これの兵力自体は希望者から増やす事と成った、数自体も三千には成っていた為、ペンタグラム防衛軍としては、現状それなりだろう

問題があるとすれば「本国」に戻った後
ペンタグラムに住民が戻るか、という所だろうか

所謂「裏」の備え自体は実際それ程問題は無い、旧バルクスト王家は元々近衛にアドニスが居る為と、既に場所的にどこかの工作員が侵入、暗殺の類をするのは難しい状況にある、何しろ周りの国殆ど味方なのだ

ペンタグラムの移転後の業務はそれ程弊害は無かった、飢餓から全国会談も止まっていたし、寄付、謁見、外交、調停も減った事があった、既にそれ程やる事も無く、実務面、統計管理や、通貨の申請供給、これが主である

フォレスは南に戻ったターニャとメリルに与えた軍をバルクストに戻し、裏の対処で完璧を期する為にアノミアの部隊の増強も指示した

既に「友人」と言っていい関係であったターニャと教皇は、この流れ自体を喜んだ、逆にオルガは困った感じだったが

「姫と教皇様がここに固定滞在とは‥」普通に両者は立場上太守のオルガより上である

二月の後半には「また」考案したというかパクった、その装備一式がバルクスト滞在軍ターニャにも届けられた

連絡を受けてバルクストの錬場に揃った装備軍を見に行って、ターニャもメリルも驚いた

「これって‥」
「相手が使ってた武装隊ですねぇ‥」

先の戦争の情報からフォレスは判断して直ぐに用意しこれを送った、ベステックの特注軍リバースクロスの「鉄騎馬隊」30騎である

「王様はやる事が早いですね‥」
「なんかターニャ用の鎧も来たんだけど‥」

同時にターニャが軍を持ったのに合わせて作成した白銀の軽全身鎧一式であった

「強そう」
「でも、尤もですね、目立つほうが良いですし、先の部隊戦でも相手に装備負けでしたし‥」
「目だった方がいいのかなぁ‥」
「ええ「姫将軍」ですし、全国的にターニャ姫は知られてますから、心理的効果もあります、そもそも誰と一騎打ちしても負けませんし」
「なんかちょっと嫌‥」
「そうですか?」

別に「ターニャだけ」という訳ではない、前線で個人武を活かす場面のある将にも次々送られる事になる

「おい‥なんだこれは‥」
「はっ、陛下から配備された物ですが?‥」

無論、ロドニに留まっていたティア、エミリアにもである、ただ鉄騎馬は大量配備出来ない為、個人鎧一式だけだが

「ふむ、案外悪くない」
「やたら軽いなコレ」

実際着てみて、二人共気に入った模様、カラーリングは勿論三者とも違う、ターニャは白銀、エミリアは真紅、ティアはまんま深緑

そして「軽い」のも当然、軽装鎧でも全身鎧だ、フルプレート程ではないがそこそこ重量がある、それが軽いのは「エンチャント処理」であった為だ

ちなみにコレも元々バルクストの4剣が其々違うアクセントラインの、カラーリングの軍服を着ている事から倣った

この配備理由は単純、メリルが云った通り、敵味方への心理効果、最前線での装備負けはダイレクトに戦果に通じる面

そもそもグランセルナ軍で指揮官を務める3者はそもそも被弾されても困るが、武力がやたら高い為、活かす事が多い点である、武装、装備が豪華すぎるという事は無い

もう一つが人事部の報告で主軍から騎士団に抜擢して増やされた隊員である。元々首都近衛ではあるが千名近くに成った為

「んじゃ、折角だし武装も強化すっか」

とこれも、ロベルタやペンタグラムの様にパクっ‥習って、全体的に装備強化した点である、もちろん騎士団の責任者兼クローゼらにも専用鎧や剣盾セットで配備される

「世界情勢」は宜しくない方向に向かった
テスネアのアデンスターカがペンタグラム本国の侵攻、更に軍備の形に成った事である

ある意味それしか道が無かったとも言える、別にフォレスのせいでは無いが、ペンタグラム本国の武力制圧の形、そこから教皇は得られず、擁立する形が得られなかった為だ

つまり、なんら正当性も無く、どこから見ても強引な武王、知勇や治世を目指す形は無くなった、と成ればもう「覇者」を目指すしか無い点である

一体誰が「ペンタグラムに攻め込んで武力奪還を図った」テスネアを、治世、知者。等と呼ぶだろう、大幅に予定が狂った、狂わされたとも云う、だが、それが行動に示されるのは時間が掛かった

先の敗戦の建て直し、抑えたペンタグラム本国には何も残っていない、もぬけの空である為自国の防衛軍を分割して配備した事、唯一の利でもあるペンタグラム領地周りの金銀銅の採掘等の作業がある為

そして「評価」である、この状況に成ると周りが一層警戒する、防備を固めて動かないという流れになるのは自然だ、より一層動き難い膠着と言えるだろう

ただ、軍備と云っても他国、他地域と違ってそれほど無理は無い、元々の地域人口が多く、兵を増やしても人口バランスの圧迫にはそれ程ならない事だ、逆に言えばアデルはどの道でも成せるだけの資質と材料があった、とも云える

「こうなったら仕方無い、実力を持って制覇する」

そう形を決め、兵力、国力、支援力の強化を進めた、特に積極的に行ったのが人材の収集である

3国奪取後、内治の安定を図って他の部分は自然回復に任せたが、この時点四年目の2月から兎角軍側に人を集めた、そこから幾人か武に秀でた将を抜擢して支配地の各国軍に充てる

三月にはペンタグラムに主力を移し砦、軍事基地として使い、派兵し易い状況に持っていく、事ここに至っては周りの目を気にする必要も無かった

アデル自身別に悲観もしていなかった「それならそれで進むだけだ」としか思わなかった、そしてそれもまた「誤り」なのである

それとは逆にフォレスとグランセルナ連合の威光は高まったと云える、それはやはり行動に寄って示した点である

ペンタグラムを手中に収めたと一時思われたが保護、機能の移転、業務に支障が無く、かと云ってペンタグラムのガーディアンの立場を超えて何かを告知するとか、決まり事を変えるという事も無い、本当に「ただの庇護者」としての行動と評価の変化に配慮を続けた点

中央の状況の変化で膠着が成った、それが動き出すまでの間、暫くは期間があり、またも表面上の安定時期に入る事になる

ただ連合では色々と別の意味で忙しかった、一つがバルクストでの吉事、フォレスがオルガから報告と相談を受けて公に成った

「アトロス大将と、その‥結婚を前提に、お付き合いを‥」そう報告される

聞くとオルガが統治を任されてからだという
極めてプラトニックな関係との事

「んー‥結構長く成るんだな、もう、いっそ婚姻したらどうなんだ?」
「宜しいのでしょうか‥」
「元々のバルクスト関係者同士だし、そもそも民衆も喜ばしい事だろう、というか、オレが口を挟む事でもないが‥」

そこからはトントン拍子、三日後には周囲の薦めあって二人は婚姻、民衆で反対する者も居らず式も直ぐに開かれ、ペンタグラムの高官が神父を務めて行われた

フォレスの云った通り、元々の地元、王家一族と軍将である事から、大いに盛り上がり、この式典、祭りもバルクストの民の側でも二日続いた、アトロスはド派手にされて非常に嫌そうだったが

この名士二人の婚姻となれば地元民も大歓迎であるし、質素に、という訳にもいかない側面もあった


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ダンジョン美食倶楽部

双葉 鳴
ファンタジー
長年レストランの下働きとして働いてきた本宝治洋一(30)は突如として現れた新オーナーの物言いにより、職を失った。 身寄りのない洋一は、飲み仲間の藤本要から「一緒にダンチューバーとして組まないか?」と誘われ、配信チャンネル【ダンジョン美食倶楽部】の料理担当兼荷物持ちを任される。 配信で明るみになる、洋一の隠された技能。 素材こそ低級モンスター、調味料も安物なのにその卓越した技術は見る者を虜にし、出来上がった料理はなんとも空腹感を促した。偶然居合わせた探索者に振る舞ったりしていくうちに【ダンジョン美食倶楽部】の名前は徐々に売れていく。 一方で洋一を追放したレストランは、SSSSランク探索者の轟美玲から「味が落ちた」と一蹴され、徐々に落ちぶれていった。 ※カクヨム様で先行公開中! ※2024年3月21で第一部完!

死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜

のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、 偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。 水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは―― 古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。 村を立て直し、仲間と絆を築きながら、 やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。 辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、 静かに進む策略と復讐の物語。

【最強モブの努力無双】~ゲームで名前も登場しないようなモブに転生したオレ、一途な努力とゲーム知識で最強になる~

くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
アベル・ヴィアラットは、五歳の時、ベッドから転げ落ちてその拍子に前世の記憶を思い出した。 大人気ゲーム『ヒーローズ・ジャーニー』の世界に転生したアベルは、ゲームの知識を使って全男の子の憧れである“最強”になることを決意する。 そのために努力を続け、順調に強くなっていくアベル。 しかしこの世界にはゲームには無かった知識ばかり。 戦闘もただスキルをブッパすればいいだけのゲームとはまったく違っていた。 「面白いじゃん?」 アベルはめげることなく、辺境最強の父と優しい母に見守られてすくすくと成長していくのだった。

病弱少年が怪我した小鳥を偶然テイムして、冒険者ギルドの採取系クエストをやらせていたら、知らないうちにLV99になってました。

もう書かないって言ったよね?
ファンタジー
 ベッドで寝たきりだった少年が、ある日、家の外で怪我している青い小鳥『ピーちゃん』を助けたことから二人の大冒険の日々が始まった。

エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~

シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。 主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。 追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。 さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。 疫病? これ飲めば治りますよ? これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

最弱弓術士、全距離支配で最強へ

Y.
ファンタジー
「弓術士? ああ、あの器用貧乏な最弱職のことか」 剣と魔法が全てを決める世界において、弓は「射程は魔法に及ばず、威力は剣に劣る」不遇の武器と蔑まれていた。 若き冒険者リアンは、亡き叔父から譲り受けた一振りの弓「ストーム・ウィスパー」を手に、冒険者の門を叩く。周囲の嘲笑を余所に、彼が秘めていたのは、世界をナノ単位で解析する「化け物じみた集中力」だった。 リアンの放つ一矢は、もはや単なる遠距離攻撃ではない。 風を読み、空間を計算し、敵の急所をミリ単位で射抜く精密射撃。 弓本体に仕込まれたブレードを操り、剣士を圧倒する近接弓術。 そして、魔力の波長を読み取り、呪文そのものを撃ち落とす対魔法技術。 「近距離、中距離、遠距離……俺の射程に逃げ場はない」 孤独な修行の末に辿り着いた「全距離対応型弓術」は、次第に王道パーティやエリート冒険者たちの常識を塗り替えていく。 しかし、その弓には叔父が命を懸けて守り抜いた**「世界の理(ことわり)」を揺るがす秘密**が隠されていた――。 最弱と笑われた少年が、一張の弓で最強へと駆け上がる、至高の異世界アクションファンタジー、開幕!

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

処理中です...