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「ん・・・」

送迎車が大きく揺れたせいで、勇人は目をさました。


いつの間にか眠ってたのか・・


目をこすりながら身体を動かそうとして止まる。

高坂が勇人の肩に頭を乗せていたからだ。


『うわあああああーーーっ!』


危うく声をあげそうになったのを堪えたことをホメてほしい。


何これ・・?どういうこと・・?

頭はパニック状態で、しかも手がしっかりと握られたままだ。

うわっ・・ウソだろ?

勘弁してくれよ・・

ドキドキして身体中が熱くなる

それを誤魔化そうと手で顔を隠し

ふと、窓の外を見ると、

山ばっかりだった景色が海へと変わっていた。

水族館は海辺にあるのでもうそろそろ到着する頃だ。

高坂は相変わらず気持ちよさそに眠っている。

長いまつ毛に整った顔立ち、栗色の髪に少し開いた口元・・


ヤバい、キュンキュン・・する。

オレ・・・まさか・・・いや、でも・・・


昔、母さんに聞いたことを思い出した。

それは、テレビで恋愛ドラマを見ているときだった。



『恋ってどうやってするの?』



クラスの女の子に『勇人くんが好き』と告白されたけど、

オレにはそれがどんな気持ちなのか理解できなかった。

まだ、子供だったんだと思う。

母さんは驚きながらも嬉しそうに笑って答えてくれた。


『そうね・・胸がキューンとしたら、かな』

『キューン・・・?』

『フフフ勇人はまだわからなくてもいいのよ。そのうちわかる時が来るから・・』

『・・???』




胸がキューン・・・か。

高坂の顔を熱い眼差しで見つめながら

それって、今だよな?

と、自問自答する。


『これが・・恋・・なのか・・?』


自覚してから、このデートの意味を考えた。

やっぱデートってことは高坂さんもオレのことを・・?

堅物だって聞いてたけど、なんかグイグイ来るしなあ~・・

でも、オレ・・ノーマルだと思ってたのに・・・

周りに影響で染まったのか?


「はあ~・・・ウソだろ」


小さな声で呟いたつもりだっが、その声で高坂が目を覚まして、勇人の顔をじーっと見ていた。

何やってんだ?

顔を赤くしながら、落ち込んだり笑ったりしてまるで百面相だ。

勇人は肩の重みがなくなっていることにさえ気づいていない。

周りもそんな勇人の様子を見て笑っている。


「勇人・・・」


小さい声で注意を促すがそれにさえ気づく様子もない。


「勇人・・・」


おい、そろそろ気づけっ!


「相良・・・・相良勇人」


仕方なく肩を叩いて名前を呼ぶとやっと気づいたのか顔を真赤にして口をパクパクさせた。


「こ・・・こう・・さか・・さん」


顔をギリギリまで近づけるとボンっと音をたてそうなぐらい耳まで真赤になった。

下手すりゃそのまま倒れそうなくらいに・・

ホント、どうした?

具合でも悪くなったのかと心配になって声をかけようかと迷った時、

到着を知らせるアナウンスが流れた。

何というタイミングの悪さだと思わず乗務員を睨む高坂だった。

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