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しおりを挟む雨、か・・
やけくそで飛び出したのはいいものの闇雲に走ったせいで、オレは足を滑らせて斜面に転落。
頭をしこたま打ったらしく気が付いたらここに・・しかも足を捻ったらしく身動きができない状態・・
はあ~・・何でこうなったんだろう・・
頬に手をあてるとまだピリピリする。
初めて兄さんに叩かれて、ショックだった。
オレより、あいつらを選んだのかと思うと悔しかったし寂しかった。
みんな今頃どうしているだろう・・・
誰か助けに・・・イヤ、あんな酷いことをしたんだから
誰も、助けにきてきれないだろうな・・
雨が強くなってきた・・
このまま誰にも見つけられずに・・・
オレはここで―――死ぬ・・のかな?
あいつの言う通り、今の親衛隊は悪くない・・
それは見ていて何となくわかった・・
だけど・・オレの知らないうちにみんなが仲良くなっていて・・
それが、気に入らなくて・・八つ当たりしたんだ
「ハハハ・・・かっこ悪いな・・オレ」
冷たい雨が体温を奪っていく
このままだと、本当に死んでしまうかもしれない
この斜面さえなければと、恨めしく思いながら考える。
これを登れば誰かが見つけてくれるかもしれない。
それは微かな希望だけど、それに賭けてみるのも悪くない。
痛みを堪えながら地面に手を伸ばす。
服はドロドロだし顔も恐らく泥だらけだろう。
だけど、今はどうでもいい
「絶対、生きて兄さんに会う!みんなにも謝る!頑張れ、オレっ!」
オレってバカだ。
和也が、親衛隊に強姦されそうになったなんて知らなかった。
そんな目にあったんなら、あんな態度をとってもおかしくない。
だから、親衛隊は何も言わなかったんだと・・
「クソッ!無事でいてくれよっ!」
この雨のせいで一緒に来た副会長とはぐれた。
いわゆる二次遭難ってやつだ。
どっちがそうだか、わからないがこの場合オレかもしれない。
副会長はここは何度も来ているからと言ってたが、オレは当然初めてなのだ。
だから、頼りにしていた副会長とはぐれたのは痛かった。
空が真黒になり雨で視界が悪くなり始めた頃、微かに斜面に動くものが目に入った。
もしかしたらと思い近寄ってみると和也だった。
「おい、しっかりしろっ!」
いくら声をかけても身体を揺さぶっても反応がない。
しかも、息が荒い。
この雨で熱をだしたのかもしれない。
どこか避難できるところないのかと、彼を背中に担いで歩き出した。
足元はドロドロで歩きにくく体力を奪っていく。
それでも、どこか休めるところはないかと探しているとログハウスが目に入った。
助かった、これで何とかなる。
「もう少しの辛抱だ・・」
担ぎなおしてログハウスへと急いだ。
目の前にあるそれは随分年期のはいったもので、いつもに金ぴかとは縁のない古いログハウスだった。
「さすがにログハウスに金ぴかはないか・・」
皮肉めいた言葉が出たのはこれまで散々裏切られたせいでもある。
「まあ、今はどうでもいいな」
兎に角いまは休みたい。
それだけだ・・
念のためログハウスの周りを見回すが人影はなく、玄関のカギもかかっていなかった。
それどころか、電気もガスも水道も何の問題もなくすぐに使えた。
どうやらここは緊急避難場所のようで、土地勘のないオレがここにたどり着いたのは奇跡かもしれない。
急いで、暖房のスイッチを入れ湯舟にお湯を張る。
和也の服を脱がして・・と、そこで手を止めた。
副会長に聞いた話が頭に浮かんだからだ。
『和也は親衛隊に襲われたんです』――――
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