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しおりを挟む船から飛び降りて兄さんの元へと走り出す。
「兄さあああーーーんっ」
オレの声に気づいて兄さんも駆け出す。
「勇人おおおーーーっ!」
感動の再会と行きたかったのに、一台の車がそれを遮った。
キキキキッ―――っ!
バタンっ!
「えっ・・」
油断していたオレはその車に押し込まれ、またしても連れ去られるという失態をさらすことになった。
しかも、スタンガンをくらってだ。
身体が痺れて意識が遠のく前に見たのは見覚えのある男の歪んだ顔だった。
「桐生ううう――――、追えっ――――!!!」
晴広の悲痛な叫び声に桐生はすぐさま反応するがひと足遅くそのまま車は走り去ってしまった。
「クソッおおおおーーっ!」
すぐ傍にいながら勇人をまんまと奪われた桐生は悔しくて地団駄を踏み、晴広もまた怒りで身体を震わせた。
「ん、う・・ん」
重い瞼をゆっくりと開くが視界はぼんやりとしていた。身体を起こそうとしても痺れが残っていてゆうことを効かない。
「うっ・・」
はっきりしない意識が覚醒したのは男の歪んだ顔を見た瞬間だった。
「お前は・・」
「気が付いたか?」
男の舐めるような視線と歪んだ口元に身の危険を感じて逃げようと身体を動かそうとしたが、両手が動かず聞こえて来たのはガチャガチャという金属音だった。
「ククク・・やっとお前を手に入れた」
指でスーッと頬から顎を撫でられてぞわっと寒気がした。
「―――っ」
「ああ、オレの勇人が目の前に・・この時をずっとっ待っていた」
男の目は恍惚としていて顔は狂気に満ちていた。
指が顎から離れ唇を撫でる。
触れられていることに嫌悪感と恐怖でいっぱいになる。
こいつは誰だ?
何でここにいる?
何でオレは連れて来られた?
原因を必死に考えるが、答えなんてあるはずもなく、男のテンションはマックスだ。
「この唇もこの身体も全て・・・オレだけのものだ。そうだよなあ~オレの勇人お~」
ギラギラした目と甘く囁く声。
だが、それは勇人が望んだものではない。
男は優しく話しているつもりかもしれないが、勇人には狂気でしかない。
狂っている―――
それしか頭に浮かばなかった。
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