戦国食堂はじめます〜玄米にお湯をかけるだけの戦国料理…私がもっと美味しいもの作ります〜

好葉

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皆さんいい食べっぷりで、あっという間に大皿に盛ったさばの味噌煮と梅煮が無くなってしまった。
私もいつもより多めに食べてしまい、お腹がキツイ。
食後はよしさんが用意した白湯を飲みながら雑談していた。

他愛のない話をしていたのだが、いつの間にか私がどこで料理を覚えたかという話題になった。
母は料理が苦手だったので、基本的におばあちゃんに教えてもらった。
社会人になってからは本やネットで見て食べたいものを作っていた。
だが、ここにはネットもなければ本も簡単には手に入れれない。

でももし本が手に入った色々確認したいことがある。
この時代の字が読めるのかとか…。
もしかしたらタイムスリップした影響で読めるようになってるかもしれない…。
異世界小説でそういう設定読んだことあるのでほんの少しだけ期待していた。

文字が読めない場合は…この時代の字を一から覚えるしかないけど…。

この時代に来て優しくしてくれた人達だから、なるべく嘘をつかないように話そう。

「料理の方法はおばあちゃんに教えてもらいました。」

これは事実なので大丈夫だろう。
やすさんが少し不満そうだったが、いきなり手を叩いた。

「そういうことか!菜ちゃんのお爺さんがどこかの屋敷で料理人をしていて、その技術をおばあちゃんに教えたんだ。きっとそうに違いない!」

自信満々にやすさんが宣言する。
その話を聞いてよしさんと時次さんが苦笑いしている。
おばあちゃんに料理を教えてもらったという一言でどうしてそんな想像が浮かんだんだろう。

自信に満ち溢れてますけど違いますからね…やすさん。
ちなみにお爺さんは普通のサラリーマンだった。

「やすさん…違いますから。」

やすさんの妄想をここで止めておく。
これ以上変な妄想をしては困る。
私が否定してもやすさんは食い下がらない。

「でもよう…。そうでなきゃこんな美味い料理作れないだろう。」

時次さんもその言葉には頷いていた。

「確かにそうですね。どの料理も近い感じの物は食べたことはありますが、菜さんが作る料理は少し違う。一歩先をいっているような感じですね。初めて食べる味のものも美味しいですし。」

時次さん鋭い…。
早く話題を変えよう。
質問攻めにされても困る。

「そういえば、これからなるべく個人的な注文も受け付けようと思ってるんですよ。よしさんさえよければですが…。」

考えていた提案をよしさんに言ってみた。

「あらあら、そんなことかい。好きにしなさい。私はてっきりおにぎりをこれから売っていくって言うのかと思ったよ。」

おにぎりの件はこれから話そうと思っていたんだけど。

「できればおにぎりも売っていきたいとは思ってました。旅の方が立ち寄る事が多くなってきたので持ち運びできるおにぎりはうってつけですから。」

私が来た当初のお客さんは地元の働いている人がメインだったが近頃は旅の人も増えて来た。
そこで、持ち帰ることもできるおにぎりを売りたいと思っていたのだ。

どこでも食べれるので、旅の人だけでははくて地元の人も利用してくれるようになってくれると嬉しい。
これからもっと忙しくなりそうだな。

「おっ?おにぎりか!早速明日お願いするぜ。時次と俺の分な。時次もどうせ食うだろう?」

「はい。食べます。」

話を聞くや否ややすさんから注文を貰った。
注文してくれる事は嬉しいが早すぎではなかろうか…。
そしてどうして時次さんの分までやすさん頼んでるんですか。

時次さんも即答だったな。
注文を貰えた事は嬉しいし、仕事なので承諾する。

「わかりました。受け取りに来ますか?それともお店で食べますか?」

「実は今の仕事があと少しで終わるもんでよ。時次と俺は次の現場に行かなくちゃなんねぇから若い奴に取りに行かせるわ。そうだなぁ、昼前に頼むぜ。そいつの分もすまんが作ってくれ。」

近々二人ともここに来れなくなるって事か。
やすさんと時次さんに会うのが楽しみになっていたのでちょっと寂しい。
時次さんは申し訳なさそうに話す。



「次の現場は少し遠くなるのでこちらで食べることが出来なくなってしまうと思います。夕方は私の友人の注文を受け取りには来ますが…。」

私が寂しく思っていたことが時次さんにはばれてしまっていたらしい。

「少し寂しくはなりますが、ご注文されたおにぎりにはそのぶん真心を込めて作らせて頂きます。」

ここにこれない分、心を込めて作ろうそう思った。
明日は気合を入れて頑張らなくては。
やすさんに注文の最終確認をする。

「おにぎりの注文三つ、昼前受け取り、で大丈夫ですか?」

「おう、それで大丈夫だ。もう一つ頼みたい事があるんだがよう…。」

やすさんが言いよどんだ。
私に何を頼みたいんだろう?やすさんの言葉を待つ。

「今日作ったさばの料理あるだろう?それ両方とも少し分けてくれないか?頼む!」

やすさんは私に手を合わせて頼む。
あれ?それだけか…もっとこれを使って何か作ってくれとか言われると思っていたので拍子抜けである。

それだったら普通に頂戴と言えばいいのにこのさばはやすさんのものなのだから。
まぁ、それだけさば料理が気に入ったという事かな。

「いいですよ。今分けて来ますね。」

ついでに時次さんに渡そうと思っていたさば煮も分ける。
やすさんにはさっきお願いされたさばの料理、時次さんには友人の注文とさばの料理を渡した。
やすさんにはなぜだかすごく感謝されてしまった。
こうして、また一日が過ぎていった。

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