戦国食堂はじめます〜玄米にお湯をかけるだけの戦国料理…私がもっと美味しいもの作ります〜

好葉

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うどんと天ぷら(仕込み)

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夕方まで時間があったので、まずは梅の実の下処理をすることにした。
梅のシロップと梅酒は毎年作っていたので作り方は覚えている。
最初は梅を洗う前に梅に付いている黒いヘタを竹串で取り除いていき、傷ついた梅の実ははじいていく。
ここでしっかりヘタを取っておかないと苦くなってしまうらしい。

私はヘタを取る作業のために梅シロップを作っていると言っても過言ではないくらいこの地味な作業が好きだ。
たぶん何も考えずに没頭できるからだと思う。

ヘタを取り終わったら梅の実を一つずつ洗っていく。
そして、梅の実を一つずつ布で拭いていき、この時ヘタがあった部分もしっかりと拭き水分を取る。

梅の実を乾かしている間に梅を入れる壺を熱湯で殺菌して、よく乾かしておく。
後は梅と蜂蜜を入れれば完成だ。



黄色い梅のシロップはフルーティーな仕上がりになるので今からとても楽しみだ。
まだ蜂蜜がないので時次さんを待つ。
それまでにはきっと梅も壺も乾いているだろう。

お次は今晩の注文のうどんを作っておこう。
饂飩粉を大きいボールの中に入れて…と言いたいところだが大きい器が無いので鍋を使うことにした。

水と塩を用意して塩水を作るのだが、ここでしっかり塩を溶かしておく。
饂飩粉の真ん中にさっき作った塩水を少しずつ加えていき、手で混ぜるを繰り返す。
全部混ぜ終わったら少し生地を休憩。

鍋の中にあるボロボロの大小の粉を見ると不安になる。
本当にこれがうどんになるのかな…。
首を振り、自分のつたない記憶をただ信じるしかない。

生地を休憩させたらこのボロボロの粉を捏ねていって一つの塊にしていく。
捏ねていく内にまとまってきて内心ホッとした。

そして、ビニール袋などに入れて足で踏んでいきたいのだが…ここにはビニール袋もないので手で必死に捏ねて伸ばして生地を折りまた伸ばすを繰り返す事二十回くらい。
この作業小さい頃はとても楽しかった記憶があるのだが、今は足でやる作業を手で捏ねているのですごく重労働だ。

捏ね終わったら二時間くらい生地を休憩させる。
その間に私も体力を温存させてもらった。
自分の体力のなさを痛感…。

二時間後に生地を四角に伸ばしていき、伸ばしたら段々に折りたたむ。
後は端から均等に切って茹でれば出来上がり。

中々均等に切れなくて苦戦したけど、なんとかうどんの形にはなって内心ホッとした。
麺を茹でるのは時次さんとりゅうさんが来てからにしよう。
つゆには鰹節で出汁をとっておいたものと醤油を混ぜ合わせた特製のめんつゆを作っておいた。
味見をしたが、さすが私と自画自賛できる出来栄えだ。

うどんだけだと寂しいので、饂飩粉で天ぷらも作る。
小麦粉とあんまり変わらないから多分作れると…思うんだけど…。

現代にいた頃、一人暮らしだとてんぷら粉を余してしまうので小麦粉でよく代用していた。
使うものは饂飩粉と油、水、卵。

まずは、饂飩粉と油を入れて良く練り、この後水を入れて混ぜていく。
溶き卵もその中に入れて混ぜる。
卵は入れても、入れなくても大丈夫だが、卵を入れるとフワフワの衣になるので入れることに。
これで、特製の天ぷら粉の完成。

ちなみに今日揚げるものは鶏肉とたけのこ、ごぼうと人参のかき揚げと山菜各種。
りゅうさんが来た時に直ぐに揚げれるようにごぼうと人参は千切りに切り、鶏肉は十センチくらいの大きさにして食べ応え重視にした。

一通りの準備を終え、りゅうさんと時次さんを待つばかり。
椅子に腰かけて一息ついていると店の外から呼びかけられた。

「油屋の者ですけんど~。」

よしさんは店の接客中だったので私が対応しに外に出た。

「はーい!」

どうして油屋さんが…と不思議に思いながらも平然を装い話した。

「さっきは油ありがとうございました。どうしましたか?」

「ほら、頼まれていた分を持って来たんだよ。これどこ置くべ?」

油屋の人は親指で後ろを指さす。
後ろを見ると荷台が二台あり、壺に入った油が積んであった。

「……これ…全部ですか?…多分間違いですよ。私は頼んでませんよ。」

「いいんや、間違ってねぇよ。あの美人のお侍さんがそう言ってたからなぁ。代金も先払いしてくれてよぅ。」

美人のお侍さんってきっとりゅうさんのことだ。
代金もりゅうさんが払ってくれていたから間違いが無い。
でも置く場所が無いよ。
何処に置こうか考えていると時次さんが走って来た。

「…っ半分はこちらで引き取ります。何とか間に合いましたねっ。」

時次さんが油屋さんに小袋を渡していた。

「そういってもなぁ~。……っっどこまで運ぶんだい旦那!」
油屋さんは袋の中を見るや否や目を輝かせた。

「ひとまず半分を中にお願いします。菜さん」

「はいっ。ここら辺に置いて欲しいです。」

油屋さんは荷台の一台分を店の中に運び入れて、時次さんと少し話した後店を出発した。
油屋さんの姿が見えなくなった時、時次さんに深々と頭を下げられた。

「申し訳ございませんでした。」

「顔上げてください。どうして時次さんが謝ってるんですか。」

いきなり頭を下げられて、あたふたしてしまう。
なんとか時次さんに顔を上げてもらい、話し合うことに成功した。

「実はあの方少し世間離れしていまして…限度がわからない所が…。」

友達のはずのりゅうさんをあの方だなんて変だなぁと思いながら、きっと私に言えない関係が何かあるのだろうと考え、そこには口を挟まなかった。
そこに籠を背負ったお爺さんが訪ねて来た。

「梅を持って来たよぅ~。」

嫌な予感…と思いつつも返事をしてお爺さんに駆け寄った。

「はい、何でしょうか?」

「お嬢さんこの店の人かい?ほれ、梅を持って来たんじゃよ。急だったからこんなもんしか取れんかったわい。」

お爺さんは肩から籠を下して籠の中を見せてくれた。
籠の中には沢山の梅の実が入っていた。
またしても思い浮かぶのは代金を支払ってくれたりゅうさんだ。

私、これ全部仕込める自身がないのだが…。
大量の梅を見て顔が引きつる。

「明日、五籠ぐらい急いで持って来るからのぅ。しばし待っとってくれ。」

「ごっ…ごかごっ…。」

驚き過ぎてつっかえてしまった。
話を聞いていた時次さんも深いため息をつく。

「皆、外で立ち話?」

のんびりした聞き覚えのある声がして先ほど時次さんが来た道に目をやった。
噂をすればご本人様のご登場だ。











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