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お礼
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「いや、そういうつもりじゃないから」
優は林さんに迫っていた。服を脱いで彼に抱いてもらうつもりでいる。
「でも、何も返すものがないので……」
10万円をポンと渡してくれた林さんに自分が渡せる物はこの身体だけだ。
「別にお返しとか望んでいるわけじゃないから」
林さんは本気で拒否しようとしている。
「……その、僕とじゃ、嫌でしょうか?」
まさか自分が断られるなんて思ってもいなかった。この身体は30万円の価値があるんじゃなかったのか。中西さんは僕に30万の値段を付けた。もしかしてただの自惚れだったのか。
「まさか……嫌だとか、それはないよ」
林さんが赤くなった。
優は自分が身体を許す初めての人は、この人がいいと思った。
中西社長の愛人になるのは仕方がないとしても、せめて初めて抱かれる相手は自分で選びたかった。
「じゃあ、どうぞお願いします」
優はまるで、そういうことに慣れているふうを装った。
「えっと、二十歳超えてるよね……」
優はコクリと頷く。いまさらその確認?
「林さんお願いですから、僕を抱いてください……」
はっきり意志を伝える。完璧な据え膳状態を作り、林さんのガードを崩しにかかる。
「わかった。じゃあ、するけど、その……後から訴えたりしないでね」
流石この人、法律に携わっているだけあって、合意の上での行為だと確認してくる。
「お金でするとかじゃないから、それだと買春だから犯罪ね。わかる?」
ああ、もういい加減……抱いて欲しい。
煮え切らない林さんの上にかぶさるように、優はその身体を押し倒した。
林さんの唇を奪う。ミントの味がした舌を強引にさし入れると林さんも答えるように、熱くその舌を絡めとる。
肌の重なっている部分が熱く反応している。
優は”お願い!気付かないで”という願い一心で性急に事を済ませてしまいたかった。
まるでΩの自分から襲っているかのように、早く早くと林さんにせっついた。
まだほとんど準備もできていないまま強引に事が進んだ。
案の定、強烈な痛みが、優の後ろの部分を襲ったが、歯を食いしばって耐えるしかなかった。
痛いと声に出してしまうと行為がストップしてしまうのを恐れて、目じりに涙を浮かべながら林さんにしがみ付いた。
せめてちゃんと準備してから、入れればよかったものを勢いに任せてしまったので。林さんもかなり動揺していたのかもしれない。一応ゆっくりと動かしてはくれたものの、キツイ入口に林さんが息をのんだのがわかった。
痛いし辛い。そんな記憶と共に優はーー初めてーーを失った。
どれくらい時間が経ったのだろう。林さんは絞ったタオルを温めて、そして優の下腹部をぬぐってくれていた。
「なんで、言わなかったの?初めてだったよね」
悲哀に満ちた顔で、すまなさそうに、彼は言った。
「……」
優は何も答えなかった。
自分に残されたものはもうこの身体ひとつだけだ。それを使ってこれから何とか生き延びなければならない。
「……僕なんかに……というか、もっとちゃんとしてあげられたのに……ごめんね」
林さんは優の裸の肩に寒くないように毛布を掛けてくれた。
「……」
思いやりのある優しい態度に、優は、この人は幸せな人なんだなと思った。
きっと世の中の汚いものなんて今まで見たこともなければ触ったことすらないんだろう。
「大丈夫、もう、しないから……」
林さんはそう言って、優の髪を撫でた。
「シャワーを浴びたかったらどうぞ好きに使って。僕はソファーで寝るから君はここを使ってくれて構わない」
彼はそういって部屋を出ていってしまった。
優は林さんに迫っていた。服を脱いで彼に抱いてもらうつもりでいる。
「でも、何も返すものがないので……」
10万円をポンと渡してくれた林さんに自分が渡せる物はこの身体だけだ。
「別にお返しとか望んでいるわけじゃないから」
林さんは本気で拒否しようとしている。
「……その、僕とじゃ、嫌でしょうか?」
まさか自分が断られるなんて思ってもいなかった。この身体は30万円の価値があるんじゃなかったのか。中西さんは僕に30万の値段を付けた。もしかしてただの自惚れだったのか。
「まさか……嫌だとか、それはないよ」
林さんが赤くなった。
優は自分が身体を許す初めての人は、この人がいいと思った。
中西社長の愛人になるのは仕方がないとしても、せめて初めて抱かれる相手は自分で選びたかった。
「じゃあ、どうぞお願いします」
優はまるで、そういうことに慣れているふうを装った。
「えっと、二十歳超えてるよね……」
優はコクリと頷く。いまさらその確認?
「林さんお願いですから、僕を抱いてください……」
はっきり意志を伝える。完璧な据え膳状態を作り、林さんのガードを崩しにかかる。
「わかった。じゃあ、するけど、その……後から訴えたりしないでね」
流石この人、法律に携わっているだけあって、合意の上での行為だと確認してくる。
「お金でするとかじゃないから、それだと買春だから犯罪ね。わかる?」
ああ、もういい加減……抱いて欲しい。
煮え切らない林さんの上にかぶさるように、優はその身体を押し倒した。
林さんの唇を奪う。ミントの味がした舌を強引にさし入れると林さんも答えるように、熱くその舌を絡めとる。
肌の重なっている部分が熱く反応している。
優は”お願い!気付かないで”という願い一心で性急に事を済ませてしまいたかった。
まるでΩの自分から襲っているかのように、早く早くと林さんにせっついた。
まだほとんど準備もできていないまま強引に事が進んだ。
案の定、強烈な痛みが、優の後ろの部分を襲ったが、歯を食いしばって耐えるしかなかった。
痛いと声に出してしまうと行為がストップしてしまうのを恐れて、目じりに涙を浮かべながら林さんにしがみ付いた。
せめてちゃんと準備してから、入れればよかったものを勢いに任せてしまったので。林さんもかなり動揺していたのかもしれない。一応ゆっくりと動かしてはくれたものの、キツイ入口に林さんが息をのんだのがわかった。
痛いし辛い。そんな記憶と共に優はーー初めてーーを失った。
どれくらい時間が経ったのだろう。林さんは絞ったタオルを温めて、そして優の下腹部をぬぐってくれていた。
「なんで、言わなかったの?初めてだったよね」
悲哀に満ちた顔で、すまなさそうに、彼は言った。
「……」
優は何も答えなかった。
自分に残されたものはもうこの身体ひとつだけだ。それを使ってこれから何とか生き延びなければならない。
「……僕なんかに……というか、もっとちゃんとしてあげられたのに……ごめんね」
林さんは優の裸の肩に寒くないように毛布を掛けてくれた。
「……」
思いやりのある優しい態度に、優は、この人は幸せな人なんだなと思った。
きっと世の中の汚いものなんて今まで見たこともなければ触ったことすらないんだろう。
「大丈夫、もう、しないから……」
林さんはそう言って、優の髪を撫でた。
「シャワーを浴びたかったらどうぞ好きに使って。僕はソファーで寝るから君はここを使ってくれて構わない」
彼はそういって部屋を出ていってしまった。
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