「あんの愚弟ども!」次期皇帝は言った。~魔の森に飛ばされ城に戻る頃には、変な奴らばかり周りにいるんだが~

鈴白理人

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第五話 帰還仲間が増えた

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 ◇ ◇ ◇

 
 筆頭補佐官が加わった。仲間が増えたのはいいけど──  
 今は二人で、地道に帰還の道を歩いている真っ最中だ。

 ようやくちょびっとずつ増えてきた魔力を体力増強に使い、ワシワシと徒歩で進んでいる最中。
 乗り物になる生き物はいないのかな、ここ。
 乗りながらなら魔力を貯めることに集中出来るんだけど。

「筆頭補佐官、この森に移動に長けた生き物とかいないのかな。一番いいのはドラゴンなんだけど」
 しばらく筆頭補佐官は考え込んでいた。
「そうですね……馬に似た魔物や、空を飛ぶ生き物はいるようなのですが、魔力が元に戻った殿下のほうが速そうなのは否めません」

 元に戻るのに時間がかかるから聞いているんですよ。
「それと、空を飛べるドラゴンはこういう森には住みませんね。山の麓や山脈から探すしか……私が殿下を乗せて移動しましょうか?」

 ……は?

 ……今、何と?

 誰が、誰を? どうやって?

 
 真顔でじっとこっちを見つめてくる。どうやら冗談ではなさそうだ。

自分が筆頭補佐官におんぶされている絵面を想像して、瞬時に絶望した。  
 それはもう、全力で回避すべき未来だ。

「いや、そのような生物がいるかどうか聞いてみただけだ。魔力が一刻も早く戻るように努力するほうを優先する」
 本当に一刻も早く戻るように努力する。一刻も早く。恐ろしいことにならないように。

 筆頭補佐官はほんの一瞬、ものすごく残念そうな顔をしたが、すぐに表情を戻して口を開いた。

「殿下の髪、先ほどよりも驚く白さでは無くなっていますね。どちらでもお美しいですが」

「お? 自分じゃ分からないな。確かにさっきまでは真っ白だったが、今はちょっとグレーぽく? 赤みがかってる?」

 いや、よく見たらただの夕陽の反射だった。

「筆頭補佐官、そういやここ魔の森で合っているのかな」

「はい。間違いありません」

「魔の森って呼ばれてる理由は何だろう。やっぱり魔素が濃いから? でも、思ったよりも安全だよなここ」
「そうですね。魔素が濃いので、通常の動物も魔物になるからですかね」

 え? それ怖ない?

「それだと人間も魔物になってしまうんじゃあ?」

「ひと月ほど滞在したら変化があるかもしれませんが、アリアン殿下には三日というタイムリミットがあるのではないですか?」

 人間が魔物になるのは否定しないんだな……
「いや、試したいわけじゃないんだ。それにしても、魔の森って名前が名前だから、こう、もっと生物がいて、襲われるとかそういうことがあるのかと思っていたんだが……」

 とたんに筆頭補佐官の目が野獣のようにギラギラしだした。

 ……え? 私なんか言った?

「……他の生物に殿下が襲われるくらいなら、私が、先に殿下を襲います」

 ……は?

 え、それだとつまり──
 私には襲われる選択肢しか無いようだが?

 心持ち筆頭補佐官とは距離を置くことにした。
 物理的に。

 だが、そうすると少し離れるたびに、筆頭補佐官が何事もなかったかのように距離を詰めてくる。
「二人きりの旅は素晴らしいですね……」

 やめろ。耳元で囁くんじゃない。
 
 ……はぁ。
 離れようとするのは諦めることにした。
 繰り返されたら、変人がぴったりくっついてくる未来しか見えない。

 森歩きなのに、距離感おかしいからな?

 森は相変わらず静まり返り、足音や枯れ木を踏んだ音がやけに大きく響く。
 
「そろそろ野宿の場所を探して休みたいんだが」
「先程の話題から関連して休む殿下を想像すると、平常心を保つのが難しそうですが、じき真っ暗になりますからね。野宿に良い場所を探すとしましょう」


 ……今日はもう、精神的にめちゃくちゃ疲れた。  
 なんで徒歩で移動するだけで、ここまで神経をすり減らさねばならんのだ……

「殿下お疲れですか? 膝枕をご所望で?」
 黒曜石のような目が、妙に真剣にこちらを覗き込んでくる。

「……念のためどっちが膝枕……?」

「もちろん殿──」
「誰がするか! 早く寝る場所を探せ!」

「……そんな。殿下、そんな直接的な──」
 ……やめろ、何を言うつもりだ。もじもじするな!

「閨への誘いなど──」
「何でそうなった!」

 ああ、ほんとすぐにでも休みたい。切実に……

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