「あんの愚弟ども!」次期皇帝は言った。~魔の森に飛ばされ城に戻る頃には、変な奴らばかり周りにいるんだが~

鈴白理人

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第六話 野宿してたらなんか来た

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 その日の野宿は、近くに沼があり、木が密集していない場所で行うことにした。
 ちょうどいい具合の倒木もあり、椅子代わりになる。
 
 野宿の準備は全部筆頭補佐官がやってくれた。
 今までで一番この男が役に立つと思った。

 私はまだ魔力が戻っていないため、自由に物が入れられる空間魔法も使えず、どうしようもなく役立たずだ。
 おまけに一文無しなのが悲しい。とはいえ金はここでは一番役に立たないので要らないが。

 筆頭補佐官は、焚き火に大きな鍋をかけ水を入れてから、塩などの各種調味料、各種お野菜を空間から取り出して次々と細かく刻んでは鍋に放り込んでいく。
 包丁を持ってエプロン姿の見た目はともかく、ほんとに万能だなこの男。

 それにしても準備が万端過ぎないか? いつもあんなに野菜とか貯蔵しているんだろうか。

 筆頭補佐官が「見回りに行くついでに肉を調達してきます」と言って森へと姿を消した。

 彼がいなくなると、この森の静けさが圧倒的な迫力で迫ってくるかのようだ。
 虫の声ひとつしないし、風で木々が揺れて音を立てるわけでもない。

 ……まるで、音を吸い取られたような空間に思える。



 ……筆頭補佐官が離れてから、やけに視線を感じる。

 私が一人になったのを見計らって現れたのか。
 ……面白い。

 魔の森という名前のわりに、物騒な生き物がほとんどいなくて拍子抜けしていたんだが、やはり存在しているのか。

 木々の間から、白い生き物がゆっくりと姿を現した。

 ……!

 馬だ! 乗り物だ!

 期待と喜びで、思わずこっちから駆け寄ってしまうところだった。

 ただの馬ではない。
 絵物語に出てくるような、美しい白馬だ。

 だが──一本の角が生えていた。
 


 ……はぁ。

 一度期待してしまっただけに、落胆の深さもひとしおだ。

 ユニコーンなんて見た目に騙されがちだけど、あいつら……ただの神経質な処女厨なだけだかんな!?

 伝説級の生き物ではあるが、目撃例がしっかり書物に残っている。
 獰猛で荒々しい生き物ではあるが、乙女の前だと途端に大人しくなり、頭を預けてくることもあるという。
 そして乙女が囮として使われている場合は、まんまと捕まっちゃうという、ちょっとおバカさん……いやそれだけひたむきすぎるのか。
 
 乙女至上主義の処女厨。雄には即ケンカを売るらしいし。残念仕様だな。


 そう思っていると──馬の形からゆっくりと人の姿に変わっていく。

 ……いや遅い。遅すぎる。もっと早く変身しろって。

 しかも変身の途中で、しっかり全裸見せてくるのはどうかと思うんだけど。
 こいつ、見せ魔じゃないよな? 本当に大丈夫?

 最終的にはちゃんと服を着ていて、ちょっとだけホッとした。
 ジレ姿がよく似合っている。やや装飾過多だが、顔立ちが上品なのでむしろ映えている。絶妙なバランス感。

 ……全裸を見せられてなければ、全力で美しさを絶賛していただろう。

 世間一般的に羞月閉花? あ、それ美人のことか。
 兎にも角にも冴え冴えとした美形ではある。

【あなたと精を交わすために、人の姿になりました】

 ……いや、何それ!?

 そんな言葉あったっけ?
 種族差による言葉の壁があるはずなのに、ニュアンスはしっかり伝わってくる。
 すごくいかがわしい感じで!
 
「しれっと何言ってるん。やめろ?」

 そう言った途端、ユニコーンの顔がポッと赤くなった。

 ……なぜそこでお前が顔を赤らめる!?

 ユニ困──待てよ。まさかとは思うが……
(こいつ、筆頭補佐官と同じカテゴリーか?)

 いやいやいや! やめてくれ! この森にそんな連鎖反応いらんから!

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