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新たなる出発
懐かしい人との出会い
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「カタリーナさん、こちら、書簡の写しになります」
現実に引き戻すように、ダリオの声がすぐそばから聞こえた。
顔を上げると、彼が穏やかな表情で数枚の紙を手に差し出していた。
「ありがとう。助かるわ」
カタリーナは受け取りながら、微笑んだ。
それは仕事上のやりとりにすぎなかった。
けれど、ふと指先が触れた瞬間、どちらからともなく、わずかに目が合った。
言葉を交わすには短すぎる、けれど心の奥に残る、そんな一瞬。
ダリオは視線を逸らすことなく、小さくうなずいた。
「……昔とは、少し違うけど」
ぽつりとこぼした彼の言葉に、カタリーナは問い返すことはしなかった。
けれどその声には、優しさと、どこか懐かしさの滲む響きがあった。
「昔は、もっと不器用だったと思う。……今もかもしれないけど」
ダリオが少し照れたように目を伏せる。
「そうね。あの頃は……私も背伸ばかりしていた気がするわ」
カタリーナもまた、机の上の書簡を見つめながら微笑を返した。
数秒の沈黙。
けれどそれは、気まずさではなく、穏やかな間だった。
「もう少しだけ、話せる時間があったら」
ふいにダリオが口にした言葉に、カタリーナは目を見開いた。
「……ええ。私もそう思ってたところよ」
視線が再び重なり、今度はどちらも逸らさなかった。
その瞬間、時がほんの少しだけ止まったように感じた。
カタリーナの頬がわずかに紅潮する。
視線を交わしたまま、胸の奥がほんのり熱を帯びていくのがわかった。
「……昔と同じ目をしてるわね」
小さく、けれど確かに届く声で彼女が呟いた。
「君の笑い方も、あの頃と変わらない」
ダリオの声は、驚くほど柔らかくて、まるで思い出に触れるようだった。
「……そんなふうに、見てたの?」
「ずっと見てたよ。ずっと、忘れたことなんてなかった」
ダリオの言葉に、カタリーナの胸がぎゅっとなった。
一瞬だけ、何かが溶けて、ほどけて、心に灯がともるような感覚。
「……私もよ。忘れられるはず、なかった」
声がかすれる。
まるで、言葉にした瞬間、心の奥にしまっていた記憶が雪解けのように流れ出すかのようだった。
そこにあるのは、大人になった今だからこそ向き合える、再び芽吹いた想いだった。
「……今日の仕事が終わったら、少し時間ありますか?」
ふいにダリオがそう尋ねた。
カタリーナは驚いたように瞬きをして、けれどすぐに小さく微笑んだ。
「ええ。お茶くらいなら……ご一緒できるわ」
頬に、ほんのりと赤みが差す。
それは、昔と同じような誘いではなく──けれど、確かにあの頃の想いと繋がる、一歩だった。
終業後、カタリーナは人気のない小道を選んで、約束のカフェへと足を運んだ。
こうしてふたりでいるところを、職場の誰かに見られるのはまだ少し気恥ずかしい。
カフェの扉を開けると、すでに奥の窓辺の席でダリオが待っていた。
軽く手を挙げて微笑む彼の姿に、カタリーナは胸の奥がふっと温かくなるのを感じた。
「ごめんなさい。お待たせして」
「いや、俺が早く着きすぎただけです」
ふたりは笑い合い、静かに向かい合って椅子に腰を下ろした。
運ばれてきた紅茶にひと息ついた頃、ダリオがふと視線を落としながら口を開いた。
「……あの頃、俺の消息が途絶えたって、聞いたって言ってたよね。どれだけ心配をかけたか……本当に、辛い思いをさせた」
その声には、謝罪とも祈りともつかない静かな響きがあった。
カタリーナはカップをそっと置き、少しだけ間を置いてから、ゆっくりと答えた。
「忘れたくても、忘れられなかったの。
毎日、あなたのことを思いながら生きてた……そんな日々だったわ」
ダリオの琥珀色の瞳が、ほんのわずかに揺れた。
その奥に、たしかな感情が静かに広がっていくのが見えた。
現実に引き戻すように、ダリオの声がすぐそばから聞こえた。
顔を上げると、彼が穏やかな表情で数枚の紙を手に差し出していた。
「ありがとう。助かるわ」
カタリーナは受け取りながら、微笑んだ。
それは仕事上のやりとりにすぎなかった。
けれど、ふと指先が触れた瞬間、どちらからともなく、わずかに目が合った。
言葉を交わすには短すぎる、けれど心の奥に残る、そんな一瞬。
ダリオは視線を逸らすことなく、小さくうなずいた。
「……昔とは、少し違うけど」
ぽつりとこぼした彼の言葉に、カタリーナは問い返すことはしなかった。
けれどその声には、優しさと、どこか懐かしさの滲む響きがあった。
「昔は、もっと不器用だったと思う。……今もかもしれないけど」
ダリオが少し照れたように目を伏せる。
「そうね。あの頃は……私も背伸ばかりしていた気がするわ」
カタリーナもまた、机の上の書簡を見つめながら微笑を返した。
数秒の沈黙。
けれどそれは、気まずさではなく、穏やかな間だった。
「もう少しだけ、話せる時間があったら」
ふいにダリオが口にした言葉に、カタリーナは目を見開いた。
「……ええ。私もそう思ってたところよ」
視線が再び重なり、今度はどちらも逸らさなかった。
その瞬間、時がほんの少しだけ止まったように感じた。
カタリーナの頬がわずかに紅潮する。
視線を交わしたまま、胸の奥がほんのり熱を帯びていくのがわかった。
「……昔と同じ目をしてるわね」
小さく、けれど確かに届く声で彼女が呟いた。
「君の笑い方も、あの頃と変わらない」
ダリオの声は、驚くほど柔らかくて、まるで思い出に触れるようだった。
「……そんなふうに、見てたの?」
「ずっと見てたよ。ずっと、忘れたことなんてなかった」
ダリオの言葉に、カタリーナの胸がぎゅっとなった。
一瞬だけ、何かが溶けて、ほどけて、心に灯がともるような感覚。
「……私もよ。忘れられるはず、なかった」
声がかすれる。
まるで、言葉にした瞬間、心の奥にしまっていた記憶が雪解けのように流れ出すかのようだった。
そこにあるのは、大人になった今だからこそ向き合える、再び芽吹いた想いだった。
「……今日の仕事が終わったら、少し時間ありますか?」
ふいにダリオがそう尋ねた。
カタリーナは驚いたように瞬きをして、けれどすぐに小さく微笑んだ。
「ええ。お茶くらいなら……ご一緒できるわ」
頬に、ほんのりと赤みが差す。
それは、昔と同じような誘いではなく──けれど、確かにあの頃の想いと繋がる、一歩だった。
終業後、カタリーナは人気のない小道を選んで、約束のカフェへと足を運んだ。
こうしてふたりでいるところを、職場の誰かに見られるのはまだ少し気恥ずかしい。
カフェの扉を開けると、すでに奥の窓辺の席でダリオが待っていた。
軽く手を挙げて微笑む彼の姿に、カタリーナは胸の奥がふっと温かくなるのを感じた。
「ごめんなさい。お待たせして」
「いや、俺が早く着きすぎただけです」
ふたりは笑い合い、静かに向かい合って椅子に腰を下ろした。
運ばれてきた紅茶にひと息ついた頃、ダリオがふと視線を落としながら口を開いた。
「……あの頃、俺の消息が途絶えたって、聞いたって言ってたよね。どれだけ心配をかけたか……本当に、辛い思いをさせた」
その声には、謝罪とも祈りともつかない静かな響きがあった。
カタリーナはカップをそっと置き、少しだけ間を置いてから、ゆっくりと答えた。
「忘れたくても、忘れられなかったの。
毎日、あなたのことを思いながら生きてた……そんな日々だったわ」
ダリオの琥珀色の瞳が、ほんのわずかに揺れた。
その奥に、たしかな感情が静かに広がっていくのが見えた。
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