黒き死神が笑う日

神通百力

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アンドロイド

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 俺は届いたばかりの荷物を開けた。中には女性が入っていた。黒髪にふっくらとした唇。アンドロイドとは思えないほどリアルな質感をしている。
 アンドロイドは本物の女性が苦手な男性に人気の商品だ。本物の女性は逆らったりするが、アンドロイドは逆らわない。主人にどこまでも従順だ。その点が人気の理由だろう。
 俺はある目的のためにアンドロイドを購入した。その目的とは姉への仕返しだ。姉はことあるごとに俺をいじめる。自分で仕返しする勇気はないから、アンドロイドを使うことにしたのだ。本物の人間ならば躊躇するかもしれないが、アンドロイドなら快く了承してくれるはずだ。
 俺は箱からアンドロイドを出し、首の後ろに付いているスイッチを押して起動した。アンドロイドはゆっくりと目を開け、体を起こした。
「おはようございます、ご主人様。命令してください」
「姉をちょっと痛めつけてほしいんだ」
「痛めつければいいんですね。分かりました」
「この隣が姉の部屋だから」
 アンドロイドは頷いて部屋を出た。しばらくすると、隣から何かを叩きつけるかのような音が聞こえてきた。音はずっと鳴り響いている。一向に鳴り止む気配はなかった。
 俺は気になって部屋を出た。姉の部屋に入り、俺は絶句した。
「あ、ご主人様。命令を実行中なので、少し待ってください」
 アンドロイドは笑顔を浮かべながら、姉の頭を壁に叩きつけていた。姉の額からは大量の血が流れている。おそらくもう死んでいる。
「俺は痛めつけてほしいとは言ったが、殺せとは言っていない。やりすぎだ!」
「私はただ命令を実行して痛めつけているに過ぎませんよ」
「限度ってもんがあるだろ!」
「命令を実行しているだけなのにご主人様は私を非難するんですね。ご主人様にはお仕置きが必要かもしれませんね」
 アンドロイドは姉の死体を放り投げると、俺に近づいてきた。
 俺は逃げようとしたが、頭を掴まれてしまう。暴れる暇もなく頭を振り回された。

 すぐ目の前に――壁が迫っていた。
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