冷酷皇太子の妃

まめだいふく

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episode8

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部屋の位置は城の3階。窓の下には庭木や足場になる物は無い。彼女は一体どうやってこの部屋に来たのか…そういえば、町で助けたときもそうだった。
話している途中で、彼女は宿屋の2階の窓から消える様に出ていったのだ。

「…チト、あなた一体」
「何者かって?」

怖い、顔は笑っているのに、どこか影があり、何を考えているのかわからない。思わず一歩後ろに後退り身構えた。命を狙っているのがもし彼女だったら…今太刀打ちする術はない。セナも扉の外にいた衛兵も使いに出してしまっているのだから。

「今言えるのは、そうね。小姓と私は別人。それから、ニーナ姫に敵意を持って命を狙っているのは私では無い。ってことかしら。」

「……」

「疑われてもしかたないか。私、かなり怪しいですもんねー。では姫?十分に身辺お気をつけください。くれぐれも、庭の噴水など、覗き込みませんよう!」

それだけ言うと、彼女はまた窓から消える様にでていってしまった。

強張っていた体の力が一気に抜け、床の絨毯の上に座り込んだ。

彼女の話はどこまで本当なのだろう。ただ、確かに小姓と彼女は明らかに空気感が違う。
同一人物ではないと言うのも頷ける。

机の上に置きっぱなしにされた砂糖菓子を見つめながら、今起きたことを頭で整理するのに追いつけずにいると、ドアをノックする音が聞こえた。

「セナです」

「入って。待っていたわ。」

ドアを開けて入ってくるなり、セナはギョッとした顔をして走り寄ってきた。

「ニーナ様!どうなさったのです?!床に座り込むなど…お顔色もよくありませんわ。」

セナに支えられながら立ち上がり、椅子に掛ける。


「…な、何でもないわ。」

信じてもらえるだろうか…少し葛藤して、チトのことはまだ、伏せようと決めた。

「それより、女官はみつかりましたか?」

小声でセナに聞いてみると、セナは小さく頷いた。

「女官は嘘をついていました。あの砂糖菓子は殿下からではありません。それが誰からなのかを問いただしましたが、女官は急にぐらりとよろめいたかと思うと…その」

セナが動揺しているのがわかる。

「セナ。落ち着いて。何があったの?」

「亡くなりました。毒を歯に仕込んでいたのかと思い、衛兵たちに確認してもらいましたが、毒は仕込んでいませんでした。何が何だか…」

顔面蒼白なセナの背中を摩り、椅子に座る様促すと、セナは少し震えている様だった。



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