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エドワード17歳、二重猫かぶり王子期②
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「ああ、その話ですか。クリス殿下がセネーバ王家と向こうの学校にずっと交渉してくださってたのが、ようやく実現したんですよ。最終学年を向こうで過ごすことになりますが、卒業試験さえ合格すれば卒業させてくれるということなので。【国境の守護者】としては、セネーバ国がどのような状況なのか、ちゃんとこの目で確かめなければなりませんからね。当然志願しました」
ちなみにジェフこと、ジェフリーは、クリスのデカゴツ護衛騎士にして側近な。
オレンジ色の髪でいつも顔は笑ってんのに、この四年間でひとっ言も喋った姿見たことねぇの。何か言葉に特別な力が宿ってて他人の精神に干渉してしまうらしく、何か伝えたい時はパソコンで打ったんかってくらいめちゃくちゃ綺麗な筆談で伝えてくんだわ。その癖クリスにだけは耳打ちして会話してるから、得体が知れなくて怖ぇんだよ。主従揃って。
「な、なんで事前に俺に相談してくれなかったんだよ! エドワードが行くなら、俺だって……!」
「ブラッドはあまり獣人を好いてらっしゃらないでしょう? それに留学の枠は三人だけでしたし」
パトリオット公爵家は、クリスの母親の実家の公爵家とはライバル関係にあって、第二王子派であることを示す為に一家揃ってドリフィス教に入信している。
とは言っても表向きだけで本当に信仰しているかは怪しいし、ブラッドリー自身は別にクリスに対して忌避感とかはなく、寧ろ気さくに接してくれるクリスにもまあまあ懐いているのだが、獣人に対して少なからず嫌悪感を抱いていることは既に確認済み。そんな奴を留学させたら、国際問題になることは間違いないので本決まりになるまで敢えて伝えなかった。……こいつが特別親しい友人が、俺とクリスしかいないことを考えれば、こうなるのも想定内だしな。
「そんなの、親父に言えば何とでもなった!」
……出た。不良ぶってる癖に、甘ったれたお坊ちゃん特有の発言。
パトリオット公爵家は、遅くにできたブラッドリーのことを一家全体で溺愛してて、素行が悪かろうが冒険者に憧れようが、温かく見守ってめちゃくちゃ甘やかしている。三男だから家を継ぐわけでもないしな。
幸せな家庭に育った故の子どもらしさを可愛らしくも思う半面、毒親育ちの俺からすればしばしば腹が立つ。
実父が正妃の暗殺未遂を黙認しているクリスからすれば、なおさらだろう。天然なふりをして、チクチクいじめてるのたまに見るし。
「それでももう、決まったことですから。ブラッドと離れるのは辛いですが、私は辺境伯家の嫡男としての義務を果たさなければなりません。王族であるクリス殿下ならなおのことです」
……おっと、言外に「三男で気楽なお前とは違うんだよ」と嫌味っぽくなったかな。まあ、こいつなら気づかんか。
懐いた血統書付きのツンデレわんこみたいでかわいいのは本音なんだが、いかんせん馬鹿犬だからな。流石にセネーバでまでは面倒みきれん。
この四年間で対人関係の諸々はある程度軌道修正してやったし、どうせ俺達がいなくなったら公爵が手を回してイエスマンの友人近づけさせるだろうしな。ブラッドリーが勝手に俺達と仲良くなったせいで、第二王子派の学友を近づけさせられないことを苦々しく思ってたことを知ってたし。少なくとも、さみしい一年間を送ることはないだろ。
ちなみにうちのクソ親父は俺の留学を諸手をあげて賛成してます。……まあ、敵情視察にはうってつけだからな。
「なんでだよ! んなの王族であるクリスが行けば十分だろ! エドワードが行くことない! お前みたいな華奢で綺麗な奴が獣人国に行ったら、即犯されて孕まされるに決まってる!」
「……あなた、それ、私の戦闘能力身に沁みて知ってて言います?」
授業で俺に一度も勝てたことがない癖に。
てか、俺よりクリス心配しろよ。
あいつ魔法や魔力、頭の回転は俺以上だけど、フィジカル面では幼児なみだぞ。俺は全く心配してないけど、俺より心配されて然るべきだろう。
「それに万が一孕まされたら孕まされたで、セネーバとの交渉材料にできますから」
留学先は男子(てか、雄?)校。男に犯されて孕まされるなんて絶対ごめんだが、その時はその時で何かしらの交渉材料にすることはクリスと事前シミュレーション済み。
俺達を犯せる時点で、かなりの魔力持ちか賢い奴なのは間違いないしな。利用するだけ利用してやるよ。そん時は。
「……おっと」
不意にブラッドリーが首元から手を放したので、俺は華麗に体勢をなおした。
怪訝と見上げると、頭半分ほど上のあたりでワナワナと唇を震わせる駄犬……じゃねぇ。ブラッドリーの姿が。
「……なんだそれ……ずるい」
「…………は?」
「俺だって……俺だって、獣人の生殖能力があれば……!」
ちなみにジェフこと、ジェフリーは、クリスのデカゴツ護衛騎士にして側近な。
オレンジ色の髪でいつも顔は笑ってんのに、この四年間でひとっ言も喋った姿見たことねぇの。何か言葉に特別な力が宿ってて他人の精神に干渉してしまうらしく、何か伝えたい時はパソコンで打ったんかってくらいめちゃくちゃ綺麗な筆談で伝えてくんだわ。その癖クリスにだけは耳打ちして会話してるから、得体が知れなくて怖ぇんだよ。主従揃って。
「な、なんで事前に俺に相談してくれなかったんだよ! エドワードが行くなら、俺だって……!」
「ブラッドはあまり獣人を好いてらっしゃらないでしょう? それに留学の枠は三人だけでしたし」
パトリオット公爵家は、クリスの母親の実家の公爵家とはライバル関係にあって、第二王子派であることを示す為に一家揃ってドリフィス教に入信している。
とは言っても表向きだけで本当に信仰しているかは怪しいし、ブラッドリー自身は別にクリスに対して忌避感とかはなく、寧ろ気さくに接してくれるクリスにもまあまあ懐いているのだが、獣人に対して少なからず嫌悪感を抱いていることは既に確認済み。そんな奴を留学させたら、国際問題になることは間違いないので本決まりになるまで敢えて伝えなかった。……こいつが特別親しい友人が、俺とクリスしかいないことを考えれば、こうなるのも想定内だしな。
「そんなの、親父に言えば何とでもなった!」
……出た。不良ぶってる癖に、甘ったれたお坊ちゃん特有の発言。
パトリオット公爵家は、遅くにできたブラッドリーのことを一家全体で溺愛してて、素行が悪かろうが冒険者に憧れようが、温かく見守ってめちゃくちゃ甘やかしている。三男だから家を継ぐわけでもないしな。
幸せな家庭に育った故の子どもらしさを可愛らしくも思う半面、毒親育ちの俺からすればしばしば腹が立つ。
実父が正妃の暗殺未遂を黙認しているクリスからすれば、なおさらだろう。天然なふりをして、チクチクいじめてるのたまに見るし。
「それでももう、決まったことですから。ブラッドと離れるのは辛いですが、私は辺境伯家の嫡男としての義務を果たさなければなりません。王族であるクリス殿下ならなおのことです」
……おっと、言外に「三男で気楽なお前とは違うんだよ」と嫌味っぽくなったかな。まあ、こいつなら気づかんか。
懐いた血統書付きのツンデレわんこみたいでかわいいのは本音なんだが、いかんせん馬鹿犬だからな。流石にセネーバでまでは面倒みきれん。
この四年間で対人関係の諸々はある程度軌道修正してやったし、どうせ俺達がいなくなったら公爵が手を回してイエスマンの友人近づけさせるだろうしな。ブラッドリーが勝手に俺達と仲良くなったせいで、第二王子派の学友を近づけさせられないことを苦々しく思ってたことを知ってたし。少なくとも、さみしい一年間を送ることはないだろ。
ちなみにうちのクソ親父は俺の留学を諸手をあげて賛成してます。……まあ、敵情視察にはうってつけだからな。
「なんでだよ! んなの王族であるクリスが行けば十分だろ! エドワードが行くことない! お前みたいな華奢で綺麗な奴が獣人国に行ったら、即犯されて孕まされるに決まってる!」
「……あなた、それ、私の戦闘能力身に沁みて知ってて言います?」
授業で俺に一度も勝てたことがない癖に。
てか、俺よりクリス心配しろよ。
あいつ魔法や魔力、頭の回転は俺以上だけど、フィジカル面では幼児なみだぞ。俺は全く心配してないけど、俺より心配されて然るべきだろう。
「それに万が一孕まされたら孕まされたで、セネーバとの交渉材料にできますから」
留学先は男子(てか、雄?)校。男に犯されて孕まされるなんて絶対ごめんだが、その時はその時で何かしらの交渉材料にすることはクリスと事前シミュレーション済み。
俺達を犯せる時点で、かなりの魔力持ちか賢い奴なのは間違いないしな。利用するだけ利用してやるよ。そん時は。
「……おっと」
不意にブラッドリーが首元から手を放したので、俺は華麗に体勢をなおした。
怪訝と見上げると、頭半分ほど上のあたりでワナワナと唇を震わせる駄犬……じゃねぇ。ブラッドリーの姿が。
「……なんだそれ……ずるい」
「…………は?」
「俺だって……俺だって、獣人の生殖能力があれば……!」
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