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今世姉と私

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 ……やった! 父さんに好きって言われた!
 血まみれでも分かるくらい、口元引きつってるけど、気にしない!

『鶏さんがかわいそうだから、食べられない』
 そんな風に泣いてハンストする時代は、前世のごくごく幼い頃に過ぎ去りました。

 生きることは、命を奪うこと。自分で手をくださなくても、何かを食べてる時点で同罪なのだ。

 ピィ子は、その短い人生を強く生きた。ならば、彼と(うっかり子とつけてしまったが、奴は雄だ)戦い続けた私は、責任持ってその肉を食らわねばならない。

 ……まあ、あと単純に、コカトリスのお肉って美味しいんだよね。
 よく動くから、シャモみたいに身が引き締まってて、旨みがギュッと詰まってるの。
 尾っぽの蛇の部分も、また味わいが違ってよきかな。前世では、流石に爬虫類は食べなかったんだけど、鶏部分と繋がっていると思ったら、わりと抵抗なく食べれたよ。あの瞬間、確かに私は一歩大人の階段上ったね。

「とりあえず俺はシャワー浴びて、血を流してくるから。リッカは先に朝ごはん食べて、少し休んでてくれ。その後で、また手伝ってもらいたいことがあるから」

「うん。分かった。……あ、でもその前に、父さん。この卵、規格外だと思うんだけど、朝ごはんに食べていい?」

「規格外でも、最近はコカトリスの卵ならいくらでも買い手はつくけど、リッカが食べたいなら良いよ。持ってきな」

「わあい、ありがとう! なら、母さんか姉さんに卵焼きにしてもらうから、父さんもシャワーから出たら、食べてね」

 小さめの……それでも、小ぶりなメロンくらいの大きさはあるけど……卵をいそいそと抱いて、ダイニングへ向かう。
 近づくにつれて、スープの良い匂いが漂って来て、思わず口元が緩んだ。

「ただいまー。スープ、良い匂いするね。ピィ子の骨を使ったの?」

「……おかえりなさい。リッカ。貴女は、相変わらずね。でも、骨からスープをとるには時間がなかったから、まだよ。父さんが小分けにして持ってきてくれたお肉なら、少し入れたけど」

 苦笑を浮かべながらも、姉さんはスープを皿に持ってくれた。
 
 ……ああ。姉さん。今日も相変わらず、儚げで綺麗だ。

「朝から動き回って、お腹空いたでしょう。先にスープを食べてて。今からパンを焼くから」

「ありがとう。姉さん。……ああ、そうだ。この卵、焼いてくれる?」

「あら、産みたての卵を持ってきてくれたのね。今、パンと一緒に焼いちゃうから、少し待ってて」
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