処刑された王女は隣国に転生して聖女となる

空飛ぶひよこ

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連載2

決戦の時6

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 なるほど。似合わないおべんちゃらも、ルイス陛下が彼に私の治癒を受け取る許可を出したのも、全てこの為だったのか。
 胸の奥の方が、すっと冷えるのがわかった。
 問いかけには答えず、ただまっすぐにエイドリーを見据える。

『……顔の傷、ずいぶん増えましたね』

『え?』

『すぐに私に見せていただければ、その傷は半分で済んだでしょうに』

 私の言葉の意味をはかりかねているかのように、エイドリーはあちこちに視線を彷徨わせてから、頬の一際大きな傷がある辺りを指でかいた。

『俺は男ですから、傷が一つや二つ増えようと気にしません。……それに』

『それに?』

『この傷は……俺の【勲章】ですから』

 そう言って、エイドリーはほんの少しだけ口もとを緩ませた。
 エイドリーにとって、顔の傷はルイス陛下を守れた証明であり、誇りなのだろう。
 ルイス陛下の一番近い場所で仕える護衛騎士として、その回答はきっと正しい。

 ……けれど。

『……貴方がルイス陛下の騎士として譲れないものがあるように、私も聖女として譲れないものがあるのですよ」

『アシュリナ、様?』

 私はスカートの裾をそっと持ち上げると、エイドリーに向かってそのまま一礼してみせた。

『せっかくのご提案ですが、お断りさせていただきます。聖女の癒しの力は、万人に向けて行使されるべきもの。ルイス陛下の為だけに使うことはできません』

 話した機会は二度だけだけど、私はエイドリーのことを特別悪い人間だとは思っていない。彼はただ、盲目的にルイス陛下に忠実なだけ。
 それでも彼がルイス陛下の為に剣をふるっているのに対し、私は万人の為に力を行使続けている以上、私と彼はけして相容れない。
 正しいとか間違っているとかの問題ではなく、ただ、それぞれが胸に抱く正義の在り方が違うのだ。

『さあ、腕の治療は終わりました。これで明日からは今まで通りに手を動かせるようになるでしょう』

『アシュリナ様!』

『それでは、エイドリー様。どうぞお帰りください』 

『待ってください……アシュリナ様。俺の話をっ』

『……っ!』  

 エイドリーから突然腕をつかまれたことで体勢をくずし、そのまま床に投げ出されそうになった。

『……アシュリナ様! 大丈夫ですか?』

 そして次の瞬間、私はエイドリーの腕の中にいた。

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