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第6話
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初めてに近い感じで、ファストフード店に入った。
綺麗な内装で、でも、とても落ち着きのあるいい店だと思った。
「人間は、いいものを作るなあ」
と、呟くと神原さんは、クスッと笑う。
「あんただって、人間だろ?」
「あ、まあ。いや、人間と言っていいのか? 俺は、永く生きるものだぞ?」
「うん、人間て言っていいと思うよ」
「どうして?」
化け物だといってくれても結構なのだが。
不思議に思って、じぃっと神原さんを見ていると。
神原さんは、少し恥ずかしそうに「見るな」と言う。
「あんた、じぃって見るのやめてよね」
「え? なんで?」
「凄ぜか 、恥ねです」
「え、何語」
どうした、どうした。
「神原さん?」
「いや、もう。なんてかさ、」
「?」
「早よ食べて、帰ろうか」
「うん」
俺は、小さく頷いてレジの方に向かった。
▲
女性的で、でも、男性的な。
そんな百鬼さんと、一緒にいると。
不思議と、恋人になった気分になる。
前世の俺は、百鬼さんのことをどう思っていたのだろう。
普通に、上司として慕っていたのか。
それとも、別の何かが。
「なわけあるか」
アホらしい、と俺は笑って百鬼さんを見る。
彼は、美味しそうにチキンバーガーを食べる。
両手で大事そうに持って、はむはむと食べる。
髪が邪魔なのか、少し不機嫌そうに髪を後ろに結んでいるのを、
ふと、見て。
「あのさ」
と、声をかける。
「どうして、髪切らないんすか?」
「噛みきる?」
「違う。散髪ですよ」
「ああ、んっとね。みんなが、わかるように切らないでおいてんの」
「え?」
「まあ、前世の記憶があるのを前提にしちゃっているけど。でもさ、もし、みんな覚えていてさ、それで……」
「? 百鬼さん?」
「ううん、なんでもない」
百鬼さんは、ニコッと笑って俺を見る。
「何も変わらない、俺がいたら。安心するでしょう?」
「え…、百鬼さ――」
「はい、おしまい」
「えっ」
「もう、食べちゃったし。そろそろ帰らないと、優馬が……」
そう言った、百鬼さんは、とても怯えていた。
だから。
思わず、手をとって。
「何か、あったんだろ?」
と、訊いてしまったんだ。
訊くつもりなんて――なかったのに。
百鬼さんは、瞠目して「あ、」と言う。
「人って、変わってしまうんだね」
†
たまには、僕も買い出しをしよう。
いつも、愁哉にやらせるなんて良くないからね。
そう思って、部屋を出た。
外に出るのは、久しぶりで。
空気が悪くて、咳き込んでいると。
ファストフード店で見覚えのある人を見た。
というか、愁哉だった。
「あれ?」
隣にいるのは、誰?
どうして、親しげに僕の愁哉といるの?
僕の愁哉に触るの?
やめてよ。
やめて、やめて、やめてっ!!!
「なんで――」
僕は、そう呟いて、その場を去った。
僕がいるのに、他の男といるなんて。
そんなの、絶対許せないから。
許せないんだから。
初めてに近い感じで、ファストフード店に入った。
綺麗な内装で、でも、とても落ち着きのあるいい店だと思った。
「人間は、いいものを作るなあ」
と、呟くと神原さんは、クスッと笑う。
「あんただって、人間だろ?」
「あ、まあ。いや、人間と言っていいのか? 俺は、永く生きるものだぞ?」
「うん、人間て言っていいと思うよ」
「どうして?」
化け物だといってくれても結構なのだが。
不思議に思って、じぃっと神原さんを見ていると。
神原さんは、少し恥ずかしそうに「見るな」と言う。
「あんた、じぃって見るのやめてよね」
「え? なんで?」
「凄ぜか 、恥ねです」
「え、何語」
どうした、どうした。
「神原さん?」
「いや、もう。なんてかさ、」
「?」
「早よ食べて、帰ろうか」
「うん」
俺は、小さく頷いてレジの方に向かった。
▲
女性的で、でも、男性的な。
そんな百鬼さんと、一緒にいると。
不思議と、恋人になった気分になる。
前世の俺は、百鬼さんのことをどう思っていたのだろう。
普通に、上司として慕っていたのか。
それとも、別の何かが。
「なわけあるか」
アホらしい、と俺は笑って百鬼さんを見る。
彼は、美味しそうにチキンバーガーを食べる。
両手で大事そうに持って、はむはむと食べる。
髪が邪魔なのか、少し不機嫌そうに髪を後ろに結んでいるのを、
ふと、見て。
「あのさ」
と、声をかける。
「どうして、髪切らないんすか?」
「噛みきる?」
「違う。散髪ですよ」
「ああ、んっとね。みんなが、わかるように切らないでおいてんの」
「え?」
「まあ、前世の記憶があるのを前提にしちゃっているけど。でもさ、もし、みんな覚えていてさ、それで……」
「? 百鬼さん?」
「ううん、なんでもない」
百鬼さんは、ニコッと笑って俺を見る。
「何も変わらない、俺がいたら。安心するでしょう?」
「え…、百鬼さ――」
「はい、おしまい」
「えっ」
「もう、食べちゃったし。そろそろ帰らないと、優馬が……」
そう言った、百鬼さんは、とても怯えていた。
だから。
思わず、手をとって。
「何か、あったんだろ?」
と、訊いてしまったんだ。
訊くつもりなんて――なかったのに。
百鬼さんは、瞠目して「あ、」と言う。
「人って、変わってしまうんだね」
†
たまには、僕も買い出しをしよう。
いつも、愁哉にやらせるなんて良くないからね。
そう思って、部屋を出た。
外に出るのは、久しぶりで。
空気が悪くて、咳き込んでいると。
ファストフード店で見覚えのある人を見た。
というか、愁哉だった。
「あれ?」
隣にいるのは、誰?
どうして、親しげに僕の愁哉といるの?
僕の愁哉に触るの?
やめてよ。
やめて、やめて、やめてっ!!!
「なんで――」
僕は、そう呟いて、その場を去った。
僕がいるのに、他の男といるなんて。
そんなの、絶対許せないから。
許せないんだから。
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