愛縁奇祈

春血暫

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愛縁奇祈

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「やっと見つけた。二人とも」

 愁ちゃんの声で、あたしは泣きそうになった。

 来てくれなかった、どうしようかと思っていたから。
 でも、来てくれた。
 来てくれたんだ。

「愁ちゃん!!」

「兄ちゃん!!」

 あたしとひぃちゃんは、涙目になって愁ちゃんを見る。
 愁ちゃんは「お待たせ」と笑ったけど。
 どこか、悲しそうだった。

 何か、あったのだろうか、と思ったけど。
 その答えはすぐにわかった。

 だって、愁ちゃんの目の回りは赤くなっていたから。

 それで、文音ちゃんの身に何が起きたかは、察した。

「愁ちゃん」

「文音は、殺されたよ」

「っ」

「けど、あいつ、すごいな。死ぬ直前に『生きて』て言ったんだよ。私に向かってさ」

「……文音ちゃん、らしいなあ」

 彼女、優しいから。
 そして、強くて、かっこいいから。

「なんか、すごいよ」

「うん。だから、さ。ここから、逃げよう」

「うん」

 そうだね。
 文音ちゃんの分まで、生きないと。

 あたしとひぃちゃんが頷くと、愁ちゃんはあたしたちの身体を縛る縄を解く。

「立てる?」

「うん、なんとか」

 と、あたしは言う。
 だけど、ひぃちゃんは、うまく立てないみたいだった。
 愁ちゃんは「乗りな」とひぃちゃんを負ぶる。

「行くよ」

 と、愁ちゃんは背中に乗せたひぃちゃんを右手で支えて、左手であたしの手を取った。
 あたしは大きく「うん」と頷いた。

 そして、蔵(のようなところ)を出ると、たくさんの町の人がいた。
 彼らはあたしたちを見る。

「出たな、鬼め!」

「っくそ、構ってられん」

 愁ちゃんは、低い声で言い、彼らを睨む。

「退いてくれますか? 私たちは急いでいます」

「ふんっ。そうはいかん。美亞さまからのお告げがあった」

 そこの鬼の子、と町長はあたしを睨む。

「お前を火刑に処す」
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