愛縁奇祈

春血暫

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深雪の空

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「まさか、あそこで出会うなんて」

 と、愁哉は言う。

「吃驚したよ」

「そうだね。俺も吃驚した」

「うん。てか、何をするんだろう」

「さあ。そればっかりは、本人に聞かないとだね」

「うん」

 と、愁哉は頷いて、僕を見る。

「優馬、大丈夫?」

「へ? あ、うん。大丈夫! ちょっと、昔のこと、思い出してた」

「ユミコさん?」

「うん。なんかね、やっぱり愁哉に似てるんだよね」

「そうなの?」

「うん」

 と、僕は頷いた。

 ユミコさんは、とても優しくて、きれいな人。
 雰囲気とか、そういうのが、愁哉に似ている。

――ああ、会いたいな。ユミコさんに。

 と、呟くと、引馬さんが「左坤くん」と僕を見る。

「大丈夫かい?」

「え、あ、はい。全然大丈夫です」

「……そのユミコさんという方に会いたいんだね」

「え、あ、えっと、声に出てましたか!?」

「うん。ガッツリね」

「……なんか、もう、会えないのに。どうしようもなく、会いたくなってしまうんですよね」

 ははは、と僕が笑うと引馬さんは「無理しなくて良いよ」と笑う。

「そういうときはね、思いっきり甘えると良い」

「……良いんですかね」

「社長なら喜ぶと思うぞ。あの人は、もう、左坤くんのこと大好きだから」

「……うん。甘えてみよう、かな?」

 けど、甘えるってどうするんだろう。
 くっつけば良いかな。
 甘えたい、て言えば良いのかな。

 と、考えていると、引馬さんが僕を少し愁哉のところに押す。

「何も考えずに行きな」

「うん」

 と、僕は頷いて、愁哉に抱きついてみた。
 愁哉は、驚いていたけど。
 僕は、気にしないで。
 なんとなく。
 なんとなあく。

「ね、愁哉」

「ん?」

「甘えたい、的な」

「ンンンンン」

 愁哉は顔を隠して、僕に言う。

「無問題」
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