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愛しさにサヨナラ
もしかしてレズというやつ?
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怜子のアネキに対するベタベタ感はハンパない。
「ちょっと怜子…皆の前だから少し離れてよ」
アネキはマジで迷惑そうな顔をしているが、怜子は止めようとしない。
「いいじゃない、祐実ぃ~…寒いからくっついて暖まろう」
ボクは一緒に見られるのがイヤだと思い、距離を置いていたが、怜子の執拗さにある種の怖さを感じた。
(こりゃ、冗談じゃなくホンモノのレズだ)
ボクは二人の間に割って入った。
「腹減ったし、何処かで何か食わない?」
邪魔をされた怜子は少しムッとしていた。
「アタシ、今お腹空いてないし」
するとアネキは、
「じゃあ、何処か店に入ろうか?どの店がいいかなぁ」
と言ってボクの脇にピタッと付き、周囲を見渡した。
「じゃあ、祐実が行くならアタシも行く~」
怜子はまたアネキの腕を掴み、絡ませるように組んでいた。
ちょっとイッちゃてる…まるで蛇のように絡みつく。
蛇というか、アナコンダの方がしっくりくるかな。
「あの店に入ろう」
前方にちょっと洒落た感じの喫茶店を見つけた。
「あぁいいわね。あの店にしようか貴久」
アネキはそう言って喫茶店の中に入った。
そんな事より、僕を無理矢理初詣に誘ったのは、怜子と二人だけになるのがイヤだからって事?
「いらっしゃいませ~」
「3人なんですけど空いてますか?」
「はい、どうぞ奥へ」
店内は正月とあってか、かなりの客がいたが、ボクらは奥に空いていたテーブルに座った。
怜子はアネキの隣に座り、身体をピタッとくっついて離れない。
アネキはボクにSOSを送る眼差しをする。
いや、ちょっとアネキが嫌がってんすけど、少し離れてくれませんか?
…こう言えばいいのか?でもこの人、少しイッちゃてる感ハンパない!
下手な事言ったら、こっちが大変な目に遭いそうだ。
別に悪いことをしてるワケじゃないし、ボクが言ったところで、ちょっとやそっとじゃ離れないだろうし…
「あの…アネキとはよく遊んだりするんですか?」
わざとらしく、アネキの事を聞いた。
「うん、お姉ちゃんとは同じクラスで席も近いからいつも一緒にいるの」
何だ、この嬉しそうな表情は…満面の笑みを浮かべている。
背が高くモデルのような美形で、誰もが振り返る程の美人だ。
それが何故、アネキの様な背が低く、足がやや太い女を好きになるのだろうか?
アネキ、御愁傷様…
悪いが、この人には何も言えない…
アネキも観念して、アッチの世界でも元気でやってくれ…心で手を合わせた…
「あ、貴久タバコちょうだい」
アネキがくっつき過ぎて苛立ってきたのか、ボクにタバコをくれと催促する。
「何だよ、まだタバコ吸ってたのかよ!」
オフクロに見つかって以来、もう止めたもんだと思っていたのだが、まだ隠れて吸ってたのかよ…
「いいでしょ、一本ちょうだいよ」
ボクのラークマイルドを一本取って、火をつけた。
「え、祐実…タバコ吸うの?」
アネキがタバコを吸った途端、態度が急変する。
「ふぅ~、今までガマンしてたからタバコがウマイ!」
満足気な表情で紫煙を燻らす。
「祐実…ちょっと煙たいょ、タバコ止めて…」
怜子はタバコの煙が苦手なのか、物凄い拒絶反応を起こす。
じゃあ、オレも吸っちゃおう!
って事で、姉弟揃ってタバコの煙を怜子の顔の付近に吐き出す。
「ゲホッゲホッ!祐実、アタシタバコの煙苦手なの…だからタバコ止めて!」
副流煙を吸い込まないよう、口を手で塞ぎながらもう片方の手でパタパタと煙を追いやっている。
何だかとても苦しそうな感じだった。
キライというか、恐怖感に怯えているような顔つき…
先程まで、ベタベタしていた時の満面の笑みは無く、ひきつっているような顔に変わった。
「いいけど、これからあんまりくっつかないで。またくっついたら、タバコ吸うからね?」
アネキはタバコを消し、怜子に冷たく言い放つ。
「わかったわよ…」
怜子はシュンとして、アネキから少し離れた。
「あの、失礼だけど…もしかしてレズ?」
ボクは直球で怜子に聞いた。
勿論、周りには聞こえないように小さな声で。
怜子は顔を赤らめながら小さく頷いた。
(やっぱり…)
怜子は真性の同性愛者だった
「ねぇ怜子。アタシも怜子の事好きだけど、怜子の言う好きとは意味が違うのよ。アタシは怜子みたいに、女の子に恋愛感を持つ事が出来ないの。ゴメンね…」
その言葉を聞いて、怜子は今にも泣き出しそうな顔をしていた。
「でも、アタシと怜子は親友だよ。これだけは覚えておいてね」
すると怜子は立ち上がり、
「ゴメン、アタシ帰る…」
と言って店を出た。
何だかかわいそうな事したな…
ボクは同性愛者じゃないから分からないけど、アネキの事が好きで好きで堪らなかったんだろう。
はぁ…これがレズというヤツなのか。
「怜子と二人きりだとちょっと怖かったから、アンタを連れて来たのよ」
アネキはまたタバコに火をつけ、フゥーっと煙を吐きながら呟いた。
「何だかなぁ…あんなに背が高くてモデルみたいな女が、女にしか興味がないとは」
「うん…あの子、校内でもかなり有名なのよ。どういうワケか、最近アタシの事を気に入って、教室でもずっとアタシの側から離れないんだから…でも怜子にハッキリ言ったから、もうそんなにしつこくしてこないと思うけどね」
「ギャハハハハ!アネキもソッチの世界に入ればいいじゃないか!」
「冗談じゃないわよ!死んでも向こうの世界にはいきたくないわよ!」
物凄いムキになって怒る。
「んで、オレを例の弟って言ってたのは何の事だったの?」
「あぁ、あれね…怜子には、アタシの事が好きで好きでたまらない弟がいるんだけど、ソイツも連れてきていい?って聞いたの」
はァ?そっちの方がヤバいじゃんかよ!
「何だって?オレがアネキの事を好きだって言ったのかよ?」
「だって、そうでも言わないと中々離れてくれないからさ…ゴメンね貴久、許して」
「何だそりゃ?こっちはいい迷惑だよ」
「だから、ゴメンて謝ってんじゃーん」
「オレがアネキ大好き弟って事が広まったら、こっちがシャレになんねーよ」
「んー、まぁその時はその時考えればいいじゃん?」
「…」
かくして、1986年の初詣はアネキのとばっちりを受けて終わった
イヤな年にならなきゃいいな…
しかし、あんな美人でスタイルもいい女が同性しか好きになれないとは…
世の中には色んな人がいるんだなぁ~と痛感した。
「ちょっと怜子…皆の前だから少し離れてよ」
アネキはマジで迷惑そうな顔をしているが、怜子は止めようとしない。
「いいじゃない、祐実ぃ~…寒いからくっついて暖まろう」
ボクは一緒に見られるのがイヤだと思い、距離を置いていたが、怜子の執拗さにある種の怖さを感じた。
(こりゃ、冗談じゃなくホンモノのレズだ)
ボクは二人の間に割って入った。
「腹減ったし、何処かで何か食わない?」
邪魔をされた怜子は少しムッとしていた。
「アタシ、今お腹空いてないし」
するとアネキは、
「じゃあ、何処か店に入ろうか?どの店がいいかなぁ」
と言ってボクの脇にピタッと付き、周囲を見渡した。
「じゃあ、祐実が行くならアタシも行く~」
怜子はまたアネキの腕を掴み、絡ませるように組んでいた。
ちょっとイッちゃてる…まるで蛇のように絡みつく。
蛇というか、アナコンダの方がしっくりくるかな。
「あの店に入ろう」
前方にちょっと洒落た感じの喫茶店を見つけた。
「あぁいいわね。あの店にしようか貴久」
アネキはそう言って喫茶店の中に入った。
そんな事より、僕を無理矢理初詣に誘ったのは、怜子と二人だけになるのがイヤだからって事?
「いらっしゃいませ~」
「3人なんですけど空いてますか?」
「はい、どうぞ奥へ」
店内は正月とあってか、かなりの客がいたが、ボクらは奥に空いていたテーブルに座った。
怜子はアネキの隣に座り、身体をピタッとくっついて離れない。
アネキはボクにSOSを送る眼差しをする。
いや、ちょっとアネキが嫌がってんすけど、少し離れてくれませんか?
…こう言えばいいのか?でもこの人、少しイッちゃてる感ハンパない!
下手な事言ったら、こっちが大変な目に遭いそうだ。
別に悪いことをしてるワケじゃないし、ボクが言ったところで、ちょっとやそっとじゃ離れないだろうし…
「あの…アネキとはよく遊んだりするんですか?」
わざとらしく、アネキの事を聞いた。
「うん、お姉ちゃんとは同じクラスで席も近いからいつも一緒にいるの」
何だ、この嬉しそうな表情は…満面の笑みを浮かべている。
背が高くモデルのような美形で、誰もが振り返る程の美人だ。
それが何故、アネキの様な背が低く、足がやや太い女を好きになるのだろうか?
アネキ、御愁傷様…
悪いが、この人には何も言えない…
アネキも観念して、アッチの世界でも元気でやってくれ…心で手を合わせた…
「あ、貴久タバコちょうだい」
アネキがくっつき過ぎて苛立ってきたのか、ボクにタバコをくれと催促する。
「何だよ、まだタバコ吸ってたのかよ!」
オフクロに見つかって以来、もう止めたもんだと思っていたのだが、まだ隠れて吸ってたのかよ…
「いいでしょ、一本ちょうだいよ」
ボクのラークマイルドを一本取って、火をつけた。
「え、祐実…タバコ吸うの?」
アネキがタバコを吸った途端、態度が急変する。
「ふぅ~、今までガマンしてたからタバコがウマイ!」
満足気な表情で紫煙を燻らす。
「祐実…ちょっと煙たいょ、タバコ止めて…」
怜子はタバコの煙が苦手なのか、物凄い拒絶反応を起こす。
じゃあ、オレも吸っちゃおう!
って事で、姉弟揃ってタバコの煙を怜子の顔の付近に吐き出す。
「ゲホッゲホッ!祐実、アタシタバコの煙苦手なの…だからタバコ止めて!」
副流煙を吸い込まないよう、口を手で塞ぎながらもう片方の手でパタパタと煙を追いやっている。
何だかとても苦しそうな感じだった。
キライというか、恐怖感に怯えているような顔つき…
先程まで、ベタベタしていた時の満面の笑みは無く、ひきつっているような顔に変わった。
「いいけど、これからあんまりくっつかないで。またくっついたら、タバコ吸うからね?」
アネキはタバコを消し、怜子に冷たく言い放つ。
「わかったわよ…」
怜子はシュンとして、アネキから少し離れた。
「あの、失礼だけど…もしかしてレズ?」
ボクは直球で怜子に聞いた。
勿論、周りには聞こえないように小さな声で。
怜子は顔を赤らめながら小さく頷いた。
(やっぱり…)
怜子は真性の同性愛者だった
「ねぇ怜子。アタシも怜子の事好きだけど、怜子の言う好きとは意味が違うのよ。アタシは怜子みたいに、女の子に恋愛感を持つ事が出来ないの。ゴメンね…」
その言葉を聞いて、怜子は今にも泣き出しそうな顔をしていた。
「でも、アタシと怜子は親友だよ。これだけは覚えておいてね」
すると怜子は立ち上がり、
「ゴメン、アタシ帰る…」
と言って店を出た。
何だかかわいそうな事したな…
ボクは同性愛者じゃないから分からないけど、アネキの事が好きで好きで堪らなかったんだろう。
はぁ…これがレズというヤツなのか。
「怜子と二人きりだとちょっと怖かったから、アンタを連れて来たのよ」
アネキはまたタバコに火をつけ、フゥーっと煙を吐きながら呟いた。
「何だかなぁ…あんなに背が高くてモデルみたいな女が、女にしか興味がないとは」
「うん…あの子、校内でもかなり有名なのよ。どういうワケか、最近アタシの事を気に入って、教室でもずっとアタシの側から離れないんだから…でも怜子にハッキリ言ったから、もうそんなにしつこくしてこないと思うけどね」
「ギャハハハハ!アネキもソッチの世界に入ればいいじゃないか!」
「冗談じゃないわよ!死んでも向こうの世界にはいきたくないわよ!」
物凄いムキになって怒る。
「んで、オレを例の弟って言ってたのは何の事だったの?」
「あぁ、あれね…怜子には、アタシの事が好きで好きでたまらない弟がいるんだけど、ソイツも連れてきていい?って聞いたの」
はァ?そっちの方がヤバいじゃんかよ!
「何だって?オレがアネキの事を好きだって言ったのかよ?」
「だって、そうでも言わないと中々離れてくれないからさ…ゴメンね貴久、許して」
「何だそりゃ?こっちはいい迷惑だよ」
「だから、ゴメンて謝ってんじゃーん」
「オレがアネキ大好き弟って事が広まったら、こっちがシャレになんねーよ」
「んー、まぁその時はその時考えればいいじゃん?」
「…」
かくして、1986年の初詣はアネキのとばっちりを受けて終わった
イヤな年にならなきゃいいな…
しかし、あんな美人でスタイルもいい女が同性しか好きになれないとは…
世の中には色んな人がいるんだなぁ~と痛感した。
応援ありがとうございます!
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