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13 僅かな気まずさ

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 挿入の快感に、電流が身体に走ったようにビクビクと身体が震える。ゾクゾクっと皮膚がざわめき、足がひくひくと痙攣した。

「あっ、あ、あっ……!」

 ビクッ! と身体をしならせ、どろりとした粘液を性器から吐き出す。良輔が上から呆れた顔で見下ろす。

「もうイったの? 俺まだ一回もイってないのに、お前もう二回もイったじゃん」

「っ……、うるさいっ……」

 実をいうと三回目なのだが、良輔はドライでイくという概念がないのか気づいていないようだ。挿入されただけでイくとか、本当にあり得ない。これも、良輔が敏感なとこばかり弄るから。

 ハァハァと息を荒らげながら、良輔の腕に爪を立てる。良輔の太い性器が、肉輪を押し広げてぐりぐりと内部を抉る。ドクドクと脈打つのが自分の方なのか、良輔の方なのか分からない。ただ、先ほどから連続でイっているせいで、酷く敏感になっていた。

(っ、無理っ……今、擦られたら……)

 じわりと、快感に涙が滲む。少し待って欲しいのに、良輔はずるっと腰を引き抜いた。

「っ――!!」

 大げさなほど身体を跳ねらせ、声にならない悲鳴を上げる。

「っぁ! 待っ……!」

「ホント、俺のすんなり挿入っちゃうんだもんな……」

 脚を掴んで、根元まで押し付けられる。深いところまでねじ込まれ、「ぐ、んぅ」とくぐもった声が唾液と共にこぼれた。

「百人くらい咥えて来たって? マジで言ってんの?」

「っ、そ、だよっ……悪いかよっ……」

「……」

 じゅぷんっ! 楔を穿つように突かれ、腹が重くなる。

「どう計算したら百になんだよ……。おかしいだろ」

「おかしく、ねーよ……。乱交パーティとか、十人、二十人規模、だしっ……あっ!」

「は?」

 良輔は知らないのだろうが、淫らな集いというのはあるものだ。もちろん十人二十と集まった場合は、ネコ役も数人いるわけで、全員とヤったわけではないが。そういう集いに限って、集まってくるのは見た目は普通のサラリーマンといった風情ばかりだから、世の中狂っている。

 心なしか、良輔の動きが乱暴になる。気が狂いそうになるほど執拗に擦られ、喘ぎと唾液しか口から出なくなる。

「お前っ、ふざけんなよ……っ」

「んぁ、あっ! あ、あ!」

 ぐりゅっと抉りながら、身体をうつぶせにされる。背後から腰を掴まれ、獣のように荒々しく貫かれた。

「あっ、あっ!!」

(ヤバ……、飛んじゃう……っ)

 気持ち良すぎて、意識が怪しくなる。喘ぎを漏らしながら髪を振り乱し、涙と唾液でべとべとの顔をシーツに擦る。

「あ、あっ、気持ちっ……、あ! んぁっ!」

「渡瀬っ……」

 良輔の手がぐっと腰のあたりを掴んだ。ハートの痣があるあたりを、良輔の親指が強く押す。

「渡瀬、渡瀬っ……」

「んっ――!!」

 良輔の性器が中でビクンと震えた。激しく腰を打ち付け、腸内に精液が吐き出される。その感触に、俺もビクビクッと身体を震わせ、シーツの上に精液を吐き出す。膝がガクガク震えて、力が抜ける。へたっとベッドに崩れた俺の腰を、良輔が掴んで引き寄せる。

「んぁ、ん?」

 そのまま背後からしっかり抱きしめられる。人肌の暖かさに、心臓がきゅうっと高鳴った。

「っ良輔……」

 ちゅう、と首にキスされ、ぴくんと身体が跳ねた。良輔の手が前に伸び、腰をさわさわと撫でる。

「ん、ちょっ……」

 腰から太腿に手が伸び、脚を開かされる。挿入されたままの肉棒が、硬度を増す。

「良輔……っ、少し休憩……」

「俺相手だからって手抜くなよ。乱交が好きなんだろ。余裕だろ」

「っ、いや……それは」

 そういう時はこんなハイペースでヤらないんだから、もっと余裕がある。そう言い訳したかったが、良輔はいずれにしてもやめる気配はなかった。下からゆさゆさと揺さぶられ、乳首を弄られる。

「っ、あっ……、あ……」

 徐々に動きが激しくなり、ズンズンと突き上げられる。先に放った精液がぬちゅぬちゅと卑猥な音を立てた。

「ぅん、んっ、あっ、んあっ!」

「っ、は……、渡瀬っ……」

 掠れた声が耳元にかかって、ゾクゾクと背筋が震える。良輔の行為はどこか執着されているようで、堪らない。キスが欲しくて振り返ったが、良輔は耳を噛んだだけで唇には触れなかった。代わりに、指を口に押し込まれる。

「んぁ、んぐ……」

 指が舌を弄び、咥内を犯す。キスが欲しいと知っている癖に、セックスはする癖に、キスはしない。良輔の線引きに、胸がモヤモヤした。

 やがて突き上げる動きが激しくなり、二度目の精液を腸内に放たれる。少し遅れて、俺も薄い精液を放った。

「あ、あ――……」

 ぐったりと、ベッドに倒れ込む。ずるりと、アナルから肉棒が抜け落ちた。穴がなんだかスースーする。入れっぱなしでヤられたせいで、緩くなってしまったのかもしれない。どろりと、粘液が息を吐くたびに零れ出る。

「はぁ……はぁ……」

 荒い呼吸を整える俺の上に、良輔が覆いかぶさる。頬にキスされ、瞼を開けた。

「口にして……」

「嫌だ」

 即答され、ムッと口を結ぶ。何でだ。

 ごろんとベッドに転がり、互いに抱き合って脚を絡める。キスは嫌だと言いながら、良輔は顔中にキスをした。

「ん、……気持ち良かった……」

「……もう一回しようか?」

 腰を撫でられ、ビクッと身体を震わせる。巨根の上に、絶倫かよ。こっちの身が持たない。

 無理だと伝えると、また「乱交好きな癖に」と言われそうなので言い訳を探す。良輔に比べたら、どいつもゴボウみたいなもんだ。質量が大きいモノを突っ込まれている方の身になって欲しい。

(クソ、この間まで童貞だった癖に……)

 良いようにされた気がする。こっちのほうが絶対に経験は多いはずなのに、何故なのか翻弄されてしまった。

「いや、そろそろ出よう。追加料金取られる」

「なるほど……」

 俺の言葉に納得して、良輔は真顔になった。考えてみれば恋人でもないのに一緒に来て、他と遊ばずに連れとヤるなんて、すごく不毛だ。

「まあ、シャワー浴びて帰ろうぜ……」

 ぐったりした身体を起こして、髪をかき上げる。本来ならこんな激しいセックスをする予定じゃなかったのに。先にシャワーも浴びなかったし。まあ、良輔相手だから良いけどさ。

 どことなく気まずさを残したまま、俺たちはシャワーを浴びて、店を出た。店を出るころには二人とも無言で、俺はなんとなく、もうこの店に来ないような気がした。




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