今さら嘘とは言いにくい

藤掛ヒメノ@Pro-ZELO

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十八話 言えるわけない。

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 言えねえー。言えねえわ。

 今さら嘘とか、言えるわけねえよ。だってもう、ちゅーしちゃってるもん。

(とは言え、なぁ……)

 すっかり、イタズラの白状をする気のなくなってしまったオレだが、オレにも良心というものがある。

 蓋をすると決めたものの、罪悪感がチクチクするわけだ。

 水槽の前に座り、ヤドカリのヤッくんと戯れる。めっちゃ可愛い。癒し。世界一貝殻が似合う。

「まだヤッくんと遊んでんの?」

 晃が横から顔を覗かせた。基本的にヤッくんのお世話は、オレの係である。なぜならオレがやりたいから。

「見てよ晃。うちの子が一番可愛い」

 SNSでヤドカリ飼いの写真を見ると、可愛いヤドカリが一杯出てくる。でもうちの子も負けてない。そう思うんですよ。

「うん。可愛い」

「なんでオレの方見て言うかね?」

「なんでだろう?」

 クスリと笑いながら、晃が顔を近づける。

 イケメンオーラを出すなと言いたい。そして、この雰囲気はもう、解ってる。

 頬を朱に染め、薄く目を閉じる。唇を軽く甘噛みされ、ビクンと肩が揺れた。

「ぁ……、ん…あき……」

 ちゅ、くちゅっと音を立てて、唇を吸われる。ゾクゾクする皮膚を、晃の指がなぞる。腕、肩、背中。確認するように撫でながら、舌を絡ませ深く口付ける。

「陽介……、っは……」

「んぁ、ん……」

 晃とのキスは、ドキドキする。キスだけで気持ち良くなって、胸の奥が切ないような、もどかしいような気持ちになる。

「っ、は……――、ヤッくん、見てるって」

「じゃあ、もうお休みしてもらおう」

 晃はそう言って水槽の蓋を閉め、再び口付けて来る。

 腰の辺りをまさぐる様子に、ピクンと目蓋が跳ねた。

「あき――」

「しっ……。ヤッくんに見られちゃうよ」

「っ……」

 このっ……。

 文句を言う口を封じて、無遠慮にスエットを脱がされる。最早『良い』かどうかすら聞かずに、手が肌に触れてくる。

「っ、こらっ……」

「陽介……」

 晃の唇が首筋を這う。喉に噛みつかれ、ゾクッと背筋が震えた。

 オレは自分の手をどこにやって良いか解らずに、さ迷った結果、晃の背中に回した。

 晃の唇が、嬉しそうに歪んだ気がした。

 下腹部では、既に他人の手の良さを知ってしまった本能が、期待して待っている。けれど、晃はそれには触れずに、オレのスエットの上着を捲りあげ、肌を晒す。

「あ、ちょっ……」

「ピンク色……。綺麗じゃん」

 晃の唇が、はむと突起を啄む。思っても見なかった箇所を愛撫され、驚いて身体が跳ねた。

「ひぁっ」

 未知の刺激に、電流が走ったような衝撃を受ける。敏感な尖端を舐められ、快感に戸惑った。

「っ、晃っ……! そこっ……」

 ヤバい。気持ちイイかも。

 執拗に舐められ、頭がおかしくなりそうだ。

 オレの反応が面白いのか、晃はしつこく、舌先で転がしたり、吸ったりを繰り返す。

「んっ、ん、ぅ」

 背に廻していた腕を離して、口許を覆う。押さえていないと、とんでもなく甘い声が出てしまいそうだった。

 乳首への愛撫は気持ち良かったが、当然、それでイけるはずもなく。オレは無意識に自身に手を伸ばす。それを、オレの手の上から、晃が触れてくる。

「あ、きらっ……」

「陽介……、気持ちイイ……?」

「うっ、んっ……、気持ち、い……っ」

 赤い舌から伸びた唾液が、ぬらぬらと赤い果実を濡らす。酷く、隠微な光景に、頭がくらくらした。

 晃の手が、オレの手ごと、中心を弄る。

「あっ、あ、晃、もっ……」

「……うん」

 晃が身体を寄せる。密着しながら、擦り合わせる。無意識に舌を伸ばし、キスを欲する。

 晃の唇は、柔らかく、甘い。

 夢中で吸い付きながら、愛撫を繰り返す。

 荒い息を吐きながら、オレは晃の肩に噛みつき、白濁を手の中に放ったのだった。


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