27 / 70
第5章:単身赴任で甲賀を調略しよう!
甲賀行った(か)ら本気出す!
しおりを挟む「いいか黒古。お前はここに隠れていろ。全部、この俺が倒してくるから」
甲賀軍団100人。
こいつらとの決闘に使われる刈り取りの終わった狭い田んぼ。
その中央に小さな小屋がある。
そこに黒古を待機させる。
嫌だと言ったが強引に、ここへ連れて来た。御褒美は『信ちゃんと握手』と言ってきた。それだけは「ちょ、待てよ!」と言いたかったが、背に腹は変えられない。
まあ、岐阜で乗馬しているキム〇クには、100万人近く会いに行きたかったらしいから、このヲタク娘には垂涎の的なのは理解できる。
これはヲタク同士にしかわからないパトスだ!
「了解ですわ。今から手を洗って待っていますわよ~♪」
おれは首を洗って待っていないといけないかも。「キンカン!手打ちじゃ。なぜこのような女子、連れて来た!?」とか、絶対に言われそう。
光秀、まだ死にたくないでござる!
「では、手筈通りに」
「わかったわ」
真面目になって目を合わせ、がっちり握手。
俺は外に出る。
小屋の前には3人の老人が立っている。甲賀の長老的な人なのか?
伊賀では3家。藤林・百地・服部が合議制で国を取り仕切っているといっていい。
だけどこの甲賀ではそれぞれの村が自治を行っているために、代表というものはいないはずだが。
「なかなか骨のある者が来ていると聞いたがお主か? まるで子供のような風体。それに面妖な髪色。ただ者では無かろうて」
「そうよの。胆力だけはあると認めようぞ」
「しかし甲賀を侮り過ぎじゃ。100人などいらぬわ。1人でもまだ余るぞ。相手はしてやろう。じゃが、まずは甲賀の若い者を倒して見せよ」
老人がヘイトっぽいことを言う。
あ~、もうちょっと憎まれ口叩いてくれないと盛り上がらないんですが。
近くの畔に隠れていたのか。俺と同じくらいの背丈、若い顔の男が出て来た。ずっとそこに隠れていたのね。ご苦労様。老人はもっと若者を労わりなさい。
「この者。若手組の中でも一番の使い手。見事倒したら、脂ののっている働き手と戦わせてやっても良いぞ」
その声と同時に、若い奴が苦無を投げてから襲ってきた。
汚ね~。普通は「はっけよ~い」とか言わね? やっぱり忍者だね。と思っていたら、後ろから手槍。1人と見せかけて後ろから襲って来る、この攻撃。もう何でもあり。
突いてくる手槍を右脇で抱え込み、後ろから不意打ちをしたやつを槍の遠心力でふき飛ばす。
チッ。あの爺たち目掛けて飛ばしたけど、逃げられた。
目の前にいた若い忍者。
懐から二つ目の苦無を出して投げつけて来る。これで態勢を崩させてバッサリとやる手だね。
「変異抜刀、全力集中、ミスの呼吸。流槌めん!」
別に飛ばないよ?
刀から水も出ないし、左右にフラフラもしない。
ただ言ってみただけは、お約束。
ヒョイ、っと突進を避けて足を引っかけてもつれさせた。
ズザ~、っといい効果音と共に消えていく若忍者。
あ、落ちている忍刀、血がついてるから自分の身体のどこか斬っているね、君。きっとこれって毒塗ってあるよね。今頃、向こうで焦って毒消ししているんでしょう。
「なかなかやるではないか」
「見直したぞ。では槍手衆のものを相手にしてみよ」
「この者はひと月前まで六角様の護衛していた猛者」
俺は足で、落ちていた忍刀を軽く蹴りつけ、水路の畔にぶつかるほどの低空をブーメランのように回転させて飛ばした。
グサッ。
今度は足かな。
隠れていた場所から出て来た大人忍者の太腿にざっくりと突き刺さる忍刀。
悲鳴を上げないのは流石忍者。でも慌てて竹藪に走り込み手当をしている。
「や、やるではないか」
「しかしこの者は倒せぬであろう。お主のような若造には決っして」
「わ、儂もまだまだ若いから苦手よ、ジュルッ」
風上からいい匂いが。
いたのは分かっていたけどさ。ついついお楽しみに取って置いたんだ。振り返りそいつを見る。
いわゆるくノ一です。
それも一般的なリアルな正史で登場する女忍者ではなく、ぬきゲーやエロマンガで登場するスタイリッシュな装束の、あの人達。
「あなた、強いのね。気に入ったわぁ。きっと夜戦でも強いんでしょ? どう?あたしと対戦してみない? きっと昇天するわよ♪」
戦艦並みの胸部装甲をちらつかせ、レイテ沖海戦のハルゼー艦隊をトラップにかけるような巧みさで誘って来る。
「肩が張るでしょ、おばさん。あと3年もすれば『垂れる』な」
暗号という周りくどい方法ではなく、平文で容赦なく現実を突きつける。
途端に、くノ一の顔が白目に。俺の発したセリフが書かれた稲妻状のとげが、胸部装甲を貫いてバイタルパートにまで突き刺さっているのが目に見える。
仲間に引きずられて退場していった。
「や、やるではないか」
「しかし次の者は、甲賀四天王の一人。この者が倒せれば、この日ノ本で名が轟こう」
「精々気張るが良い」
藪に隠れていたらしい大男がすっくと立ちあがり、こちらへ歩いてくる。
あ~あ、腕が所々赤いよ。藪なんかに隠れているから。だいぶ蚊にくわれたんだね。ちゃんと虫よけスプレーしとくんだよ。
「我が名は、金剛力の運慶! この金棒に当たればどのような鎧も砕けよう!」
「つまり当たらなければ、どうということはない」
俺はテンプレセリフを言う。
これは一生のうちで一度は、実戦の時に使いたいセリフ。
元の世界じゃケンカで勝ったことないからね。きもちいいいいい~~♪
奴が振り下ろしたでっかい金棒に飛び乗り、宙返り。両刀でうなじの肉を削ぎ取る。やはり巨人を倒す時は、この場所を切り取るのはお決まりの作法です。
「!!!!」
「ま、まだまだ」
「この者は四天王の中でも最弱のもの。次は甲賀最強の……」
「たとえテンプレ儀式でも、もう飽きたよ。まとめてかかってきてよね」
俺は加速に入るため、奥歯の横のスイッチを舌で押すイメージをした。これは大事な儀式。ルーティーンだ。
自分が加速スキルを持っていること、色々なヲタクポーズをとっていて分かったんだよ。「へんっしん!」とか「ピンクのハートは愛あるマーク!」とかね。
これもその一つ。
『甲賀来たから、本気だす』か!
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
神様の忘れ物
mizuno sei
ファンタジー
仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。
わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます
山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。
でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。
それを証明すれば断罪回避できるはず。
幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。
チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。
処刑5秒前だから、今すぐに!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる