追放令嬢、魔導と科学で文明開花いたしますわ〜辺境から始める世界再設計〜

☆ほしい

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第10話

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 さて、次なる技術課題は“思念伝導炉”の実装ですわ。思考を介して魔力を制御する――それは魔具という概念そのものを根底から覆す、いわば神の領域への踏み込みですの。わたくしにとってこれほど愉快で、魅力的な挑戦が他にあるかしら? いいえ、ございませんわね。

「リゼ、例の遺跡から回収した構造解析表、あれは?」

「はい、こちらに……ですが本当に使うんですか、あれを……? あのとき、魔力量が暴走して施設が……」

「だからこそ、ですわ。あの失敗には、明確な原因と解決法がございます。要するに、“思考波のチューニング”が足りなかっただけのこと。制御核と使用者の意識波長を完全に一致させることさえできれば、あの炉は完璧に目覚めますの」

「でも、そんなの……普通の人じゃ無理なんじゃ……」

「ええ、だからわたくしがやるのですわ。わたくし以外には、最初から適応できる者などおりませんもの」

 ああ、ほんとうにゾクゾクいたしますわ。未知なる技術、誰にも理解されぬ概念、その核心に触れようというこの瞬間。魔具開発士として、これほど贅沢な環境は他にありえませんわ。

 わたくしは即席で組み上げた解析用魔具に意識を集中させ、伝導炉の模擬回路へと魔力を注ぎました。視界がぼやけ、音が遠のき、世界の解像度が一段階変化する。これが、“意識と魔力が結合したとき”の感覚ですの。

「来なさい、わたくしの意思。すべてを貫き、すべてを動かす、“わたくしの力”として形を取るのですわ」

 回路が震え、青白い光が走る。機械が唸りを上げ、リゼが一歩後退した。

「お、お嬢様……っ、だ、大丈夫ですかっ!?」

「わたくしが大丈夫でなければ、誰がこの技術を扱えるというのです?」

 回路の中で、何かが“目覚めた”。まるで、わたくしの脳と、装置の核心が融合するかのような錯覚。いいえ、違いますわ。錯覚ではございません。これは、真に接続された証拠――思考で魔力を操る、古代技術の極点!

「成功ですわ……!」

 その瞬間、試験装置のコアがゆっくりと宙に浮き、わたくしの意識の動きと完全に同調して上下に揺れました。

「動く……意識だけで……本当に……!?」

「ええ、リゼ。これが、“意思の魔具”ですわ。これさえあれば、杖も、呪文も、詠唱も、もはや無用。思考こそが最強の武器になる……そう、わたくしの“脳”そのものが、魔導機構になるのですわ」

 ふふふふふ、ああ、素晴らしい。この快感、この征服感、技術者冥利に尽きますわ。

「これを拡張すれば、自律兵器を思考で遠隔操作し、魔力調整も同時進行、戦場において個人で軍隊規模の戦闘を指揮できるでしょうね……ええ、もはや戦術単位ではなく、“戦略単位”で行動が可能になりますわ」

「お、お嬢様……それって……それって、本当に、やっていいんですか……?」

「なにをいまさら。面白いか否かがすべてですわよ、リゼ」

 けれど、その言葉の直後――“奴ら”が動いたのですわ。

 村の外、結界の境界線が警戒音を鳴らし始めました。

「外部魔力反応、接近中。識別不能。属性:不明。数、四体」

 わたくしはすぐに応接卓の魔導地図を展開し、状況を確認。

「……ふふ。やはり、そう簡単には終わりませんわね。まさか、もう“実働部隊”を差し向けるとは。王国の反応、早すぎませんこと?」

「えっ、まさか……さっきの諜報局の人たちの……!?」

「ええ、“様子を見る”などと口では言っておりましたが、きっと同時に報告も入れたのでしょう。特区申請の前に、排除するという選択肢を残すつもりだったのね。愚かですわ」

 わたくしは即座に防衛指令を発令。自律兵器部隊を結界外縁に展開させ、思念炉を起動状態のまま、わたくしの意識で制御を開始。

「お見せしますわ、王国の犬どもに。“わたくしという制御不能な存在”を」
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