追放令嬢、魔導と科学で文明開花いたしますわ〜辺境から始める世界再設計〜

☆ほしい

文字の大きさ
37 / 66

第37話

しおりを挟む
 未来拡張計画フェイズ3、それはアウローラ全域を対象にした超広域自律型インフラシステムの実装でございますわ。

 「リゼ、都市外縁部までの魔導ネットワーク拡張は?」

 「完了しています! エネルギー中継塔も全箇所設置済みです!」

 「よろしいですわ。では順次、起動なさい」

 「了解しました!」

 広場に集まった群衆が、再びどよめきましたの。遠く地平線に見える外縁区画が、まるで生き物のように脈動し始めたのですもの。

 「す、すごい……! 何かが動いています!」

 「外縁の土地まで……!」

 市民たちの驚愕の声が広がり、査察団すら目を見張りましたの。

 「これは……いったい……」

 リュミエールが低く問いかけましたの。

 「未来は一点集中では生まれませんもの。全域、全員が均等に“未来”へと進まねばならないのですわ」

 わたくしは優雅に広がる光の波を指差しましたの。

 「アウローラ全域が、統一された魔導基盤で一つに繋がる。これこそが、真の未来都市構想ですわ」

 リゼが歓喜に震えながら叫びましたの。

 「お嬢様! 統合魔導インフラ、全エリア接続完了です!」

 「上出来ですわ。次、統合都市管理AI《アウロラ・ノヴァ》の起動準備に入りなさい」

 「はいっ!」

 未来記念塔の中心部に設置された核制御端末が、低く脈動を始めましたの。全てのエネルギーラインがそこへ収束していきますわ。

 「最終確認を行います。アウロラ・ノヴァ、システム起動プロトコル展開!」

 リゼの号令に応じて、未来記念塔上空に魔導陣が複数層、回転を始めましたの。

 「起動カウントダウン開始! 十、九、八――!」

 「群衆の誘導を強化しなさい。起動時のエネルギー波に驚かせてはなりませんわ」

 「了解です!」

 リゼが走り回り、各班に指示を飛ばす中、わたくしは未来記念塔の最高制御席に座り、ゴーグルを下ろしましたの。

 「三、二、一――起動!」

 リゼの声とともに、未来記念塔を中心に凄まじい光が炸裂し、アウローラ全域を覆う巨大な魔導ドームが展開しましたの。

 その中心に現れたのは、輝く水晶体の中に浮かぶ、自律型都市管理AIのコア。

 《アウロラ・ノヴァ》――未来を導く新たなる意志の誕生ですわ。

 「アウロラ・ノヴァ、都市管理システムへの同期開始!」

 「同期進行率、現在五十パーセント……七十パーセント……!」

 「同期完了! アウローラ自由特区連邦、全機能統合完了です!」

 リゼが興奮して叫びましたの。

 「ふふ、これでわたくしたちは本当の意味で未来へ踏み出したのですわ」

 わたくしは制御盤に手をかざし、都市全体を統括する《アウロラ・ノヴァ》との直結を行いましたの。

 「広域防衛システム、起動」

 「交通管制システム、最適化完了」

 「生活支援ネットワーク、全市民登録同期完了」

 各システムが次々と同期完了を告げ、アウローラは完全に一つの生命体のように機能し始めましたわ。

 リュミエールが唖然としながら問いましたの。

 「これが……お前の作りたかった都市か」

 「ええ、これが“未来”ですわ」

 わたくしは紅茶を一口啜り、悠然と応じましたの。

 「世界は遅かれ早かれ、アウローラを標準とするしかありませんわ。嫌でも、認めざるを得ない未来を」

 リゼが魔導通信に飛び込んできましたの。

 「お嬢様! 特区外縁部に不審なエネルギー反応!」

 「ほう?」

 わたくしは即座に視線を操作卓に移しましたの。

 「座標を示しなさい」

 「第三区外縁部、密林地帯です!」

 わたくしは魔導レーダーを拡大しましたの。そこには、微弱ながら明確な魔導波。しかも、通常とは異なる性質を持ったもの。

 「侵入者か、それとも……」

 わたくしはゴーグルをきつく締め直しましたの。

 「リゼ、特区防衛隊を展開。わたくしも現場へ向かいますわ」

 「お嬢様ご自身が!?」

 「当然ですわ。未来を脅かす要素、見逃すわけには参りませんもの」

 わたくしはゴーグルを額に押し上げ、未来記念塔の滑走台へ向かいましたの。

 「迎撃態勢、急ぎなさい!」

 「了解しました!」

 未来都市アウローラ、その守護者として。

 面白くなってまいりましたわ。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢に転生したので、ゲームを無視して自由に生きる。私にしか使えない植物を操る魔法で、食べ物の心配は無いのでスローライフを満喫します。

向原 行人
ファンタジー
死にかけた拍子に前世の記憶が蘇り……どハマりしていた恋愛ゲーム『ときめきメイト』の世界に居ると気付く。 それだけならまだしも、私の名前がルーシーって、思いっきり悪役令嬢じゃない! しかもルーシーは魔法学園卒業後に、誰とも結ばれる事なく、辺境に飛ばされて孤独な上に苦労する事が分かっている。 ……あ、だったら、辺境に飛ばされた後、苦労せずに生きていけるスキルを学園に居る内に習得しておけば良いじゃない。 魔法学園で起こる恋愛イベントを全て無視して、生きていく為のスキルを習得して……と思ったら、いきなりゲームに無かった魔法が使えるようになってしまった。 木から木へと瞬間移動出来るようになったので、学園に通いながら、辺境に飛ばされた後のスローライフの練習をしていたんだけど……自由なスローライフが楽し過ぎるっ! ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

A級パーティから追放された俺はギルド職員になって安定した生活を手に入れる

国光
ファンタジー
A級パーティの裏方として全てを支えてきたリオン・アルディス。しかし、リーダーで幼馴染のカイルに「お荷物」として追放されてしまう。失意の中で再会したギルド受付嬢・エリナ・ランフォードに導かれ、リオンはギルド職員として新たな道を歩み始める。 持ち前の数字感覚と管理能力で次々と問題を解決し、ギルド内で頭角を現していくリオン。一方、彼を失った元パーティは内部崩壊の道を辿っていく――。 これは、支えることに誇りを持った男が、自らの価値を証明し、安定した未来を掴み取る物語。

聖女やめます……タダ働きは嫌!友達作ります!冒険者なります!お金稼ぎます!ちゃっかり世界も救います!

さくしゃ
ファンタジー
職業「聖女」としてお勤めに忙殺されるクミ 祈りに始まり、一日中治療、時にはドラゴン討伐……しかし、全てタダ働き! も……もう嫌だぁ! 半狂乱の最強聖女は冒険者となり、軟禁生活では味わえなかった生活を知りはっちゃける! 時には、不労所得、冒険者業、アルバイトで稼ぐ! 大金持ちにもなっていき、世界も救いまーす。 色んなキャラ出しまくりぃ! カクヨムでも掲載チュッ ⚠︎この物語は全てフィクションです。 ⚠︎現実では絶対にマネはしないでください!

【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。

BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。 辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん?? 私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?

魔法使いとして頑張りますわ!

まるねこ
恋愛
母が亡くなってすぐに伯爵家へと来た愛人とその娘。 そこからは家族ごっこの毎日。 私が継ぐはずだった伯爵家。 花畑の住人の義妹が私の婚約者と仲良くなってしまったし、もういいよね? これからは母方の方で養女となり、魔法使いとなるよう頑張っていきますわ。 2025年に改編しました。 いつも通り、ふんわり設定です。 ブックマークに入れて頂けると私のテンションが成層圏を超えて月まで行ける気がします。m(._.)m Copyright©︎2020-まるねこ

本物の聖女じゃないと追放されたので、隣国で竜の巫女をします。私は聖女の上位存在、神巫だったようですがそちらは大丈夫ですか?

今川幸乃
ファンタジー
ネクスタ王国の聖女だったシンシアは突然、バルク王子に「お前は本物の聖女じゃない」と言われ追放されてしまう。 バルクはアリエラという聖女の加護を受けた女を聖女にしたが、シンシアの加護である神巫(かんなぎ)は聖女の上位存在であった。 追放されたシンシアはたまたま隣国エルドラン王国で竜の巫女を探していたハリス王子にその力を見抜かれ、巫女候補として招かれる。そこでシンシアは神巫の力は神や竜など人外の存在の意志をほぼ全て理解するという恐るべきものだということを知るのだった。 シンシアがいなくなったバルクはアリエラとやりたい放題するが、すぐに神の怒りに触れてしまう。

断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます

山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。 でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。 それを証明すれば断罪回避できるはず。 幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。 チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。 処刑5秒前だから、今すぐに!

幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない

しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。

処理中です...