追放令嬢、魔導と科学で文明開花いたしますわ〜辺境から始める世界再設計〜

第49話

　わたくしは未来記念塔の中央演算室へと歩みを進めましたの。

　「リゼ、次なる施策を開始いたしますわ」

　「はいっ！」

　リゼが魔導端末を操作し、未来都市群全域にわたる法整備計画データを呼び出しましたの。

　「まずは、連合憲章第八条、技術流通の自由化条項を施行なさい。特区内すべての発明、技術革新は迅速に登録、認証、普及する仕組みにいたしますわ」

　「了解しました！」

　「さらに、特区内の研究者、技術者には特別市民権を付与いたしますわ。これにより世界中から才能を呼び寄せますの」

　「はいっ！」

　わたくしは指先でホログラムを滑らせ、新たな制度設計を次々と積み上げましたの。

　「リゼ、未来金融機構《アウローラ・バンク》設立準備は？」

　「順調です！　通貨単位『オルビス』の発行も間もなく可能になります！」

　「よろしいですわ。世界経済の心臓を握るには、まず通貨基盤からですもの」

　リゼが興奮気味に報告を続けましたの。

　「各都市国家からも続々と加盟申請が届いています！　これで未来都市群連合の影響圏は世界人口の三割に達しました！」

　「ふふ、素晴らしい進捗ですわ」

　わたくしはゴーグルを外し、未来記念塔の窓越しに広がる光の海を見渡しましたの。

　「リゼ、次元輸送網計画《ヘリオス・リンク》、初期建設拠点を選定なさい」

　「はいっ！　まずはアウローラ本部から三大支線、自由都市群、鉱山連合、沿岸交易同盟へ延伸予定です！」

　「完成すれば、物理的距離の意味は失われますわね」

　「まるで世界が一つの都市になるみたいです！」

　リゼの声が弾み、胸が高鳴るのを隠しきれない様子でしたの。

　「当然ですわ。旧時代の境界線など、わたくしが塗り替えますもの」

　そこへ、リゼが新たな緊急通信を受信しましたの。

　「お嬢様！　旧世界評議会から公式通達です！」

　「ほう？」

　わたくしは通信データを開きましたの。

　そこには、未来都市群連合に対して“独立の無効”と“直ちなる統合命令”が記されておりましたの。

　「笑止千万ですわ」

　リゼが不安そうに訊きましたの。

　「あの、どうなさいますか？」

　わたくしはきっぱりと告げましたの。

　「無視ですわ。そして、未来都市群連合として正式に旧世界評議会からの脱退を宣言いたしますわ」

　「はいっ！」

　リゼが素早く公式声明の文案を作成し、わたくしがそれに承認印を押しましたの。

　「声明発信！」

　「よろしいですわ」

　未来記念塔から世界中へ向けて、未来都市群連合の完全独立と、旧世界体制からの完全な離脱が宣言されましたの。

　「リゼ、旧世界側の反応は？」

　「……否定的意見多数ですが、一般民衆層からは未来都市群支持の声が爆発的に増えています！」

　「ふふ、当然ですわ。人は未来を愛するものですもの」

　そこへ、未来都市群連合の加盟都市から続々と賛同声明が届きましたの。

　「アウローラ万歳！」

　「未来は我らの手に！」

　「エリス様に続け！」

　わたくしは胸を張り、堂々と告げましたの。

　「リゼ、次なる計画に移行なさい。世界は、まだまだわたくしの改革を待っていますわ」