追放令嬢、魔導と科学で文明開花いたしますわ〜辺境から始める世界再設計〜

第50話

　未来記念塔の作戦室にて、わたくしは次なる一手を講じるべく、ホログラムマップに指を滑らせましたの。

　「リゼ、次元輸送網《ヘリオス・リンク》の建設開始式典を、明後日に設定なさい」

　「了解しました！」

　「各加盟都市の首長、代表者も必ず招待いたしますのよ」

　「はいっ！」

　リゼが迅速に招待状データを作成し、各都市へと送信していきましたの。未来都市群連合の求心力を一層高めるためにも、こうした象徴的な行動は欠かせませんわ。

　そこへ、技術局長官のアウレリアが急報を携えて駆け込んできましたの。

　「お嬢様、報告いたします！　世界魔導評議会内部で、大規模な離反運動が発生しています！」

　「ほう？」

　わたくしは興味深く耳を傾けましたの。

　「詳細を説明なさい」

　「はい！　評議員の一部が未来都市群連合への加盟を希望している模様です！」

　「ふふ、やっと正しい未来が見えてきたようですわね」

　わたくしは軽く笑い、次なる策を練り上げましたの。

　「リゼ、未来都市群連合加盟条項に“技術提供義務”を新設いたしますわ。加盟希望者には、保有する全魔導技術を未来都市群に提供させますのよ」

　「了解しました！」

　「見返りとして、最高ランク市民権と、特区永住権を付与いたしますわ」

　「かしこまりました！」

　未来記念塔の中枢演算装置《プロメテウス》が稼働を始め、加盟希望リストが次々と更新されていきましたの。

　「アウレリア、未来都市群技術庁を通じて、速やかに各種技術資源の回収を開始なさい」

　「はっ！」

　わたくしはさらに追い打ちをかけましたの。

　「リゼ、旧世界評議会所属の研究施設にも情報網を張りなさい。離反を促すのですわ」

　「了解しました！」

　わたくしはゴーグルを押し上げ、未来記念塔から広がる夜景を見下ろしましたの。

　「世界は変わりますわ。わたくしの手で、必ず」

　そのとき、リゼがまた新たな報告を持ってきましたの。

　「お嬢様！　王都旧技術院跡地で異常魔導波を検知しました！」

　「異常魔導波？」

　「はい、未確認の古代魔文明由来の波長です！」

　わたくしは目を細めましたの。

　「すぐに調査隊を編成なさい。最優先で現地調査に向かわせますわ」

　「了解しました！」

　未来記念塔から緊急出動指令が発せられ、特務調査班が即座に動き出しましたの。

　わたくしはリゼに命じましたの。

　「調査結果が出次第、わたくしに直接報告なさい。場合によっては、わたくし自らが出向きますわ」

　「はいっ！」

　未知の古代魔導波動――それがもし、わたくしの求める新たな技術革新の糸口となるならば、見過ごす理由など一片たりともありませんわ。

　リゼが顔を上げましたの。

　「お嬢様、調査班第一陣、現地到着しました！」

　「よろしいですわ。映像を繋ぎなさい」

　ホログラムに映し出された旧技術院跡地は、瓦礫と化した廃墟の中、地面から青白い光が噴き出しておりましたの。

　「これは……？」

　リゼも目を見開きましたの。

　調査班隊長が報告しましたの。

　『エリス様、現地より報告いたします！　地下に巨大な魔導構造体を発見しました！　未登録の古代魔文明製です！』

　わたくしは満足げに微笑みましたの。

　「面白いですわ。すぐに現地解析を開始なさい。そして、必要とあらば……わたくしが直々に向かいますわ」