追放令嬢、魔導と科学で文明開花いたしますわ〜辺境から始める世界再設計〜

第52話

　わたくしは《オメガ・ノウム》へ魔力チャネルを接続しながら、リゼに命じましたの。

　「リゼ、未来都市群全域に対して、魔力更新通知プロトコルを配信なさい」

　「了解しました！」

　リゼが素早く端末を操作し、未来都市群連合全域の魔導網に向けて通達が発信されましたの。『新世界基準による魔力供給体系への移行開始』、この一文が表示された瞬間、すべての都市の魔導炉、インフラ網、生活圏が同時にアップリンクを開始しましたの。

　現地班の技師が緊張した面持ちで報告してきましたの。

　『お嬢様、接続安定！　未来都市群全エリア、エネルギーフロー正常です！』

　「よろしいですわ」

　わたくしは微笑み、制御核へさらなる命令を送り込みましたの。

　「全域の魔力濃度を基準値より一三〇％引き上げなさい。副作用の監視を怠らぬように」

　「設定完了しました！」

　リゼが報告し、未来記念塔からのリアルタイムデータにも、各地の魔力総量が安定上昇している様子が映し出されましたの。

　「これにより、未来都市群の技術開発速度は加速度的に向上いたしますわ」

　リゼが興奮を隠せずに声を上げましたの。

　「す、すごいです……！　通常なら数世紀かかる進化が、わずか数年で実現可能に！」

　「当然ですわ。旧時代の常識など、打ち壊すためにございますもの」

　そこへ、アウレリア局長から新たな通信が入りましたの。

　『エリス様！　緊急事態です！　旧世界評議会が未来都市群連合への制裁を決議しました！』

　「ほう？　制裁ですの？」

　わたくしはゴーグル越しにアウレリアの焦り顔を見つめながら問い返しましたの。

　『内容は、旧世界加盟国による交易禁止措置、技術禁輸、資源供給遮断です！』

　「ふふ、そんなもの痛くも痒くもありませんわ」

　わたくしは涼しい顔で指示を出しましたの。

　「リゼ、未来都市群経済局に命じなさい。即時に“完全自立経済圏モード”へ移行、外部依存度をゼロにいたしますわ」

　「了解しました！」

　リゼが通信を飛ばし、各地の行政オペレーターたちが一斉に新たな運用モードへ切り替えを始めましたの。

　「アウレリア、技術供給に関しても問題はないでしょう？」
　
『はっ、すでに未来都市群独自開発比率は九八％を超えていますので、問題ございません！』

　「結構ですわ」

　わたくしはさらなる布石を打つべく、魔導ホログラムに新たな指示を入力しましたの。

　「リゼ、《プロメテウス》に指示。旧世界圏向けに“未来標準規格”に準拠しない技術体系のサポートを完全停止なさい」

　「了解しました！」

　これで、旧世界圏の技術基盤は急速に崩壊し、未来都市群への依存が
不可避になりますの。

　リゼが小さく歓声を上げましたの。

　「お嬢様、素晴らしいです！　これで旧世界勢力は自滅の道しか残りません！」

　「当然ですわ。世界の未来を導くのは、わたくしだけでございますもの」
　そこへ、もう一報。

　「お嬢様！　旧世界評議会議長、エルンスト・ヴァレンシュタインから直接通信要請です！」

　「拒絶なさい。もはや彼らと交渉する価値などありませんわ」

　「了解しました！」

　未来記念塔の中央オペレーションルームには、未来都市群各都市から続々と報告が集まりましたの。

　『アウローラ本部、エネルギー供給安定！』

　『自由都市群、次元輸送網建設開始！』

　『鉱山連合、重魔導素材精錬炉稼働開始！』

　『沿岸交易同盟、深層魔導航路確立完了！』

　わたくしは満足げに頷きましたの。

　「リゼ、最終段階ですわ。未来都市群の正式な独立国家宣言式典を準備なさい」

　「はいっ！」