追放令嬢、魔導と科学で文明開花いたしますわ〜辺境から始める世界再設計〜

第56話

　未来記念塔の全周囲に展開された絶対障壁《オーロラ・フィールド》が、次元の波動に打たれて震えましたの。

　「リゼ、障壁の耐久度報告！」

　「第一次衝撃、持ち堪えました！　けれど連続干渉波が来ます！」

　「よろしいですわ。第二段階防御を起動なさい」

　「了解！」

　リゼが操作盤を叩き、未来記念塔内部の《多層位相防壁》が稼働を始めましたの。これにより、物理、魔力、精神、次元、すべての攻撃を階層的に受け流すことが可能ですわ。

　外の空間に、裂け目が開きましたの。

　「来ましたわね」

　次元裂開から姿を現したのは、クロノス機関のエリート使徒たちでしたの。各々が、世界の時空制御権を部分的に掌握している、正真正銘の異常存在。

　リゼが声を震わせながら叫びましたの。

　「お嬢様、識別成功！　時空管理官クラス……五体です！」

　「数の問題ではありませんわ」

　わたくしは魔導手袋のエネルギーコンデンサを全開放し、直結演算モードへと移行しましたの。

　「迎撃開始――敵性存在、排除対象に指定」

　未来記念塔全域に、わたくしの命令が響き渡りましたの。

　リゼが緊急広域通信を開きましたの。

　「未来都市群連合、全防衛拠点へ！　特区防衛コード：エリス・プロトコル発令！」

　「了解！　各防衛隊、即時戦闘配置！」

　「対次元兵器、全自動展開！」

　続々と応答が返ってくる中、わたくしは敵影に狙いを定めましたの。

　「まずは牽制ですわ」

　わたくしは左手を掲げ、《重力再構成魔導砲・グラビティ・クレイドル》を発動しましたの。塔頂から放たれた重力弾が、次元使徒たちに向かって突き刺さりましたの。

　「防がせませんわよ」

　クロノス使徒たちはそれぞれ時間停止障壁を展開しましたが、わたくしの重力弾は通常の物理法則を無視して対象を直撃する特性を持っておりますの。

　「ぐ……！」

　ひとり、赤髪の使徒が地面に叩きつけられましたの。

　リゼが叫びましたの。

　「一体、沈黙しました！」

　「次、参りますわ」

　わたくしはすぐに次の術式へ移行しましたの。

　《多次元収束魔導斬・イレギュラー・ノート》

　青白い光剣がわたくしの右手に生成されましたの。

　「リゼ、塔内部の一般市民をシェルターへ誘導。最大警戒を維持なさい」

　「はいっ！」

　未来都市群の民たちの安全確保、それが第一ですわ。わたくしは空間を跳躍し、二体目の使徒へと肉薄しましたの。

　「貴様らに未来は渡しませんわ！」

　剣が一閃、時空間障壁すら斬り裂き、敵使徒を真っ二つにしましたの。

　「二体目、排除完了」

　リゼの報告が届きましたの。

　「残り三体、迎撃中です！」

　「よろしいですわ。殲滅に移行します！」

　次元干渉を駆使しながら迫る敵使徒たちに対し、わたくしは《超越演算式・カイロスドライブ》を展開しましたの。時間加速、空間反転、存在位相変換――あらゆる概念操作を可能とする、わたくしの切り札ですわ。

　「無駄ですわよ」

　次元跳躍で回避を試みた敵を、わたくしはあらかじめ設置しておいた《座標固定魔導陣》に引きずり戻しましたの。

　「ここが、貴様たちの終着点ですわ」

　イレギュラー・ノートが光を放ち、三体目、四体目を同時に切り裂きましたの。

　リゼが信じられないという顔で叫びましたの。

　「四体撃破……あと一体です！」

　「とどめ、参りますわ」

　わたくしは最後の使徒に向かって歩み寄りましたの。敵は必死に時間跳躍を繰り返して逃れようとしましたが――無駄ですわ。わたくしの空間支配下では、許可なく次元操作などできませんもの。

　「貴様たちの未来干渉など、わたくしには通じませんわ」

　《次元終結式・ゼロイレイザー》発動。

　光が一閃し、最後の使徒が無に帰しましたの。

　リゼが歓声を上げましたの。

　「全撃破確認！　未来記念塔、無事防衛成功！」

　「当然ですわ」

　わたくしは演算を停止し、戦闘態勢を解除しましたの。

　だがその時、塔内部に警報が鳴り響きましたの。

　「リゼ、報告なさい！」

　「新たな次元座標歪曲反応！　しかも、今度は……規模が桁違いです！」

　わたくしは演壇に立ち、視線を空へ向けましたの。

　「来ましたわね。本命が」

　空間が再び裂け、大いなる存在感を持った何かが、この世界に侵入しようとしておりましたの。